アンテナの事務所兼イベントスペース「CON-TENNA」を開設します
長い前置き
4年と言えば随分と長い時間だ。
世間一般で言えば、大学に入学してから卒業するまでを思い浮かべる方が多いだろうか。自身の大学4年間を振り返ったところ、あまりに記憶しているものが少ないことに驚く。それなりに楽しかったはずで、今につながっているものもたくさんある。しかし、思い出せることは断片的なものばかり。目的もなく、行き当たりばったりであれやこれやを好きなように試しては捨て、食い散らかした代償だろうか。
いつ習慣化したかも定かではないが、そんな自分でも社会人をぼちぼちこなす頃になると、目標はきちんと言葉にして残すようになるから不思議である。アンテナをスタートした少しあと、2016年に4年分の計画を立てていた。頻繁に手入れし、更新をしてきたようなものではないが、なんとなく一年に一度くらいは見返すことがある。そのリストの2019年の欄には「場所をつくる」とあった。ここに今年度「完了」を記入するとは、28歳でプータローに近い生活をしていた自分には想像もできないのではないかと思う。
場所を持つことは非常にリスキーである。メディアが乱立し、ライターやカメラマンがアウトソーシングで安く買い叩かれる時代に、ただでさえ固定費がバカにならない場所を借りるなど愚の骨頂である。法人メディアでもない自分たちにはなおさらで、本来は無用の長物。それでもなぜか我々アンテナは2019年12月1日には事務所兼イベントスペースを開設するのである。
以前から誰かが口にしてはすぐに立ち消えていた話題。そんな話が本格化したのは2019年の10月である。もちろん場所を借りることに関しては、内部でも様々な意見があった。「場所はそもそも必要なのか」、「賃料はライターのギャラより優先すべきことなのか」、「場所の維持にエネルギーを割かれ、本懐としてのメディア活動に時間が割けないのではないか」。正直、僕は今でもどの質問に対しても「大丈夫だ、場所を借りることが正解だ」と100%言い切ることはできない。リスクを理解しているからこそ、これまで「場所を借りる」ことにひとりでは踏み切れなかったのだ。
そんな自分の気持ちを変えたのは、メンバーである。リスクの分散について申し出をしてくれるだけでなく、「自分たちの場所をつくることのメリット」についてポジティブに話しているのを見ていると、純粋に勇気づけられたし、このタイミングは大きなチャンスのように思えた。メディアの効果を最大に引き上げるために、今、事務所兼イベントスペースをつくってもいいのではないか。
はじめてから痛感したことだが、実はWebメディアというものは、手間のかかるわりに自分たちの活動の実感が得られにくい媒体だ。多くの人にとってSNSに流れてくる情報は、水面に漂う海藻に等しい。それがどこから流れてきたのか、また誰のものなのか気にしている人は多くないように思う。さらに自分たちが取り上げる「ひと・もの・こと」は必ずしも陽の光を浴びるものばかりではなく、この現象に拍車をかける。そうすると情報が拾われたり、拡散されることは自然と少なくなる。このことはただでさえフィーが少ないライターやカメラマンにとっては死活問題だ。紙からWebへメディアが主戦場を移していくにつれ低下する文章に対する単価。それに対する最後の心の砦は、自らの活動意義を感じられることだからだ。数字はそれを直感的に伝えてくれる。バズなどは気にかけたこともないが、追いかけたくなってしまう気持ちも理解はできる。
だから場所をつくる。おかしな話ではない。重要なのは事務所 "兼イベントスペース" であること。二次元上のコミュニケーションに限界があるのであれば、三次元的なコミュニケーションも絡めていく。リアクションはSNSの声に限らないはずだ。いろいろな形で受け取ればいい。さらにイベントスペースであれば、Webメディアで「知って終わる体験」の先にあるものを提供することができるかもしれない。
そうと決まればあとは場所を探すだけである。いくつかの物件を検討した後、下見したSHIKIAMI CONCONを一発で気に入って、次の週には入居を決めた。CONCONが条件を満たしていたこと。入居する他の方々が魅力的なこと。これらももちろん入居を決めた理由のひとつだが、なにより場所の力を感じたことが大きい。場所には力があると思う。自分たちの居場所をどんなひとや場所とグルーピングしていくかも大切だが、それ以上に自分たちがその場所にいたいかどうかを重視したい。
そこからはトントン拍子に話が進んだ。Nue incの松倉さん、川端組。の川端さんご協力の元、審査も通過し入居が無事決まった。かくして我々はSHIKIAMI CONCON No.2を借り、事務所兼イベントスペースを開設する。そして今、この記事を書いている。屋号はアンテナメンバー投票の元、「CON-TENNA」に決めた。由来等をここにツラツラと書くのは野暮な気がするので、また誰かに聞いてやって欲しい。
この選択が正解かどうかはわからないし、リスクは山ほどある。ただ決めたのなら「正解だった」に近づけるようにできることをやる。我々は加速する。
CON-TENNAを使ってやりたいこと
この場所を使って、一緒にイベントや展示会、ワークショップを行えるひとや団体を募集したい。
開設日は12月1日(日)。場所は二条城の近くでnanoの最寄り、と言えば僕の友人たちはイメージがすぐにできるのではないかと思う。
我々のミッションは、誰もが知っているばらの花だろうが、名前など誰も知らない路傍の草葉でも同じ情熱を注ぎ込み、その価値を伝え、考える機会をつくること。それは記事でもイベントでも変わらない。我々は伝達者であり、翻訳者でありハブである。多くの人を迎え、Web媒体とこの場所を使って、新しい価値や見出し、問いを生み出したいと思っている。
だから「一緒になにかをしたい」と思ってくれる人がいるなら、遠慮なく相談をして欲しい。最大席数8人程度の小さなスペースではあるので、制限は多いかもしれないができることを模索したい。とは言え、ただの場所貸しをする気は毛頭なく、お互いの価値を見いだした上で実施されるべきである。今はまだお互い知り合っていないなら知り合うことからはじめよう。
まず今、やろうと思っていることを共有をしておきたい。なにをするかが見えないと声をかけにくいこともわかる。イメージの足しにしてくれたら嬉しい。
・ゆるく集まり情報を交換するライターズサロン
・少人数で学ぶ中長期の週末フォトスクール
・ミュージシャンやディストロの音源蔵出し販売会
・アクセサリー作家のポップアップショップやワークショップ
・アーティストの作品展示
・ライブは……、したいけど、様子を見てからかな(笑)
思い返せば、小さな頃は秘密基地ばかりつくって遊んでいた。家の中で、マンションの空き地で。ひとりで、弟と、友人と。これはその延長戦なのかもしれない。ここまでいろいろと書いたけど、まずは気軽に遊びに来て欲しい。そのためにつくる。それだけ。
いつまでも遊ぼう。
編集長:堤大樹
CON-TENNAに遊びに来る
〒604-8261
京都府京都市式阿弥町130 SHIKIAMI CONCON No.2
いつでもウェルカム!
でも四六時中誰かいられるわけじゃないから、来る前に各種SNSで連絡ください。
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