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私が憧れる競馬実況アナウンサー

こんばんは、京野聖也です。

12月15日(水)、競馬Advent Calendarは私が担当させていただきます。

まずは私のことを全く知らない方もおられると思いますので、自己紹介から始めさせていただきます。

私は競馬実況Vtuberの京野聖也というもので、都合の良い日限定ですが土日は中央競馬ライブさんの競馬中継でメインレースの競馬実況をリアルタイムでしたり、自分のチャンネルでは主にベイスターズ語りやドラフト候補紹介&ドラフト予想とかをしています。
以下そのチャンネルになります。

突然ですが、皆様は競馬中継をどのように視聴していますか?

テレビをご視聴の方であれば
「テレ東、フジテレビ系列」
ラジオを視聴されている方であれば
「ラジオNIKKEI」
有料放送の加入されている方であれば
「BSイレブン、グリーンチャンネル」
だいたいこのあたりの名前が挙がってくるのではないかと思います。

でも実際に競馬中継を行っているテレビ局やラジオ局はその限りではなく、例えばラジオ局を列挙してみますと
・ラジオNIKKEI
・ラジオ日本
・文化放送
・ニッポン放送
・TBSラジオ
・MBSラジオ
などなど、さまざまなラジオ局が競馬中継を放送しています。

それだけ放送局は多いのですが、我々競馬ファンが日頃耳にする競馬実況はどうしてもラジオNIKKEIの実況が多くなります。

確かにラジオNIKKEIの競馬実況は他のラジオ局とは異なり、アナウンサーが競馬実況に特化しているため質が高いです。
他のラジオ局だと野球やってマラソンやって競馬やってという感じですが、ラジオNIKKEIのアナウンサーはスポーツに関しては競馬しかやりませんし。

とはいえ、様々なスポーツを担当しているからこそ生まれた名実況もあります。
例えばフジテレビ三宅アナが実況された1996年日本ダービー。
「音速の末脚が炸裂する!フサイチコンコルド!」は今も色あせないフレーズですが、この言葉は普段F1中継をされている三宅アナだからこそ出てきた言葉であり、重みがあるんだと思います。

前述の通り、世の中にはラジオNIKKEI以外にもたくさんの放送局があり、たくさんの競馬実況アナウンサーがいます。
その全員を紹介することはとてもできませんので、今回のnoteでは私が日頃良く参考にしている競馬実況アナをラジオNIKKEI以外からご紹介したいと思います。

関西テレビ 岡安譲アナ

まずご紹介したいのは岡安 譲(おかやす ゆずる)アナ。
杉本清アナや馬場鉄志アナの系譜を受け継ぐ関西テレビのアナウンサーさんです。
2013年に番組編成の関係から競馬中継から離れましたが、2018年に再度競馬実況に復帰されました。

なぜ岡安アナを一番最初に紹介したかったのかと言えば、この話何回したかわからないんですけれど私が競馬に興味を持ったきっかけが2012年の凱旋門賞だったからです。
結果的にオルフェーヴルは2着に敗れましたが、当時競馬の知識なんて全くなかった私ですら感動した実況でありました。

まあ岡安アナに限らず杉本アナや馬場アナもそうですが、関テレアナの競馬実況はまるで講談を聴いているような心地よさがありますね。
そのような聞き心地の良い実況だからこそ、レースで何か動きがあった際に「おお!」と驚くと、聞く方の意識をグッと引き付けることができます。

岡安アナから学んだテクニック。
~驚きや感嘆の声を実況に織り交ぜる~

例えば2012年菊花賞の向こう正面。
岡安アナはゴールドシップが仕掛けた際に

おお行ったか、ここで内田博幸行ったか!3コーナーを目前にして内田博幸ゴールドシップが動きました」

と実況しました。

基本的に向こう正面はレース実況において隊列を淡々と整理する場合が多いですから、驚きの「おお!」という言葉があることで視聴者の意識を向けることができ、実況に締まりも生まれます。

これ最近私も真似をしておりまして、チャンピオンズカップで正面スタンド前の先行争いで

「まずは先行争い馬場の真ん中から押して11番のアナザートゥルースこれが出ていきますが、外から7番のサンライズホープこれもスーっと先行していきます、さらには4番のインティ、おお!内から一番のソダシ、これがハナを主張していきます」

と整理しました。
初ダートで注目を集めていたソダシが逃げることに対して強調したくてこんな感じで使ってみました。
その音声を聴いてみたい方は以下のリンクからご視聴ください。
チャンピオンズカップの実況は33:30ぐらいからです。

フリーアナウンサー 清水久嗣アナ

まあなんやかんや言いましても、「ラジオNIKKEIの正確な描写で聴きやすい実況が一番ではあるが、フジ三宅アナのようなアツい実況も好きなんだ!」という人が多いのではないでしょうか?

