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今日も気づけば漁港釣り 3振り目

 アジやイカ、キス、カサゴ、メバルー。魚種が豊富な丹後半島の日本海は、堤防からの釣りでもさまざまな獲物が狙えて面白い。一方、お目当ての魚が釣れず、やきもきすることも多々あります。2021年秋に京都府宮津市へ赴任した直後に海釣りを始め、現在はルアーでアジを狙う「アジング」を極めるべく足しげく漁港に通う記者が、釣果や景色、釣った魚で作る料理を紹介します。さて、今日は何が釣れるのやら…。

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イカ釣りを試してみなイカ

 普段、どこの釣り場に行くかの判断材料として、釣果の写真や場所、時間を紹介しているスマートフォンアプリや京都府北部の釣具店が投稿しているインスタグラムを参考にしている。

 丹後地域は随分と冷え込んできたが、ヤリイカが釣れているらしい。エビの様な形状で先端に放射線状の針が無数についている餌木(えぎ)を使ったイカ釣り「エギング」で釣れているようだ。個人的に、釣れる感覚が分からないので避けていたが、練習のつもりでちょいと挑戦してくるか。

伊根町平田/1月7日午後4時~午後5時/曇り/気温7度 月齢14.7 大潮(タイドグラフBI調べ)

 「伊根の舟屋」で知られる京都府伊根町の七面山駐車場で竿を振ることにした。曇りがちだが、昔ながらの母屋の並ぶ街並みはどこか懐かしさを感じる。海沿いを散策する観光客もちらほら。和装のカップルと同行するカメラマン一行の姿あり。結婚式の記念撮影か。

「伊根の舟屋」が観光客に人気スポットの京都府伊根町

【今日の釣り具】
ロッド・LUREMATIC S80L (シマノ)
リール・SEDONA 4000(シマノ)

真っ青な日本海では「釣れない」

 場違いな感じで餌木を力一杯遠投した。釣り方は餌木が海底に着いたら竿を上下に振り、浮かせては再び底に着くのを待つ。そしてまた3、4回素早く竿を上下に大きく振る。いわゆる「しゃくる」という動作だ。ただ、ヒットする気配なし。釣り方が誤っている?

「エギング」で使用するエビのような形をした疑似餌「餌木」

 さらに、海の色も数週間前とは違った様相だ。底の岩が丸見えになるほどに、透き通っているのだ。

「これは、冬の日本海の色だ。真っ青で、こうなると釣れなくなる」

 1年前、釣り好きの上司がぽつりとつぶやいた一言を思い出した。水温が低いからなのか、水面から丸見えで魚も警戒するのか。確かに、釣れる魚は限られ、アジが釣れた記憶は、なおさらない。

 だが、春を迎えるまで釣りをしないというのも、もどかしい。なぜ、冬の日本海はあんなに透明になるのか。そして、魚が釣りにくくなるのか。この時期に釣れる魚は何か。専門家に尋ねよう。

透明度が増し岩底を望める海

専門家の答えは「釣れない」

 宮津市小田宿野の京都府立海洋センター。ここでは、魚介や海藻といった海の生態にまつわる研究や調査が日々、行われている。そのトップ・井谷匡志所長(59)に尋ねた。

 今の季節でルアーを使って釣れる魚は何でしょうか。

 「今は難しいよ、ははは」

 むむ、やはり冬の海でのルアー釣りはハードルが高いのか。しかし、それはなぜなのですか。

 「魚は変温動物なので、冬は基本的に活性が落ち、あまりエサを食べません。マグロなど一部の大型魚は筋肉から出た熱を回収する機構を持っていて、低水温に強いのですが、(アジなど)小さな魚は特に、低水温に弱いのです」

 なるほど。魚がエサを食べてくれないのなら、ルアーをちらつかせても致し方ない。では、海が透明になるのは。

 「日照が少なく低温のため、海中の植物プランクトンの増殖が抑えられるためです」

 春から秋にかけて、海が薄い青緑色の不透明なのは植物プランクトンが繁殖しているからだったのですね。と、いうことは、植物プランクトンが減り、動物プランクトンがエサを得られず減少し、それをエサにしている魚も減少するという、食物連鎖の遮断も冬に釣りにくい一因ということですか。

