君も見た月

※この物語はフィクションです。

 生きるのが辛い。

 私は毎日そう思っている。特に楽しみがあるわけでもなく、友達もいない。楽しいことがないのだ。最近は学校にも行かなくなり、窓から空を眺めているだけだ。

 なぜだろう。今日は外に出たい気分だ。散歩にでも行こう。ただ、私には私服のセンスがない。変に思われないだろうか。そう思いながら着替えを済ませ、家を出た。

 特に行きたい場所はないので適当に歩いた。歩いたら心が落ち着くかと思ったが、そんなことはなかった。

 私がなぜ希望を失っているのか。中学生までは良かった。友達はいなかったが、それだけだった。高校生になってからいじめられるようになった。それから人間不信になり、無気力になってしまった。

 不登校になってからは、何度もクラスの人からメールが来た。「明日になれば大丈夫」とか「気にしなくていいよ」と書いてある。私はクラスに友達がいない。つまり、書いているのは話したこともない人だ。きっと私がなぜ不登校なのか知らない他人だろう。相手の状態も分かってないのに手紙を送ってくるなんて、こっちにとっては迷惑だ。手紙を書いた人はきっと「不登校のやつに手紙を送る自分はいいやつだ」とでも思っているのだろう。自己肯定感を高めたいだけだ。

 そんなことを考えていると、湖が見えてきた。ここまで来るのは初めてだ。湖には月が映っている。

 私は、ずっと湖を見下ろしていた。湖面に映る私の姿はとても寂しそうだった。

 水は正直者だ。見ている者をそのまま映す。では私は?思ったことをそのまま表せているのか?

 数十分経った。水は変わらず私を映し続けている。すると突然、湖に石が投げ込まれた。

「えっ?」

 誰だろう。

「ひどく落ち込んでいるように見えるけど、大丈夫?」

 なんでわかったんだろう。
「なんでわかったんですか?」
「数十分間ずっと湖を眺めてたから」
 ということは数十分ずっと私を見ていたのだろうか。
「まあ…はい」
「学校行かなくていいの?」
「うぐ…」
 この時間に出かけると、よく言われる。
「あなたには関係ありません」
「関係がない?」
「そうです。他人なので」
「他人…か」

 放っておいて欲しいのに。なんで話しかけてくるんだろう。そう思いながら、また湖を眺めることにした。

「君は、月が好き?」
「えっ…」
「ずっと、湖に映る月を見ていたよね」
「まあ…月を見ると安心するので」
「僕は太陽より月の方が安心できる。なんでだと思う?」
「なんでですか?」
「月は変化する。まるで生き物のようにね。昇る時間も、沈む時間も、見た目も変わる。満ちたり、欠けたりする。何より、見つめていられる。それに比べて太陽は、毎日変わり映えのないことを繰り返している。同じような時間に昇り、沈む。見た目も変わらないし、見つめられない。本当にあるのか疑ってしまう」
「は、はあ…」
「君は僕のことを『他人』と言ったね。でも、僕は違うと思う。君が窓から月を見上げている時、僕は庭で月を見ているかもしれない。同じ月を見た時点で、繋がりができる。この世に他人なんて、存在しないんだよ。だって、あの月は僕が見た月であって、君も見た月なんだからね!」
 む、難しい…理解するのがとても難しい…
「つまり、人に頼っていいってことだよ。僕と君は、他人じゃないんだからね!」

こういう話は初めてですが、どうでしょうか…
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