このタイミングで紹介するのはフリー(ニッポン放送契約アナウンサー)の清水 久嗣(しみず ひさし)アナウンサーで、タイプとしては上記2つのハイブリッド実況という感じ。
野球の実況も数多くされていまして、パワプロに収録されていることでご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

現状最も「聴いていてテンションの上がる実況」をする競馬実況アナです。

最後の直線でかなりドラマティックで語彙力の高いフレーズを差し込むのが特徴で、例えばアーモンドアイが勝った2020年天皇賞秋。
以下の動画の03:30あたりからスタートです。

「400を通過、アーモンドアイ外に出してから3番手、馬なりでその視界にダノンプレミアムを捕えて一気に行く!先頭はダノンプレミアム坂を上りきる!アーモンドアイ、クロノジェネシス追ってくる大外フィエールマン200を通過、ダノンプレミアムが逃げる、しかし、シャドーロールが揺れて並んで交わして先頭アーモンドアイ、2番手クロノジェネシスフィエールマン、拍手に送られてアーモンドアイ、芝GⅠ8勝目のゴールイン!」

と清水アナは実況されました。

シャドーロールの件もテンポよく素敵ですが、より強調したいのは
「馬なりでその視界にダノンプレミアムを捕えて一気に行く!」
というところ。

たとえそんな状況だったとしてもそんなフレーズ出ないですよ、普通。

ちなみに私は同じシーンで

「鞭が入ってダノンプレミアム、現在2馬身のリードを持っていますが残り200を通過。手前が変わって9番のアーモンドアイ!並んで、交わしていく!しかし外からはライバルもやってくる!クロノジェネシス、フィエールマン!クロノジェネシス、フィエールマン!しかしアーモンドアイこれらを振り切ってゴールイン!」

と実況しました、あれ?私も結構やるじゃん。
以下その動画のリンクです。

参考にしているとは言いつつも、この語彙力に関してはいくらメモを取っても到底真似できるものではないですし、頭に表現を入れておいてもいざ本番になったら引き出せないと思います。

そんな私が最近清水アナから学んだテクニック。
~強調したいところを敢えてゆっくりと言う~

どういうことかは以下の動画の09:00あたりから観ていただくのが手っ取り早いかと思います。

「キセキ先頭坂を上るまだリードは10馬身ぐらいある!400を通過追ってくるのはグローリーヴェイズ、アーモンドアイ、外に出してカレンブーケドール、デアリングタクト、大 外 は コ ン ト レ イ ル が 飛 ん で き た !」

というところ。

キセキを捕えようとする有力各馬の名前を列挙していくなかで「大外はコントレイルが飛んできた!」のみ、強調するために敢えてテンポを崩してゆっくりと言っていることがわかります。

その意図としてはオルフェーヴル以来の三冠馬、そして父ディープインパクトと同じ無敗の三冠馬ではあるのですが近年はほとんど見ることがない菊花賞→ジャパンカップの厳しいローテーション。

万全のローテで挑む他の各馬と比べれば、疲労度合いを鑑みても三冠馬とはいえ馬群に沈んでもおかしくはない状況。

しかしそんなローテをはねのけて、「無敗の三冠馬であるコントレイル」が大外から伸びてくるという、諸々が込められているのではないかと思います。

このテクニックも最近真似しまして、それがこちらの01:40ぐらいから。

「先頭ですが依然キセキ、和田騎手が追ってリードはまだ2.3馬身あるぞ。2番手の争いですが7番オーソリティ残り400の標識を通過!さあ先頭の5番のキセキが捕まった、7番のオーソリティ、ルメールが前に出る!その外からは4番のシャフリヤール、さ ら に 2 番 の コ ン ト レ イ ル も 飛 ん で き た ! 」

と最後の直線を捌いたのですが「さらに2番のコントレイルも飛んできた!」の場所だけ、わざとゆっくり言っているのがわかるかと思います。

他は突発的に口に出たものですが、外からコントレイルが来た場合真似してやろうと事前に考えていました。

これまでのレースを観れば一目瞭然なのですが、コントレイルってとても賢い馬で、どのレースでも最後の直線になると必ず馬場の最もいいところを走っているんですよね。
もちろん福永騎手のエスコートもあってのものですが。

