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『ひかりの歌』公開記念 往復書簡5(宮崎大祐)

こんばんは。
昨夜は渋谷までSabaというシカゴのラッパーを見に行ってきました。
奇しくも会場は僕が一番好きな映画であげようと思っていた『ポーラX』を二十年ほど前に見たシネマライズの跡地でした。
ここまでのセゾン文化云々というやりとりを経てのライズでもあり、一区切りを予感していたところです。
いやーしかし昨夜のライブは本当に良かった。
ラッパーだからといって着飾って喧嘩やら麻薬やら拳銃の話をしなくてもいいんだ、ただただ良い音楽を作ればそれで良いんだ、だってミュージシャンなんだからというシンプルな事実が結晶化したような時間で、間違いなくあの場にいたお客さん全員が生きる上で絶対的に避けられない苦しみを少しだけ軽減させて会場をあとにしたことでしょう。
僕も前回は映画を撮る理由として「意地」や「食い扶持」などとは書きましたが、補足的に、映画を通じて今日のライブのような体験をお客さんにお届けしたいなんていう理由もあるのかなと思った次第です。

SABA是非、聴いてみてください。
https://youtu.be/LTzmjU8aOR4

それはそうと、先日は狂ったように書き殴った駄文をそのまま送ってしまい誠に申し訳ありませんでした。
酒もタバコも呑まず博打も打たず彼女もいないくせに宮崎人間(生物としての宮崎)はぱっと見通常に作動しておりまして、だからなのか、突発的にああいう文章が書きたくなるのです。
まあ、ラムネの錠剤をガリガリかじりながら内向きで安全な興奮を脈絡なく繰り返しているだけなのですが。

さて、好きな映画ですが、難しいですね。
末端とはいえ映画に携わっている人間としては逃げられない問い。
しかし、聞かれるたびに難儀します。
映画プロパーではない方とはじめてお会いすると、はじめまして、何何です、お仕事は?のあとに十中八九この質問が来ますからね。
『ユリイカ』や『ラルジャン』、『百年の絶唱』などと真面目に答えてみても九分九厘相手はそれらのタイトルを知らないですし、『ターミネーター2』とあけすけに言ってみたところで、またまたーとか嘲笑されるのが関の山、その上僕は飽きっぽい性分なので、好きなものは常に更新されています。
そこで最近は「今年見て良かった作品」と期間を区切って答えるようになりました。
ということで、この書簡をどういう方々がご覧になっているかはわかりませんが、僕は映画プロパーの方々のみならず、そうではない方々にもひらけた創作をしたいと思っておりますので、誠に勝手ながら今回はその基準に則ってお答えさせていただきます。

僕は先日見たジョン・ワッツ監督の『スパイダーマン ホームカミング』が非常に好きでした。
手首から白い糸を発射出来る身体能力高めの理系少年がある日義憤に駆られ、赤いタイツをかぶって武器の密売人たちと闘うというようなお話でした。
ややおおざっぱすぎるかもしれませんが、大体そういう話です。
アジア系の肥満児、黒人のアイドル、ムスリムのボンボン、白人の美魔女、イタリア系の肉屋……
この映画では主人公が共に生きる名もなき隣人たちのささやかな日々の営みが丁寧に描写されています。
そんな隣人たちの生活にスパイダーマンはいつも申し訳なさそうに踏み入れ、彼らの苦しみをわずかばかり和らげ、去っていくのです。
最終的にスパイダーマンは当初目標にしていたアヴェンジャーズへの加入を拒否し、地元の隣人たちと暮らすことを選ぶのですが、この映画の世界を明視するまなざしとスパイダーマンの在り方はどこか杉田さんの映画やカメラポジションを想起させ、また自分が理想とする生き様とも重なっていました。
僕は手首から白い糸も出せませんし、身体能力も決して高くはないですが、幸いなことにこの映画の主人公と同じように、見守ってくれている家族や共闘者、隣人がいます。
ときにナードな友人たちと戯れ、心のどこかでアヴェンジャーズに憧れながら、手製の赤いタイツを着込んで、夜の大和を、夜のマンハッタンを、夜の上海を飛び回り、人々の苦しみを少しだけ和らげる仕事がいつか出来たら良いなあ。
そんな風に思わせてくれたこの映画が僕はとても好きでした。

もうええっちゅーに。
また長くなってしまってすみません。
同じ輸送機を見ていたことを確認するための書簡だったかもしれないというお話、とても感動しました。
こうして作風も性格も違う杉田さんとつながり、往復書簡をやりとりするまでの関係になるとは、ほんの一年前までは想像したこともありませんでしたからね。
米軍が良いか悪いかはさておき、物としての米軍機は我々の関係性を反射していたのかもしれません。
これに限らず、我々はいつも知らぬ間に反射しあって、どうしようもなく生かされあっているように感じることがあります。
運命論や宗教的な何かからは遠く離れて、でももっと身近なところで。
だから、またお互いにこんな形でやり取りをすることもあるでしょう。
それまでの人生のまとめとして、それからの人生への気づきとして、そして単純に杉田さんを知るために、こんな機会がまた訪れることを心待ちにしております。

その日まで世界への畏怖を持ったまなざしの集合体としての映画を作り続けてください。
僕もそんな映画が撮れるように日々精進いたします。

まずは『ひかりの歌』の公開がうまくいきますように!

人類が滅びたあとのドラケンスバーグ山脈にゆらゆらと降り注ぐ火山灰の粒子に生まれ変わってしまった、未来の宮崎大祐より


ひかりの歌 公式サイト

ひかりの歌 クラウドファンディング(MotionGallery)

ひかりの歌 劇場用予告編

大和(カリフォルニア)公式サイト

VIDEOPHOBIA 公式ツイッター



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1977年、東京生まれ。映画監督。