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カナダ・ハリファックスで挑戦し続けている卒業生のはなし

こんにちは。広報グループのNです。

今日は卒業生の劉珊(リュウ サン)さんを紹介します。
劉珊さんは、映像コースの卒業生です。
私は、在学中の彼女の作品の大ファンでした。
卒業制作もとても素晴らしくて、男女のすれ違いをテーマとした映像作品は今でも詳細に覚えています。

そんな劉さんが、卒業後どうされているのか、ずっと気になっていました。現在、カナダのハリファックスにいらっしゃる劉さんと久しぶりにZoomでお話することができました。

劉さんは、大学を卒業後、京都のデザイン会社に就職され、デザイナーとしてauのデジタルコンテンツデザインや、北京オリンピックのPanasonicの展示会でのコンテンツ制作などに関わられていました。しかし、カナダに暮らす彼との結婚のため、移住を決意。

「もし、結婚がなければ今も日本で暮らしていたと思います」と、日本での仕事や生活にやりがいを感じていた劉さんにとって、この決断は非常に苦しいものだったそうです。

カナダでは、大都市であるトロントに渡りました。ところが、半年も経たないうちに世界的な経済危機(リーマンショック)が起こり、劉さん夫婦はトロントで仕事を見つけることができなくなりました。

そこで、夫の大学時代の友人などを頼り、カナダ東部の町フレデリクトンへ。
ここでの求職活動中に、消しゴムを掘りはじめました。作った消しゴムハンコを中国SNSの「豆瓣 douban」に発表したところ、中国で大ブームに。

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オンラインでのワークショップの依頼が多数寄せられ、消しゴムハンコの作り方を紹介する本も出版されました。

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フレデクトンでもデザイン会社に就職。余暇にファーマーズマーケット(日本の手作り市)で出品した消しゴムハンコも注目され、Stamp Ladyと呼ばれるように。
この頃、私もInstagramや、Facebookにあげられる作品を毎日楽しみにしていました。

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順調に新しい場所での生活が始まったかに見えたのもつかの間、旦那さんの転勤で今度はさらに東の都市、ハリファックスに居を移すことになりました。

また、一からのスタートでした。
劉さんはハリファックスでもデザイン会社でデザイナーの職を得て、キャンペーンポスターやワインのロゴ、デジタルコンテンツなど様々なデザイン制作に携わります。
そして、ハリファックスでも出店した手作り市でも人気店舗に!3日間で2,000ドル(日本円で約18万円)を売り上げたこともあるそうです!

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しかし、しばらくして出産とともにデザイン会社を退職。
「今では主婦です。」とおっしゃる劉さん。
それが、伺ってみるとただの主婦ではないのです。

出産準備の間、もっとカラフルなものが描きたいと、様々なイラストやスケッチを描きはじめました。

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Instagramに投稿した作品を見た編集者から、絵本を描かないかとの依頼が。カナダでも著名な児童文学作家の作品を絵本にする仕事です。現在は、2冊の本が出版されています。

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このうちの一冊『Always with you』は中国語に翻訳され中国でも出版されました。

劉さんの周りには、いつも変化の風が吹いているようにおもわれます。
その後は、家事や子育てに専念しながら、カナダや中国の雑誌などでのイラストを描く日日。

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ある時、ママ友たちから子どもに絵を教えて欲しいとの強い要望をうけ、それならと、自宅の地下室を利用して絵画教室を始めました。
あっという間に、劉さんの絵画教室は話題となり、予約待ちができるほどに。
現在では、5歳から15歳までの生徒37人を3クラスに分けて教えているそうです。

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絵を教えるなかで、美術教育に目覚めた彼女。
昨年、教員免許を取るために、大学に再入学しました。
カナダの教員免許は、2年間で取得することができます。2年間で「教育学」の学位を取りながら、主科目と副科目の二つの免許取得を目指します。彼女の場合は美術と英語の教師。教育実習は一年目が6週間、二年目が13週間。めちゃくちゃ大変です。
免許が取れたとしても、カナダでは非常勤、有期を経てやっと本採用になるそうなのです。長い道のり・・・。

コロナ禍のいま、オンラインで大学の授業を受け、子供向けの絵画教室もオンラインでされているそうです。

コロナでも、劉さんを取り巻く風はとどまりません。
長くなったお家時間を利用して、家族で庭に本格的なツリーハウスを作りはじめました。その様子を中国のブログにあげたところ、中国でまたまた人気に。

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中国の出版社から、今度はツリーハウスに関する英語の本『Everything You Need for a Treehouse』 を中国語に翻訳する仕事が舞い込んできました。現在出版準備中の『如果伱想要一个樹屋(もしも、ツリーハウスを作りたいと思ったら)』という本は、実用的に木の家を作るための本ではなく、木の家をめぐる詩のような本らしく、翻訳が非常に難しかったとのこと。
この本は現在出版に向けて準備中で、近々、中国で出版されるそうです。

「私の人生って寄り道ばかりでしょう?」とほほ笑む劉さん。
たしかに一本の道ではないかもしれないけれど、常に新しいことに挑戦し続けている劉さん、ほんとすごいです。
素晴らしいです!と発言しようとしたところ、
「もしね、今の学生や高校生にアドバイスするとしたら、『今本当にやりたいことをやりなさい』と言いたいです。」と静かに語りはじめてくれました。

「実は、わたしが受験した当時はイラスト学科がありませんでした。それで、マンガの専攻にするか、デジタル技術も学べる映像の専攻かで悩んだのです。その時は、絵を描くのは大好きだから、自分でやっていけるかなと思い、どちらかというと苦手で、将来役立つかもしれないデジタルを学べる映像に決めました。実際、日本でもカナダでも、いつでも正職員で仕事を見つけることが出来たのは、大学でデジタル技術を学んだおかげだとは思っています。」
しかし、劉さんはこう続けます。
 「けれど、今になって美術や教育、絵の方で仕事をしていきたいと思いました。もし、あのとき自分に素直になっていたら。そうすれば人生がもっとシンプルになったのになあと思います。」

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劉さんは、大学の時からスケッチブックを書き続けているそうです。いろいろな外的要因により、自分の生き方や目標を見失わないよう、毎日少しづつ感じた事を描いてらっしゃるそうです。その蓄積は今も役だっていると話してくれました。

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穏やかに、もう何年も使っていないであろう日本語を流暢に、美しく操る劉さん。
絵を描くことを愛し、その才能が多くの人を魅了します。
ひとつのことにとどまることをせず、常に挑戦をつづけている彼女が、尊く、まぶしく思えました。
生きざまも、作品も素敵です。やはり素晴らしい。お話を伺って、昔以上に彼女の大ファンになりました。

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彼女の作品はInstagramで見ることができます。
みなさんも是非みてください。
そして、彼女を一緒に応援してくれると嬉しいです。

https://www.instagram.com/carloe_l/

おわり