ですから2021年天皇賞秋でコントレイルの1枠1番を嫌う方もいましたが、私は「コントレイルには関係ない」と迷わず本命を打ちましたし、JCでも「コントレイルは必ず大外から飛んでくる」とずっと身構えていました。

「コントレイルは必ず勝つ」
「それも大外から飛んでくる」

そう信じて疑わなかったからこそ生まれたのがみんなでKEIBAでの実況です。

それはそれとして「さあ先頭の5番のキセキが捕まった、7番のオーソリティ、ルメールが前に出る!」は自分でもよく出てきたなと思います、これは突発的なやつで個人的に好きなフレーズ、このあとご紹介する細渕アナっぽいフレーズだな~と感じています。

ラジオ日本 細渕武揚アナ

私、男性女性問わず結構声フェチだなということに最近になってやっと気がつきまして、女性であれば歌手のAdoさんみたいなちょっとハスキーっぽくて低い声が好きなようです。

男性ならどういう声が好きかというとこの細渕アナのような声色。

声色だけでなく競馬実況における表現も最も参考にしており、私の最も好きな競馬実況アナウンサーがラジオ日本で様々なスポーツの実況をされている細渕 武揚(ほそぶち たけあき)アナウンサーです。

もしかしたら駅伝の実況で知っているという方もおられるかもしれませんね。

清水アナを紹介したときに貼った2020年ジャパンカップ実況で清水アナの前に実況をしているのが細渕アナ。

「残り200で足があがった、キセキが止まりつつある」

の表現はとても参考になりました。

と言いますのも、最後の直線で大逃げしたキセキの足色が鈍りアーモンドアイが先頭に躍り出るシーンの描写。
こういう場合に「キセキが止まった!」と表現するアナウンサーも多いのですが、この「止まる」という表現は少し考えなければいけません。

競馬ファンならば一発で「止まる=足色が鈍る」と変換できますが、世間一般では「止まる=STOP」なのです。
場合によっては故障が発生したとも捉えられかねない言葉になります。

99%の人には違和感なく伝わる言葉でも、1%の人に伝わらないのであればその表現を使ってもいいのか考えなくてはいけません。

そこで「止まりつつある」という表現は非常にスムーズに頭に入ってくるうえに、誤解なく伝わるよい表現であります。

さらに余談になるのですが、表現関連でお話をもう一つ。
フリーアナウンサー山本直也さんのフレーズ
「踏み切ってジャンプ!」
ってあるじゃないですか。

私このフレーズ好きではないんですよ。

その理由なのですが、「踏み切る」という言葉の意味にあります。

踏み切る…跳ぶ前に強く踏んで反動をつける。(広辞苑)

という内容なのですが、では障害競走において競走馬たちは踏み切ってジャンプしているでしょうか?

飛私には走るの延長線で足をひょいと前に出して障害を交わしているように見えます。
少なくとも、跳ぶ前に強く踏んで反動をつけているようには見えません。

踏み切るという言葉からイメージされるのは、例えば跳び箱を飛ぶ際に板でするような一瞬のタメがあるようなジャンプ。

しかし障害競走は人間で例えるなら、ハードルを飛び越えるような、流れるような動きなんです。

したがって「踏み切ってジャンプ」はその場の情景と乖離している内容だと思うのです(考えすぎかもしれませんが)。

ではどのような言葉が適切なのかと言えば、普通に小林アナが障害レースを実況される際に使う「各馬飛越していきます」
これでいいと思います。

話を細渕アナに戻します!
細渕アナの特徴は道中の詳細な描写にあります。
ちなみに2021年ジャパンカップでシャフリヤールがラチに激突した瞬間をきちんと実況できていたのは私が聴いた限り細渕アナだけです、ラジオNIKKEIもスルーしていました。

細渕アナから学んだテクニック。
~先頭まで〇馬身という表現~

細渕アナの実況を聴くまではラジオNIKKEIとフジ関テレの実況しか聴いていなかったので、初めてこのフレーズを聴いたときに「なるほど!」と軽い衝撃を受けました。

「一概にそうとは言い切れない」という指摘は一切無視するんですけれど、競馬というのは一般的には芝でもダートでも中央でも地方でも、逃げ先行の馬が有利です。

そして競馬において、1番人気2番人気3番人気の馬が全て馬券外になる確率はかなり低いんです。
これは『ウイナーズサークルへようこそ』という漫画で読んで学んだことで、手元にその漫画がないので正確な数字は失念してしまったのですが、確か1番人気2番人気3番人気の馬が全て馬券外になる確率は20%ほど。

