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山奥で生まれた作品のはなし。

こんにちは。
広報グループのUです。
ちょっとお久しぶりです。

実は昨日、全く想定外の山登りをしてきました。

お昼休みも終えてメールを返したりしていたら、広報Nさんに「春秋館でおもしろそうな展覧会が行われてましたよ」と教えてもらいました。さっそく向かってみます。

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(春秋館までの道のりも、なかなかの山登り)

春秋館の1階、2階のギャラリースペースで行われていたのは、芸術学部立体造形専攻3年生による課題発表展。

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立体造形専攻の3年生は、「活躍するアーティストを1名選んで作家研究を行い、オマージュ作品を制作する」という課題に取り組んでいました。アルベルト・ジャコメッティや草間彌生といった著名な作家のオマージュ作品も。

私が気になったのは、次のふたり。

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上は、宮下ゆりさんによるアンディー ゴールズワージー(Andy Goldsworthy)のオマージュ作品。
下は、芳田眞生子さんによるクリスト&ジャンヌ=クロード(Christo & Jeanne-Claude)のオマージュ作品。
どちらも、建築物や自然物など環境を活かした作品制作を行う現代アートの巨匠の作品をオマージュしています。

ふたりは作品を写真に撮って展示を行っていました。
「この作品の実物はどこにあるんだろう…」と思っていると、偶然いらっしゃった立体造形専攻の内田先生が「連れて行ってもらったら?」とにっこり。さらに「20分くらい歩くし、ぬかるみだから気を付けてね」とのこと。

よく分からないまま「ぜひ!」とお願いすると、作者である宮下ゆりさん自身が作品まで案内してくれることになりました。

「熊鈴を持っていきますね~!」とほがらかに笑う宮下さん。

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え、熊鈴…?
(ちなみに右の方に写るオレンジ色は熊用スプレー)


「ここから登っていきますね!」と言われてついていくと…

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ん?

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??

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???

思いっきり山道でした。
「2年前の芸術学部の授業では、この山を1年生全員で登ったんですよ」とのこと。そうなんだ…。

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道中には椅子もあり、ときどき友人と笛や沖縄の三線を持ってきて、景色を眺めながら演奏したりもするそう。
写真を撮る余裕はありませんでしたが、ロープを引っ張って渡る道などもあり、汗だくな私に「あとちょっとです!頑張って」と優しい宮下さん。

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ちょっと開けたところに辿り着き、

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ありました。宮下さんの作品です。

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この作品は、数年前の大雨で倒れた木の跡地を、宮下さんが5層の円状に深く掘り下げたもの。形状はアンディー・ゴールズワージーの作品を模しています。

宮下さんが木や自然物をつかって作品を制作しはじめたのは2年生の後期。切られた丸太を使って制作することに抵抗感があり、木彫作品にどうやって取り組むか迷っていたとき、倒木が目に入ります。

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そして作った作品がこちら。倒木から、祈っている自分自身の姿を掘り出しました。溜まった雨水が周りの木々を映し込んで美しい。この体験がきっかけで、自然物がもともとあった場所に赴いてつくることにのめりこんでいったそうです。

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今回の作品のテーマになった倒木は、昨年の大雨で倒れてしまったもの。背の高い木が横になっている姿は、そのものが作品のようで魅了されます。
1カ月の課題制作期間のうち、はじめのうちは毎日この木を前に「自分が何をできるか」を考えていたといいます。自然破壊に繋がるのではないか、自分がどこまで手を出していいのか、悩んだ末に地面を掘り下げることを選びました。

実制作期間の約1週間は、毎朝5時頃から山に登って、丸1日ここで制作していたそう。「楽しくてたまらなかった!」と笑う宮下さんがきらきらしていて眩しいです。

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自然を活かした作品のため、作品の様子は日々変化していきます。作品が完成して5日目の今日は、作品の中央が少し崩れていました。宮下さんは毎日作品の様子を確認し、撮影した写真を春秋館の展示会場に追加しています。つくったものが崩れていく過程も含めて作品なんですね。

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こちらは宮下さんが撮影された作品の写真。まだ中央の部分が崩れていません。晴れた日の正午頃に撮影されたもので、この時間帯は日差しがスポットライトのように差し込むそうです。倒れた木が生えていたところだけ、ぽっかり開けて空が見える様子もご覧いただけると思います。

宮下さんの作品から少し歩いたところに、芳田眞生子さんの作品も展示されていました。

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こちらは溶接された薄い金属のフレームをワイヤーで吊り下げた作品。繊細に見えますが、金属なので一つ一つ重量があります。工房で制作したものをここまで持ってくるといった作業は、立体造形のみんなで協力して行ったそう。光が差し込んだときの色彩と影のバランスがとてもきれいでした。

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ちなみにこちらは、芳田さんが撮影した光が綺麗なときの写真。晴れた日の光で、作品のオレンジが際立っています。「クリスト&ジャンヌ=クロードの作品は、展開する環境に映える色を使っているところも、美しさに繋がっているようです。今回のオマージュも、山の中に映える色を考えて枠をオレンジにしました。」と後から教えてくれました。たしかに、オレンジが綺麗!と思っていたんです。

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宮下さんとは作品を前にしばらくおしゃべり。
「国際学生寮・修交館に住んだことで、学部や国を越えた友人がたくさんできた」という経験談や、「人文学には芸術とつながる考えがたくさんあって学びが多い。人文学部の先生が開講している授業科目もたくさん履修している」という学び方の話など、聞けば聞くほどその人柄に惚れ込んでしまうお話ばかりでした。

ぜひ、在学生のみんなにも、宮下さんをはじめ立体造形の3年生の成果発表展をみてほしいです。6月21日(月)まで春秋館の1階・2階で開催中ですよ。21日(月)のお昼には撤収が始まってしまうそうなので、なるべく早く行ってみて!

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ちなみに、このあたりの土は非常に良質なので、陶芸専攻の学生たちが作品に使っているらしいです。それもなんだか良い話。