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5分で読める19-20シーズンのアストンヴィラ

皆さんはアストンヴィラというクラブをご存知でしょうか。

よくウエストハムやバーンリーとユニフォームの色が似ていることから間違われることもありますが、かつてはヨーロッパチャンピオンにも輝いたことがある歴史のあるクラブです。

最近では日本の有志が集った「ASTONVILLA JAPAN」というコミュニティが発足するなど日本でも人気が出てきたクラブの1つです。そんなアストンヴィラをぱぱっと手軽に5分で読めるように19/20シーズンをまとめてみました。


1.夏の補強

夏の補強ではプレミアリーグの中で2番目のお金を使って補強を頑張りました。

2部からの昇格組であり、チャンピオンシップを戦った中での主力であるタミー・アブラハムが、ローン終了でチェルシーに復帰してしまったこともあり、注目すべきはセンターフォワードに誰を連れてくるかが補強の注目ポイントでした。

結果として連れてきたのはウェズレイ・モラエス。23歳の若手で191cmの長身を活かしたポストプレーヤーとしての活躍が期待されます。アストンヴィラはクリスティアン・ベンテケのように強力なセンターフォワードを配置することが多いクラブなので、彼のようなプレースタイルの選手は歓迎されます。

また昨シーズンのアストンヴィラはゴールキーパーが安定せず、シーズンの4回ゴールキーパーが変わるという偉業を達成してしまった為に、このポジションの補強にも注目が集まりました。連れてきたのはトム・ヒートン。バーンリーで正ゴールキーパーを務めた彼に求められるのはゴールキーパーの安定とプレミアリーグの豊富な経験を活かした守備の統率です。

チャンピオンシップを戦った主力でクラブの誰からも愛されるジャック・グリーリッシュはクラブの資金が足りないことを理由に「愛しているからこそ僕はクラブのために移籍するよ」といったセリフを残し、トッテナムホットスパーへの移籍がほぼ確実とされていながら、後日発表された追加オーナーの資金援助により残留。また中盤のジョン・マッギンも残留。さらにはボーンマスからレンタル加入だったディフェンスラインの要のタイロン・ミングス、リールからレンタル加入のオランダ人ウインガーのエル・ガジの2者が完全移籍で加入が決定。

その他、課題であったサイドバックやセンターバック、中盤にもメンバーを加えて、当面の目標としては「まずはプレミアリーグへの残留」が現実的であるアストンヴィラにとっては、その目標が現実的に思えるようなメンバーを揃えることに成功しました。


1.2 アストンヴィラの戦い方

プレミアリーグが開幕する前に昨シーズンのアストンヴィラがチャンピオンシップでどんな戦い方をしていたかをざっくりと紹介していきたいと思います。

シーズン初めはスティーブ・ブルース監督(現ニューカッスル・ユナイテッド)が就任しており、怒ったサポーターにキャベツを投げられるほど酷い成績を残していました。戦い方としては個人の力に任せた、いわゆる「これぞプレミアリーグ」というもの。守備面でも整備を出来ずに対策を練ってきたチームには簡単に攻撃を阻止され、ゴールを決められていました。

そんな監督をばっさりと解任して連れてきたのがディーン・スミス監督。4-3-3の配置で中盤はアンカーを配置する逆トライアングル型。ディーン・スミス監督はまず守備の整備を行いました。自陣にこもって相手の攻撃を受け、その後カウンターでサイドから相手を仕留めることを主たる攻撃パターンに。このフォーメーションによってドリブルが得意のエル・ガジが活き活きとプレーを出来るようになりました。中央では足元でも頭でも決められアシストも出来るタミー・アブラハムが待ち構え、逆トライアングルのオフェンシブな2枚がそのこぼれ球を処理していきます。

そのオフェンシブな2枚の1人である王様のジャック・グリーリッシュは得意のドリブルを発揮できるようになり、運動量豊富のジョン・マッギンとペアを組んで波状攻撃を仕掛けます。またセットプレーからの得点も増え、キッカーには直接でもゴールを叩き込めるコナー・フリハンを中心にゴールを狙える形を増やしていきました。補強を見てもこの枠組みをさらに強化するような人材選びを行っており、このメインディッシュとなるウェズレイ・モラエスの出来がチームの将来を握るといっても過言ではないと言えます。


2.プレミアリーグ

少し余談を挟ませてください。アストンヴィラが2部に落ちたのは15-16シーズンのことで、実に3年間もチャンピオンシップを味わってきました。

チャンピオンシップになると何が大変かというと日本から試合を観ることが難しくなるのです。AVTVという独自のプラットフォームにお金を払って観ることになり、その額は月に約2000円。お金を払っているのに日本からだとsky sportsが試合を放送する日には放映権を持っていかれて試合が観られなくなったり、放送が途中で途切れてしまってその日は二度と見ることが出来なくなるなんてこともざらにありました。ダゾーン最高です。