 「いや、そこまで急激に動物プランクトンや甲殻類が減るとは思えませんので、魚釣りには関係ないと思います」

 あららら、これは失礼しました。

 「それよりは魚の警戒心が高くなることの方が影響への大きいのではないかと思います。でも、このあたりは魚に聞いてみないとわかりませんね。はは」

 うーむ、確かに。しかしながら、勉強になりました。ありがとうございます。

自転車釣りのススメ

 さらに、井谷さんは角度の違う助言をしてくれた。

 「自転車で釣りに出かけるのがいいんじゃないかな」

 その心は、「京都新聞記者が自転車で釣りをしているというのが地元の高校生たちに知れ渡ったら、面白がって集まってくれるんじゃないかな」とのこと。

 よく考えてみたらこの1年間の釣行の9割は車移動。おのずと出かける漁港も同じ場所しか行けていなかった。エリアは限られるが、身近な場所から攻めた方が、釣果も得やすいかも知れない。

 そして、最後に井谷さんは「ここ(センター)には釣り好きがたくさんいるから、いつでも紹介しますよ。仕事でも魚見て釣りで魚見て、君たちはどれだけ魚が好きなんだって感じですけど、ははははは」と言って、さらに目尻を下げて笑った。

心強い。ことあるごとに助言してもらおう。

自転車で訪れた文珠水道

宮津市文珠 文珠水道付近/1月21日午後4時~午後5時/曇り時々雨 風強し/気温5度 月齢28.7 大潮(タイドグラフBI調べ)

 早速、自転車釣りを実践してみた。場所は天橋立最南西の文珠水道。1カ月前、漁師の方が「このあたりで20センチ前後のアジがジグヘッドで釣れますよ」と教えてくれたからだ。ただ、水面が透明なだけでなく、見るからに浅い。水深は2、3メートルくらいしかないのでは。着底も5秒くらいのもので、こんな浅瀬にアジはおろか、魚はいるのだろうか。

弱気で竿を投げてみたところ…

【今日の釣り具】
ロッド・鰺道5G AD5-S682M/AJI (メジャークラフト)
リール・SOARE(シマノ) C2000S
ジグヘッド・Range Cross Head 0.6㌘ (土肥富)
ワーム・熟成アクア 活アジ2.3 (エコギア)

 始める前から相当弱気になり、10振りしてヒットがなければ場所を代えようと後ろ向きな方針を固めた。と、そんな思いとは裏腹に、3投目で「どかっ」としたあたりを感知した。おるんかい、魚。

食いちぎられたワーム

 ただ、油断していたのでばらしてしまった。いかんいかん。手早くリールを巻きルアーを回収した。と、ジグヘッドを水面に引き揚げると、ワームが食いちぎられ針先がむき出しになっていた。この現象、幾度となく経験した。

 フグだな。

 フグの鋭い前歯で何度ワームを食いちぎられたことか。フグのいるところでフグ以外の魚が釣れる確率も肌感覚では低くなる。これは、潮時か。ただ、実際には釣り上げられていない。釣れるまで続けてみようや。

 その後、やはりヒットがあるごとに何度もワームを食いちぎられたが、諦めずじりじりと海底を攻めた。そして、ようやく釣り上げた。

 やっぱり、フグ。

10センチ前後のフグ。ワームを食い散らかした犯人か

 もう、こうなると釣れる気も失せてサドルにまたがった。帰り際、文珠水道から数百メートルほど進むと釣り客の姿が。やはり、ここは釣れるのか。また、もう少し気温が落ち着いたら再挑戦しよう。

【本日の釣果】
フグ 12センチ(目視)

 結局、料理できるほどの釣果はなく終わってしまった。だが、こんな日もある。むしろ成果が得られない日の方が多い。それでも、明日は釣れるかもと、大物がヒットするのを想像すると、また漁港へ出かけたくなる。

 あまりに悔しいので、2日後の夜に京丹後市丹後町の間人漁港でアジングをした。結局、車なんかい。12センチ前後のメバル3匹とガシラ(カサゴ)1匹釣れたのみで、全てリリースした。

夜中の間人漁港で釣れたメバル。小型のためリリース

 宮津市周辺の釣り好きの皆さん。モスグリーンの自転車にまたがって釣りに訪れた中年を見かけたら、気軽に声をかけてくださいましたら、うれしいです。どうぞ、よろしくお願いします。


能美孝啓


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