高田「先生」にあこがれて

東京のお笑いが好きだ。25年以上前、高校生のころから浅草キッド、松村邦洋、大川興業など彼らの出演する深夜番組を見たり小劇場に通ったりしていた。今でもたまにライブへいく。

当時、彼らのトークには「先生」とよばれる人の話題がよく出た。それは放送作家の高田文夫という人らしい。私はその「先生」を知らなかった。東京のお笑い芸人を束ねて「関東高田組」なる軍団を作り「ラジオビバリー昼ズ」の司会をやっているという。

私はその番組が気になったので、ラジカセの録音予約をし、登校していた。家に帰り再生ボタンを押す。ラジオビバリー昼ズは「先生」がアシスタントを交えて、時事ネタや芸能ネタにジョークや毒舌を交えてしゃべり飛ばす90分番組だった。

その瞬間から私は心を奪われたのだ。世の中にはこんなに面白い人がいるのかと。それからはこの番組を月曜日から金曜日まで録音し、急いで家に帰ってラジカセの再生ボタンを押す日々が続いた。

ラジオでおすすめされたイベントがあれば会場に足を運び、面白かったという本があれば買って読む。もう高田文夫信者である。おかげで東京の演芸にくわしい高校生となってしまった。SNSもない時代だったので、そんな友達は周りに誰もいなかった。

そんなこんなで25年以上、私のそばにはいつもラジオビバリー昼ズと高田先生の存在があった。必然的に、先生みたいな面白くて、サラリと軽い大人ってかっこいいなぁと思うようになっていった。

高田さんが喋る話題にはユーモアが必ず入る。世の中の暗い話題でもギャグや毒舌を交えてカラっとした話になる。そして最後はゲラゲラ笑い飛ばす。そういうところが私は大好きだ。

もう一つ好きなところはさらっとした文章だ。高田さんの書く本は東京の演芸についての話が多い。それは評論のように重苦しくなく、本人曰く「デニーズで無駄話をしているような」さっぱりと軽い文章。軽妙にして洒脱。できることなら私もそういう文を書きたいと思う。

「人生は、五分の真面目に二分侠気、残り三分は茶目に暮らせよ」
この狂歌もラジオで教わった。人生真面目だけじゃなく、茶目っ気も必要なんだよと、私は解釈している。私は何かに行き詰まった時「茶目に暮らせよ」の部分を思い出すことが多い。

ロックバンドのグループ魂は「高田文夫」という曲の中で「真面目は嫌だ、高田文夫になりたかった」と歌っている。私も真面目だけだと嫌だし、ずっと面白いことを追求して笑っていたい。

このような何事にも重苦しくなく、茶目っ気たっぷりのスタンスにあこがれ続けている。しかし影響を受けたからといって、いきなりそんな人になれるわけではない。

最近は先生がよく言う集合場所には早めに着け、という基本的なことから心がけているがそれすらできない。あこがれの道は遠いのだ。

高田さんは心臓の病気で一度倒れて長期休養を取ったが、現在73歳で現役の司会者。ビバリー昼ズも30年以上続く。その間ラジカセからradikoに変わったが、ラジオは私の日常の一部だ。高田文夫は私にとっても「先生」であり続ける。



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