さて、本筋に戻っていきますが、結果としてウェズレイがなかなか爆発しなかったんです。

大金をつぎ込んだ選手だからか、他にポストプレーヤータイプの選手がいないからか、爆発しなくとも我慢をしてウェズレイを使い続ける日々。サポーターも、監督も、他の選手も、ウェズレイ本人も、とにかく彼が爆発するのを心待ちにした日々。メインディッシュがなかなか味を出してくれませんでした。

正ゴールキーパーとして招いたトム・ヒートンはその経験と統率力でチームの何度も救い、最後の砦として君臨していましたが、その他の新戦力がなかなか試合に馴染みきれていないことから「戦力がチャンピオンシップ状態」の中で戦わざるを得ませんでした。

しかしながら、そのチャンピオンシップで活躍したジョン・マッギンが大爆発。運動量はもちろん、持ち前の身体の強さを活かしたボールキープ力、またサポーターからは「マッギン砲」と呼ばれるミドルシュートでチームを牽引していきます。ジャック・グリーリッシュも負けてはいません。フィジカル的な部分を考慮してか、一時ウインガーとしても起用されていましたが、得点力でも大きく成長してチームの10番として十分な活躍を見せてくれました。

サイドバックは両方新戦力を起用。左にマット・ターゲット、右にフレデリック・ギルベールの2枚は馴染むのに時間はかかりましたが果敢なオーバーラップでウインガーを援護、クロスは下手。

ディーン・スミス監督は失点の多さからかチャンピオンシップを勝ち抜いてきた4-3-3システムをついに変更。3-4-3システムの3バックシステムを採用。中盤を3枚で戦ってきたところを1枚削って、センターバックを増やすことで守備に重きをかけます。

このシステムで失点数が減ったとは言いません。しかし、チームとして守備を意識することが出来るようになった(かどうかは言い切れませんが)ために全体の姿勢が分かりやすくなり、確実に勝てる試合を増やしていくことに成功しました。


4.怪我人

アストンヴィラにとって想定外であろう、怪我。

どのクラブも怪我をすることはあり、それに悩まされたことも少なくないでしょう。しかし、いまのヴィラにとってはその怪我をした人が痛すぎる。

チームのメインディッシュとして活躍が期待されたウェズレイ・モラエスが1月1日のバーンリー戦で素晴らしい動きにゴールとアシスト未遂(VARで取り消される)という結果も添えて爆発の兆しを見せたその試合で9か月の離脱。センターフォワードタイプの選手を失ってしまいます。足りないではなく、いないのです。ストライカー不在でどう戦えばいいんだ。

また、同試合にて補強の唯一の"当たり"だったトム・ヒートンも怪我で離脱。チームの爆発しかけのストライカーと正ゴールキーパーを一度に失ってしまう緊急事態。さらには先ほど褒め散らかしたジョン・マッギンも12月22日のサウサンプトン戦にてしれっと怪我にて離脱。プレミアリーグで大活躍を見せていたジョン・マッギンもいなくなってしまいました。

そんな事態に補強で対抗します。

ゴールキーパーにはナポリで出場機会をなくしていた元リヴァプールのペペ・レイナを獲得。中盤にはレスターを奇跡の優勝に導いたダニー・ドリンクウォーターを、フォワードにはタンザニア代表のムブワナ・サマッタの3名を獲得。

ペペ・レイナとダニー・ドリンクウォーターは既に試合に出場しており、ペペはまだコンディションが覚束ない部分もところどころに見えはするものの納得の働き。ドリンクウォーターはジョン・マッギンの代わりとして呼ばれたにしては物足りなさを感じるものの、ポテンシャル自体は高い(と信じたい)らしく細かい動き直しでボールを引き出そうとする動きも見られます。


5.これからの展望

これからの試合の見方としては残り試合数と獲得勝ち点数を見ると分かりやすいと思います。

プレミアリーグの試合数も残り14試合。ここ数年の残留ラインを見ると確定に限りなく近い勝ち点数が「40」、現在の勝ち点数が「25」。

つまり14試合で15ポイントを稼ぐことができれば残留が限りなく近くなるという現実的なライン。ストライカーとゴールキーパーと中盤の要を失った今、補強した選手たちがどうフィットしていくのか。また、強敵相手にどれだけポイントを稼ぐことができるのかは見どころです。

現在、アストンヴィラに興味を持ってくれている人は着々と増え続けてくれています。それなりにツイッターでも試合中には日本語でツイートが飛び交っております。「海外サッカーを見てみたいけど」「プレミアリーグを見てみたいけど」と考えている皆さんにぜひアストンヴィラの試合を観て、感想を共有し合える仲間が増えることを心待ちにしています。


※出来る限り客観的に書いたつもりですが個人の見解が含まれる部分があります。事実と異なる部分は随時修正していくつもりです。ご理解いただけると嬉しいです。


6.もっと知りたいアストンヴィラ

ここまでは大筋を元にアストンヴィラの今シーズンを振り返ってみましたが、もっと知りたいと思ってくれた方向けにいたらぬ情報をお教えしたいと思います。興味があればお付き合いください。



(1)VARは嫌い!

