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記事制作の対価方針を決めました

長い前置き

当時はまったくそのことに気が付かなかったが、今思えば随分とたくさん受け取っていたのだなと思うものがある。お年玉だ。

父親は年の離れた三人姉弟の末っ子長男で、僕はその長男だった。年の離れたいとこ達は早々に親元を離れ自立していたから、可愛がる対象を失った祖父母や、親戚一同の甲斐性をくすぐっていたことは一つの要因だろう。それに父親の実家が愛媛県の県境の田舎で、年末年始には親戚一同が集まるという習慣が残っていたことも大きいかもしれない。一年で一度しか会わない●●のおじさんやおばさん(●●には住んでいる場所か、子供の名前が入る)という、ポチ袋を持った赤ら顔の親戚がとにかくたくさん集まるからだ。

結果、合計で言えば小学校の高学年時には4,5万円も毎年のようにいただいていた記憶がある。おそらく多くの家庭でも繰り広げられる光景、母親の「貯金しといてあげる」という言葉とともに回収されていったが、残りはすべて自由に使わせてもらっていた。アホだった自分は、そのことを当たり前に思っていたが実際はそうではない。僕が受け取っていたものは両親の日頃の親戚づきあいの賜物であり、また同等に近いなにかがきちんとお返しされていたはずだからだ。

もちろん要因がこれだけだったとは言わないが、こういったエピソードが元来ワガママだった性格に拍車をかけたような気がする。そんなわけで自分の想像力は欠如し、見えない苦労や、お金が持つ意味を理解しないまま育ってしまった。それは社会人になってもしばらくひきずった。

はじめて就職したのは室町にある着物問屋の営業だった。とにかく仕事がしたくなかった自分は「京都」という条件だけで、適当に新卒のカードを使い就職した。昔から要領だけは悪くなかったから、上司や先輩、時には社長から「いつでも辞めてくれ」と言われながらも、営業の成績だけはよかった。今思えば、こんな自分にも協力してくれる社内の方々がいたからに他ならないのだが、「なにかを為したら辞めよう」と決めていた自分は、受け持った地区の売り上げを倍にした4年目のタイミングで会社を辞めた。

本当に恥ずかしいのだが、テングにもなっていたのだと思う。そうでなければ次の仕事も決めず、辞めたりなどしなかっただろう。それまで仕事では1億に近い額を一年で売り上げていた。しかもそのうちの半分は自分で獲得した新規の売り上げである。「なんとかなる」と思っていたのかもしれない。仕事を辞めてから気付かされたのは、「自分には三千円の仕事すら誰からも回ってこない」という事実である。自分は他人のふんどしで相撲を取っていたにすぎず、三千円分のなにかを生み出すにはほど遠い人間だった。

それ以降、少しずつ意識は変わったように思うし(「まだまだ」という言葉ももちろん真摯に受け止めたい)、ありがたいことに多くの方と関わる中で仕事とは「社会や人に自分の能力を還元することだ」ということにも気付かされた。そう、仕事とは自分がなにかを与える能力がなければできないことなのだ。以前の自分には能力がなく、また「なにか」を自分で生み出す気概すらもなかった。まるで口を空けて親鳥の餌を待つ雛のようである。

ここまで随分と長くなってしまったが、本題に入りたい。今、「アンテナは仕事をしうるか?」、つまり「社会や人の役に立つ能力を有するのか?」と問われれば、胸をはってYESと答えられる。なぜなら、我々は「バラエティ豊かな人材が参加しており」、また同時に「その能力を時に単独で、時に組み合わせることで、新しい価値を生み出すこと」ができるからだ。

だからそろそろ安売りをやめる。活動の意義や、自分たちの価値は自分たちで決める。そして今後はよりその価値を見出してくれるパートナーと、長い目で見た付き合いをしていきたい。我々の最終的なゴールは「自分たちがお金をかせぐこと」ではないし、「なにかを知ってもらうこと」だけでもない。自分たちと、自分たちが信じているものの価値を高めていくことだ。

先日の記事でも少し書いたが、今の時代「ライター・編集者・カメラマン・デザイナー」は決して給与のいい仕事ではない。フリーランスともなればなおさらで、それは社会がその価値に気がついていないということ。だったらまずは自分たちで、自分たちの価値を認めてやる必要を感じている。

記事の制作フィーについて

まずはじめに注意したい。

これは何度でも声を大にして伝えたいのだけど、今後すべてを以下の料金じゃないと引き受けないわけではない。別料金や最悪、無料でも引き受ける可能性はある。だから今まで通り遠慮なく連絡をしてきて欲しい。

「我々がやっていることにはこれだけの価値がある」、という前提のすり合わせがしたいのだ。お互いの価値を認め合う循環をつくりたい。だから記事制作費用の内訳も全て公表する。今、この金額が払えなくてもいい。いつか別の仕事で返すとか、僕らじゃない誰かに返すのでもいいと思う。でも僕らは一緒になにかをつくるなら、これ以上の価値を提供できるように全力を尽くすことを約束する。そして自分たちが関わるものにより責任を持ちたい。

▼取材制作(レポート・インタビュー)×1本:¥50,000 - 
・ライティング・編集:¥30,000 - 
・写真:¥20,000 - 

※コラム・レビューは要相談

▼プレス(ニュース・イベント)×1本:Free
・掲載の保証はなし
・「プレスタグ」を必ずつける
・タグを外す場合は¥3,000

ANTENNAでは記事の制作以外でも企画・制作はジャンジャン引き受けたい。正直、今いるメンバーでつくれないものの方が少ないのではないかと思う。これまでにも、「アーティスト写真・ミュージックビデオ・ツアー記録・イベント制作・パンフレット制作・Webサイト制作・広報マネジメント」まで幅広く手がけてきた。つくるものは組み合わせてもいいし、単体でもいい。もっとざっくり「●●に困っている」という課題レベルでも手伝えることがあるかもしれないから、まずは今まで通り気軽に相談して欲しい。

最後にもう一度言うけど、「全部有料にしたい」とか、そういう話じゃない。自分たちで、自分たちの価値を決めていきたいだけ。だってそうでしょう?ミュージシャンはつくった音源の価格を、劇団員であれば自分が出演する劇のチケット代を自分で決めるはずだから。そしてその価値はあなたたちに判断して欲しい。後悔はさせない。多分させないと思う。させないんじゃないかな。

面白いことができるなら、大抵のことは全力でのっかるつもりでいる。力にならせて欲しい。

編集長:堤 大樹

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