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『中国ジェンダー史研究入門』【新人読書日記/毎日20頁を】

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新人読書日記シリーズ、4冊目。
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#女性

フェミニズムとSNS【新人読書日記/毎日20頁を】(65)

「中国ジェンダー史研究入門」、421〜440頁、読了です。 フェミニズムが中国のSNSでより多く取り上げられるようになったのは、私の個人の感覚では、ここ5、6年間のことです。とても面白い変化は、15年前の中華系SNSでは男性が処女でない女性を猛烈に批判するのは合理的で正義であったのが、今はもうすっかり様変わりしました。「なぜ女性が男性と同じことをしただけで批判されるのか。」と、女性が男女差別に抵抗する姿、また他の女性を擁護する姿をしばしば目にする時代になりました。 もちろ

才女、遊女【新人読書日記/毎日20頁を】(63)

「中国ジェンダー史研究入門」、381〜400頁、読了です。 古代史上活躍していた才女の一方は、良い教育を受けるチャンスを持つ上流階級の女性、残りの一方は、まさに正反対とも言える、妓女(遊女)だったのは興味深い現象です。男性の下位に置かれた一般の女性と比べて、妓女の方が礼教に縛られず、自由に活躍できていたということでしょう。 本章で言及されている「秦淮八艶図詠」は清末に刊行され、八人の有名な妓女を紹介する画文集です。現代中国でも名前がよく知られている「柳如是」、「陳圓圓」も

中国古代の戸籍と家族【新人読書日記/毎日20頁を】(62)

「中国ジェンダー史研究入門」、361〜380頁、読了です。 戦国時代から既に存在している戸籍はジェンダーにどんな影響を与えてきたのか、本章では「中国古代の戸籍と家族」というテーマをめぐって面白い議論を展開しています。戸籍が作られた要因、女性が古代家庭内にどう位置づけられているのかなど、色々と勉強させられます。生まれつきの戸籍というものの本質を初めて考える機会になりました。部屋を片付けるにはまず所有物をリスト化してからといったところでしょうか。挙げられている戸籍情報を記録した

近現代の「女工」【新人読書日記/毎日20頁を】(59)

明けましておめでとうございます。 今年も新人読書日記をよろしくお願いします。 「中国ジェンダー史研究入門」、301〜320頁、読了です。 本章「近現代の女性労働」では女性の労働事情について論じています。初めて家から外に出て工場といった職場で働き始めた彼女たちが直面した社会からの偏見、労働条件の問題と地域差別などが取り上げられています。大学を卒業してスムーズに社会人となり、会社に勤め始めた私にとって、当時の女性たちのプレッシャーは想像を超えるものがあります。また、「工人」と

朱子学と再婚【新人読書日記/毎日20頁を】(53)

「中国ジェンダー史研究入門」、181〜200頁、読了です。 「餓死事極小、失節事極大」(餓死するよりも、貞潔さを失う方が大きな問題だ)は、朱子学の代表的なキャッチコピーの一つとして広く知られています。前近代の女性の抑圧の原因となっています。寡婦の再婚は批判対象となり、「節」を保った女性は推奨されるなど、現代人には想像しにくい世界でした。 とはいえ、今の中国でも、バツイチの女性は、お見合いの場では不利になるなど、これは普通だと認識されているのも、長年続いた朱子学の思想に影響

「閨怨」と「女誡」・・・【新人読書日記/毎日20頁を】(48)

「中国ジェンダー史研究入門」、81〜100頁、読了です。 文学オタクの私は、第3章の章題、「中国の文学と女性」を興味深く感じました。本章では漢、唐、宋といった時代の文学作品、とりわけ詩句に登場するイメージにあらわれる「女性」と、文学に関わる実在する女性たちのお話が語られています。 作品に登場する圧倒的多数の女性のイメージは「閨怨」のようです。「閨怨」とは「男性に棄ておかれても彼を愛する」という「待つ女」のことです。本章に言及されている漢の有名な才女・班昭が書いた「女誡」が

中国ジェンダー史研究入門、はじめに・・・【新人読書日記/毎日20頁を】(44)

「中国ジェンダー史研究入門」、1〜20頁、読了です。 「昔の女性は惨めだったよ。」という言葉は子供の頃からよく言われてきました。どのように「惨め」だったのでしょう?また、なぜ「惨め」ではなくなったのでしょう?この本を見た瞬間、すぐ読みたくなったのは、おそらく、そういった疑問をずっと抱いていたためかもしれません。 先秦より現在に至る、長い歴史の中で、中国の女性が社会にしめる立場はどのように変化し、今の在り方に辿り着いたのか。武則天、李清照を生み出した時代と江青を生み出した時