実際に12/12(日)に行われた中央競馬、中山・中京・阪神の三場開催で全36Rだったのですが、全てのレースで1.2.3番人気のいずれかが馬券に絡んでいます。

上位人気を軸にすればだいたい当たるというわけです(それでもなお難しいんですけれど)。

つまるところ、「人気馬の位置取りは強調して伝えてもいい(情報の優先順位は高い)」。

前述の2021年ジャパンカップで細渕アナは
2コーナーで
「2番のコントレイル、先頭まで8馬身ぐらいの中段です」
3コーナーで
「2番のコントレイルは先頭まで10馬身のところです、中段より前」

とコントレイルの位置取りを都度都度詳しく伝えていました。

基本的に逃げ先行が有利な競馬ですから、「先頭まで5馬身」と聴いたら「よしよし、有力馬は好位の一角につけているな」と思いますし、「先頭まで15馬身」と聴いたら通過タイムにもよりますが「ちょっと後ろすぎるんじゃないか!?」と感じるでしょう(それで差し切ったら「強い!」とも思いますし)。

細渕アナの人気馬を取り上げた詳細な描写が光った実況が、2020年の朝日杯フューチュリティステークス。
人気順は
1番人気 レッドベルオーブ 2.5倍
2番人気 ステラヴェローチェ 5.1倍
3番人気 ホウオウアマゾン 6.5倍
4番人気 モントライゼ 11.2倍
5番人気 ドゥラモンド 13.3倍
6番人気 ショックアクション 15.9倍
7番人気 グレナディアガーズ 17.5倍

06:50あたりから細渕アナの実況ですが、ぜひ全実況を聴き比べしてみてください。

「14番モントライゼがリードまだ5馬身あります。ただ一頭4コーナーから直線コース、2番手にはグレナディアガーズ、そしてブルースピリット中内田厩舎の2頭です。そのあとがショックアクション、さらにはカイザーノヴァ、そしてホウオウアマゾンがいます!さあ内にいるのがステラヴェローチェ先頭まで10馬身、同じような位置レッドベルオーブは外!馬群の中に5番のドゥラモンド!直線残り200、モントライゼが捕まった、今度は2番のグレナディアガーズ伸びてきた6番のブルースピリット!3番手争い4枠2頭、ステラヴェローチェ凄い脚!8番のレッドベルオーブも来るが、先頭は残り50!2番のグレナディアガーズ、リードを2馬身、迫る7番ステラヴェローチェ!しかし2番グレナディアガーズゴールイン!」

青帽子の人気馬2頭に注目していたからこそ、先頭まで同じ距離にいるものの内を突いたステラヴェローチェと大外へ持ち出したレッドベルオーブと、まったく異なる進路を取った人気馬2頭のポジションを詳細に、鮮明に伝えることができています。

先週行われた阪神JF、関テレ吉原アナはナミュールの道中の位置取りについて「後方三番手」としかいいませんでしたが、ラジオNIKKEI山本直アナは「後方寄りすでにインコースにいます」と伝えています。

普通はピンク帽枠の馬が大きく出遅れたら馬群の外々を追走すると思うじゃないですか。
そこで内に馬を入れたC・デムーロ騎手の判断(ナミュールの位置取り)は必ず伝えなくてはいけない情報です。
「ナミュールは内(できればラチ沿いというところまで)」実況でお伝えしなければいけません。

人気馬の位置取りには常に注目しましょう。

終わりに

本当はまだお伝えしたいアナウンサーが2名ほどいるのですが、文字数も多くなってきたのでこのあたりにしたいと思います。

えっ、まだまだ競馬実況について語ってほしいですって?

それならぜひ私のYouTubeチャンネルを登録して下さい。

月に1本のペースで競馬で名実況と言われているものを取り上げ、「それがなぜ名実況と言われているのか」「なぜ心に響くのか」を語る【競馬名実況解説】という動画を投稿しています。

その記念すべき第一回リンクを下記に貼っておきますので、もしよければご視聴いただければと思います。

それではこのあたりで筆を置きます、今後とも京野をどうぞごひいきに。


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