卒展レポート2022(人文学部)
こんにちは、広報グループHです。
卒業制作展もいよいよ明日で終了です。
人文学部の卒業論文には、毎年興味深いテーマがたくさん。
会場受付には4年生と教員が常駐。明るい雰囲気でした。
今回は、気になった論文をいくつかピックアップしてご紹介します。
まずは文学専攻から。ゼミは、日本の「上代」「中古」「近世」「近現代」の文学それぞれに分かれています。
近世文学ゼミの轡田さんは、土用の丑の日にたべる鰻がハレとケ、どちらに属するのかを調べました。
「ハレ」は祭などの非日常、「ケ」は普段の生活をさします。もともと鰻は薬として扱われており、食材とはみなされていなかったそうなのですが、それがなぜ現在の高級食材まで成り上がったのか、江戸時代の食文化ととともに考察されています。論文では「江戸前」のブランド化がうまくいったことが要因のひとつとして挙げられていました。土用の丑の日は、「ケ(日常)の特別化」ではないか、と結論づけられています。(鰻好きなもので、読んでいて鰻が食べたくなってきてしまいました…)
歴史専攻のゼミは、日本の「中世史」「近世史」「近現代史」に分かれます。
近世史ゼミの上柳さんは、江戸時代の京都に存在した幕府公認の遊郭「島原」の衰退について考察。島原はJR丹波口駅から徒歩10分ほどの場所にあり、京都市水族館からも歩いて行けるエリア。かつては新選組の隊士や討幕派の志士も通い、日本最大遊郭のひとつともいわれました。
それがなぜ衰退してしまったのか、史料をひもとき丁寧に調べあげています。島原が中心となり、京都奉行所に提出した願書からは、不景気による生活苦の状況がリアルに伝わってきて、読み物としても面白かったです。展示スペースにはくずし字辞典と元の文書も置かれていて、「ひとつひとつ読み解いていったんだな」と、感慨深い気持ちになりました。
社会専攻は、現代社会と「政治(政治思想)」「経済(企業と社会)」「思想(宗教と社会)」「文化(民族と社会)」「文化(芸術と社会)」「文化地域と生活)」の6つのゼミに分かれています。
現代社会と思想ゼミの林口さんは、日本におけるプラスチックの歴史を調査しました。論文は大ボリュームとなったため、第1部(規定数)と第2部にわけられた力作です。
大学2年のとき、プラスチックが自然界に悪影響を与えている現状に危機感を持つようになった林口さん。3年次に学外で行う長期フィールドワークにて、カナダでボランティア活動を行い、企業目線から海洋プラスチック問題の現状を知る計画を立てていました。
ところが新型コロナウイルス感染症の影響により、海外渡航が中止に。日本で現状を調べ始めていた林口さんですが、ふと「そもそも、なぜ現代の日本社会でプラスチックの比重が大きくなってしまったのか」という疑問に行きあたります。そこから、まずプラスチックそのものについて、次に歴史的背景と、段階を踏んで理解を深めていきました。その結果、戦時中に金属の代用品として、合成樹脂が広く国民生活に浸透したことの影響が大きいと発見します。大きな環境問題に、自分ができるやり方でどこまでも真摯に向き合おうとする林口さんの姿勢は素晴らしいものでした。
ほかにも、「稲荷信仰と狐」「谷崎潤一郎の『少年』に見られる芸術論と美学、イデア論について」「小林多喜二の小樽時代」「和食とは何か」「京都市における子どもの貧困に対する現状と課題」「オーバーツーリズムから考えるウィズコロナ・アフターコロナ時代の京都観光」など、十人十色の幅広いテーマが展開されています。
会場に行かれる方は、ぜひお手にとってご覧ください。
テーマを眺めるだけでも見応えがありますが、四年間の集大成となる「思考のテーブル」を、じっくり堪能していただければと思います。
おわり