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〈きょうとシネマクラブ〉特集「女性と映画」Talk Event REPORTS-『ガールフレンド』

〈きょうとシネマクラブ〉第一弾として、2023年12月~2024年3月に行われた特集「女性と映画」。上映に合わせて行われたトークの記録を連載します。


上映作品『ガールフレンド』(クローディア・ウェイル監督|1978)
2024.2.12(月)|京都シネマ
トーク:菅野優香さん(同志社大学教授)


1978年に公開されたクローディア・ウェイル監督によるアメリカ映画『ガールフレンド』。同志社大学で映画を中心とした視覚文化とクィア理論・批評を研究されている菅野優香さんをお招きし、『ガールフレンド』について語っていただきました。新米カメラマンのスーザンと、彼女の親友で詩人のアン、2人の女性の日常生活を軸に、女性の社会進出の問題や友情が描かれている本作。菅野さんによるトークイベントでは、この作品が製作された時代背景や文化の変容などのさまざまな着眼点と、細やかな表現まで深く味わうための補助線が提示されていきます。映画『ガールフレンド』の持つ独自の面白さ、そして豊かさを掬い取ることができることを祈ります。
※映画のラストにも触れています。お読みの際はご注意ください。

+++————『ガールフレンド』あらすじ————+++
駆け出しのカメラマンであるスーザンは、同じく夢を追い、詩人を志すアンとルームシェアをしながら、プロとしての道を模索している。しかし、彼女の仕事がうまくいき始めたとき、アンが恋人との結婚を決心したことを打ち明けられ、動揺が隠せない……。変化する友情、その向かう先とは。

●菅野優香さんによる『ガールフレンド』のコメント●
『ガールフレンド』は、女友だちが互いに支え合いながら成長する姿を描くのではなく、友だちとの関係を通して不確かな未来に開かれていく人生を描いた作品である。立派な大人になることなく、右往左往しながら現在を生き抜く女性たちを描く「友情映画」の出発点がこの映画なのだ。

◎松田春樹さん(nobody編集部員)による映画批評はこちらから読めます。
◎菅野優香さん『クィア・シネマ 世界と時間に別の仕方で存在するために』はこちらから


1. はじめに

みなさん、こんにちは。
同志社大学教授の菅野優香と申します。
わたしは出演者でもありませんし、製作に関わった人間でもないので、あくまで映画研究をしている立場からこの映画の面白さとか、歴史的背景についてお話できたらと思います。
この映画は、77年のクレジットマークがついていましたが、1978年に公開された映画です。監督は、ニューヨークのユダヤ系家庭に生まれたアメリカ人のクローディア・ウェイルです。
彼女は、1970年からドキュメンタリーや実験映画を作っていた人で、『ガールフレンド』という作品も、1975年に短編映画として構想されました。1946年生まれのウェイル監督は当時まだ若くて、もちろんお金もなかったので、「アメリカン・フィルム・インスティテュート(American Film Institute)」から助成金をもらって、1万ドル(日本円でいうと150万円)の低予算で、劇場用の長編映画に拡大したという経緯があります。ドキュメンタリーや実験映画を撮り始めて、8年目にして、ウェイルは劇場公開の最初の長編作品を撮りました。

2. 異彩を放つ「女の友情」映画

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