アストンヴィラはVARでいままでの3回のゴールを取り消されてきました。ちなみに、最も取り消された回数が多いのはウエストハムとシェフィールドユナイテッドの5回だそうです。

出所:

そのうちの1つが、ネットニュースでも話題になっているように「最も最低なゴール取り消し判定」だったのです。

問題のシーンがこちら

冒頭部分にもあるように、ウェズレイ・モレイラのこの判定がオフサイドであるとVARを通して判定されてしまったのです。

また、コナー・フリハンがオフサイドのかかりようのないミドルシュートを叩き込んだ時にもVARによってその前のプレーに問題があるといってゴールを取り消されたこともありました。降格争いの大事な1得点を取り消されることの苦しさはVARへの批判へ繋がるらしく、現地のヴィラサポーターからは「失せろVAR!」との厳しい声も聞こえてきます。(ちなみに日本からも聞こえます)


(2)グリーリッシュのソックスはなぜ短い?

アストンヴィラを愛し、そしてアストンヴィラに愛されたヴィラの王様ことジャック・グリーリッシュ。

甘いマスク、特徴的なヘアスタイル、1試合平均約5回の被ファール数、そして短いソックスが特徴です。

そんな彼に寄せられるのが「あいつはレガース(すね当て)を付けているのか?」という質問。答えはYES。わざわざ子供用のレガースを用いているそうです。

ちなみに、彼はチェルシーのランパード監督に「彼はファールを貰う才能に長けているよ」とバカにされていました。ちょっとおもしろい。


(3)キーパー変わりすぎ(笑)

いままでの事例を知りませんが、シーズンに4回キーパーが変わることって珍しいですよね。

昨シーズンのアストンヴィラはアトレティコマドリーから鳴り物入りで加入したロブレ・カチニッチに始まり、バン、ニーラン、スティアとシーズンに4回もキーパーが入れ替わりました。

最終的には昇格を決めるプレーオフのセミファイナルで最後のPK戦にて無双をしたのはいい思い出です。


(4)新戦力の他の人?

本筋では書けなかったけども魅力的な選手たちの様子も分かってきたので、今シーズン加入した選手をそれぞれ簡単な注釈を入れて紹介してみようと思います。


MFホタ:スペイン人ウインガーとして期待されて加入したものの、怪我の影響もあって特徴的な働きはなし。プレシーズンマッチでは「ホタが一番いいね!」と言われていたのにな。

DFコートニー・ハウス:家みたいな名前の選手。センターバックとして置いておけばそれなりに活躍してくれて、サイドバックに置けばバリバリ前に進出していって穴をあける可愛いハウスくん。

DFマット・ターゲット:主戦場は左サイドでサウサンプトンから来たサイドバック。果敢なオーバーラップで攻撃の厚みを加えられるものの、個人でサイドを打開できるほどの能力は持ち合わせておらず惜しい選手。クロスが変なところに跳んでいく。

DFエンズリー・コンサ:4-3-3時代は中盤として使われるもののアジリティの低さであっけなくやられていました。ただ3バックの一角として置いておくと個人で持ち上がったり、効果的な縦パスを入れられたりと、悪くない働きをしてくれるように。先日のワトフォード戦で降格圏内から脱出する重要な逆転弾を後半アディショナルタイムに決めて一躍ヒーローになったものの、実は最後に他の選手に当たっていたことが発覚して公式記録ではゴールにカウントされず。

DFエンゲルス:身長のあるセンターバック、開幕当初はミングスと2センターを組んでいたものの、良くもなく悪くもなくのどっちつかずの選手。タイロン・ミングスがドレッドヘアーだから印象が薄れてしまったかも。4バックのセンターバック向き。

FWトレゼゲ:トレゼゲは愛称で、正式名称はイブラヒム・ハッサン。ウインガーとして機用されるも、相手をぶち抜く突破力には欠く。クロス精度が高い訳でもなく、シュートが上手い訳でもないけど、なんとなく使われているような印象を受ける。ただ守備には献身的で、終盤のスタミナが厳しい時でも走ってくれる姿はかわいいと思う。エジプト人オーナーの意向なのかな。

MFドウグラス・ルイス:センターハーフとして使われるルイス。特徴はミドルシュートで、こぼれ球や落としの玉を枠内に沈める天才。あとは守備面でも粗さが見えたり、ファールを取りやすかったり、ボールロストを簡単にしてしまうところから頼りがいがなかったけど、最近になって急に頼りになる男になってきた!自分のツイートを見返してたら「ルイス交代しろ」がめちゃくちゃ多かった

MFマーベラス・ナカンバ:名前がマーベラスで覚えやすいし、ナカンバは長崎の言葉で「泣かないといけない」みたいな意味になるからなんか好き。カンテ2世と勝手に呼ばれており、特徴はボールの刈り取り。カンテほどの機動力はないものの1vs1の勝負では高い確率でボールを刈り取れる。攻撃性は期待するほどではないけど、彼のボール奪取が高い位置で行われる時には波状攻撃が可能。特にフォーメーションの変化で中盤が減ったからこそ彼の動きが目立ってきたような気がします。


こんなところでしょうか。

ここまで読んでくれた皆さん、ぜひアストンヴィラを応援してみてくださいね。








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