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人文学部「フィールド・プログラム報告展」を見てきました

こんにちは。広報グループのNです。

卒展期間中に開催されていた人文学部3年生の「フィールド・プログラム報告展」を見てきましたので、報告します。

人文学部のカリキュラムの学びの核となっているフィールド・プログラム。3年次前期の半年間、全員がキャンパスを離れて学外のフィールドで学びます。“現場”に身をおき、人間や社会の多様性に触れることで、広い視野をもって社会を批判的・相対的にとらえる力を身につけることを目指します。

フィールド・プログラムは、実は3年生の最初だけでなく、1年生から始まります。概要や技法、地域学などなど、しっかり準備をしたうえで、プログラムに挑みます。そして、この終了後の報告展もプログラムの一環で開催されています。フィールドは、各自の研究テーマに応じて、海外や国内を選べます。ところが、2020年は新型コロナウィルスの影響により、海外で予定されていた調査は中止となりました。そのため、今回の展示では国内のフィールドのみとなります。

展示会場は、流渓館。1階入り口には、今回は残念ながら実施されなかった、本来は対象となる海外フィールドのパネルが出迎えてくれます。

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ドイツや、スペイン、アメリカ、韓国、タイ・・・こんなに対象地があったのかと思いながら、会場のある2階へ。さまざまな研究のパネルが展示されていました。

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新型コロナウィルスの影響は国内にも及んでいて、研究テーマや方法の変更を余儀なくされた学生も多かったようです。

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京都市動物園で調査を行った社会専攻の安井さんによる「新型コロナウィルス感染拡大の動物園への影響」では、休館していた動物園がどのようになっていたのか、何が行われていたのかなどがパネルで紹介されていました。
「閉園により動物にはリラックス効果が出た」という一行に、おもわず「ごめん・・・」と思ってしまいました。

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文学専攻 吉岡さんのテーマは、「戦時下における検閲と図書館」。
もともとは、谷崎潤一郎の小説『細雪』に出てくる異人館を調べるという「きらびやかな研究(吉岡さん談)」を予定にしていたところ、コロナの影響で異人館が休館となってしまい、当初予定していた計画を断念せざるを得なくなったそうです。そこで、『細雪』が当時の検閲により連載中止になったことや、自身が図書館司書の資格課程を履修していたことから、方向性を転換。戦時下での図書館の状況について、インターネットや近所の図書館、研究データベースなどあらゆるものを活用し調査をすすめました。古い新聞記事なども数多く読んだそうです。調査の中で恐ろしいなと思ったことが二つあり、一つは当時の図書館では窓口で図書を依頼して書庫から出してもらう形式だったために、思想的に怪しいと思われた人の貸し出しデータが、本人に断りなく国に提出されていたこと。もう一つは、国が国民に悪影響を与えると判断した本はすべて没収され、国が推薦する本のみが収蔵されていたこと。当時では、国民は気づかないうちに、図書館で本を読むことで思想的にコントロールされていた可能性があると話してくれました。この半年間は研究に没頭しているうちにあっという間に過ぎていたそうです。吉岡さんは、この研究を通して「検閲」そのものに興味をもち、卒業論文では現代の「検閲」について調査行く予定のようです。

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コロナの影響をほとんど受けずに研究を全うした学生もいます。歴史専攻 畠中さんの研究「京都の歴史~現在も残る歴史の痕跡~」は、地形から歴史の痕跡を探そうという試みです。豊臣秀吉が外敵の来襲と鴨川の氾濫から、京都市街を守る目的で作った堤防「お土居」や伏見城の遺構が、現在も地形として残る「伏見」を中心に、実際に古地図や、研究書を参考に街を歩き調査しました。研究書に掲載されていないお土居らしき痕跡を見つけたときは、思わず興奮してしまったそうです。今回は京都の北の方を調査したので、4年次では南を調査し、卒業論文と一緒に模型図も作り、卒業制作展で展示したいと話してくれました。

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そのほかにも、日本の文学者とその文学の翻訳者との交流や、お互いの評価について調査した文学専攻 オウさんの「文学者たちの関わり」。平安時代の京都の四方にある「岩倉」という地名から外の世界を検証した文学専攻 木村さんの「『さまざまなおそろしげなる形』から『山窩』へ」、社会専攻 高田さんの「沖縄の宗教観について」、社会専攻 市川さんの「食品ロスの金額換算」など様々なテーマがあり、いつまでもパネルを見ていて飽きませんでした。最終報告書の閲覧コーナーも設けられていたのですが、読み始めたら止まらなくなりそうなので今回は断念。

展示

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今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けたとはいえ、それぞれが回避して研究を進める工夫を行っていたことが、大変興味深かったです。

みなさんの研究がどんな風に発展していくのか、来年の卒展がとても楽しみです。