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98年生まれの僕が初めてフィルムカメラで写真を撮ってみた感想と驚き

昨夜は自宅で700mlのワインを飲み、潰れるように布団に入った僕は6時半に目が覚めました。バイトの無い土曜日、朝からベッド上でネットフリックスを開き、見たかったドラマを最終話まで視聴してもまだ10時。

時間が有り余る土曜日に、先日友人から買い取ったフィルムカメラで写真を撮ってみようと起き上がりました。


僕とカメラとの出会い

僕とカメラとの出会いは小学生の時です。

親が持っていたデジタルカメラを使ったのが初めてで、当時はスマートフォンもなかったので唯一の写真を撮る手段として使っていました。最近では初めてのカメラがDSやスマートフォンと答える子も少なくないかもしれません。

当時からカメラの主人公になるよりも、主人公を探して写真を撮る方が好きな小学生でしたが、そんな僕も高校生の時にスマートフォンを手に入れて数々の写真を撮ってきました。大学生になると一眼レフカメラ(正確にはネオ一眼)を手に入れて、趣味であるサッカー観戦時に使用しながらシャッタースピードや絞りを理解するという経緯で今に至ります。

そんな大学生活の中で僕は「写ルンです」に出会います。きっかけはひょんなところからでしたが、スマートフォンや一眼レフカメラに比べて記録はフィルム、写真を撮っても現像にお金や時間がかかるし撮りなおすこともできません。画質も圧倒的に劣るカメラですが、そんな不便なカメラだからこその魅力をいくつも感じていました。それを次章で紹介させてください。


98年生まれの僕が感じるフィルムカメラの魅力

僕はいままでに「撮影枚数に制限のある環境」がありませんでした。

いくらでも撮りなおしが出来て、意味のない写真をいくらでも撮れる環境にあった僕ですが、たった30枚を撮影するのにフィルム代と現像代を合わせて2000円(!)もかかってしまうフィルムカメラと出会ってしまいます。そこで「1枚の重み」を感じることになりました。レンズを向けても写真を撮らないなんてことは絶対に有り得なかったのですが、1枚の重みがあることで写真を撮る目的を深く考えるようになり、写真そのものに対する関心が強く深まるようになりました。

それこそが僕の感じるフィルムカメラの最大の魅力だと思います。

また、今ではシャッターを押すだけでもそこそこ綺麗な写真を撮らせてくれる便利な機能がありますが、手軽だからこそカメラがただの道具であると感じてしまうのではないでしょうか。だからこそ、自分側からカメラに合わせていかないといけないという無骨さが、この不便で金のかかるフィルムカメラに対して強い愛着を持たせてくれるのではないかと考えています。

それから、最近「小説はバッテリーが減らないからいいな」と思ったことがあったのですが、フィルムカメラも同様に「昔の人たちってこんな不便な環境で写真を撮っていたのか」と歴史博物館にいるような気持ちになりました。


撮影に向けての準備

僕が手にしたフィルムカメラは、ASAHI PENTAX SP。1964年に発売されて全世界で400万台以上を売り上げたといわれるメジャーなカメラだったそうです。

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「撮り前にフィルムを巻く?」
「そもそもフィルムを入れるところはどうやって開けるの?」
「まずフィルムってどこで売ってるの?」

というくらい知識に疎かった僕としては、まずGoogleで使い方を調べてみました。

スクリーンショット (498)

(出所:ASAHI PENTAX SP 取り扱い説明書)

いまではiPhoneのように説明書を読まなくても使えるように設計されているものも少なくないですが、この当時は説明書を読まなければ使い方がさっぱり分からない人が多数だったのだろうと感じるほど詳細に書かれた説明です。YouTubeでフィルムの入れ方の動画を視聴しながら空撮りをする予習をして、さっそく近くのカメラ屋さんに行ってフィルムを購入してきました。

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さっそく近くのカフェに入って開封してみました。このプラケースは「小学校の時に理科の実験か図工で使うもの」という認識しかなく、これがフィルムを入れるケースだということをここで初めて知りました。

またこのカメラには露出計が付いているのですが、電池が切れて動かないために今回はスマートフォンの「露出計アプリ」を使用しました。絞りを指定をすると適切なシャッタースピードを導きだしてくれるというものです。

それでは実際にフィルムカメラを体験していきます。舞台は僕が一人暮らしをしている佐世保市で、佐世保駅の近くにある日本でも上位に入るほどの長さを誇る四ケ町商店街とその周辺です。アーケード内には古くからある商店も多く、フィルムカメラの質感が活きるかもしれないとここを選定しました。


実際の撮影

今回の目的は「このカメラが本当に使えるのか、使えるのであればどの程度の設定で撮影すればいいか」と、要するにお試し撮影です。せっかくのお試し撮影なので、いろいろな条件で被写体も出来る限りばらばらにしていきます。また、その写真の説明をちょろちょろと入れながら紹介させてください。

最初に撮影した写真がこちら。

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絞りは特に意味もなく4で固定して、まずはシャッタースピード(以下、SSと表記)だけを変えて撮影していきます。この写真はカフェから最も近くにあった公衆電話機。ピントも合っていて、明るさもバッチリだと思います。

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アーケード内にいた修行僧っぽい人、手に持っている箱のようなものにお金を入れてもらってました。ピントがややずれてますかね。

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アーケード内にある交番のすぐ横にある銅像。あまり意識してなかったものですが、カメラを持ったからこそ見つけた銅像です。

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ちょっとレトロなおもちゃ屋さん。古めかしい雰囲気ですが、中ではニンテンドースイッチの新作のポケモンが売られていました。背景がしっかりぼやけてくれて、絞りは4で感覚的には良いなあと感じました。

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ピントが合っていませんし、暗すぎるのでシャッタースピードも速すぎたようですが、このアンダーグラウンド感は嫌いじゃないです。

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こちらは文房具店。近くに佐世保五番街という中型施設の中に最新の文房具屋さんがあるのですが、どうやって生計を立てているのでしょうか。

そういえばこのアーケード内には「本当に売れてるの?」というようなお店が並んでいたりするので収益性だけがお店を出し続けている理由じゃないのかもしれません。

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まさにフィルムカメラの時代の乗り物!相性ピッタリ。ピントもズレ無し。なかなかお気に入りの一枚です。このように昭和感のある被写体は佐世保だからこそあるものですよね。

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アーケードに併設されている佐世保中央駅に入るための小道。シャッタースピードは完全にスマホアプリに頼り切りなのですが、写真を撮る前にスマホアプリで確認をして、フィルムを巻いて、シャッタースピードを変えて撮影と3段階の手間がかかるのがそれなりに不便です。

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商店街をさらに奥に進んでいくと、三ケ町商店街と名前が変わっていきます。そこにある靴屋さんも前に置かれたこの置物。メガネがずれていますが、ここから絞りを2.8に変えています。

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佐世保には米軍基地があり、商店街の中を当たり前のようにアメリカ兵が歩いています。夜になると瓶ビールを持っている屈強な男たちがアーケードを練り歩いていたり、ドルで支払えるお店が少なからずあったりと面白い街です。今回の中で唯一しゃがんで撮影しました。

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このように奥行きのある写真が好きなんですよね。信号を待っている人たちにピントを合わせましたが悪くないです。絞りをもうちょっと緩めておけばよかったかも。

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さらに奥に行くと旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館があります。目の前まで行ったのですが、うまいこと構図が決まらずシャッターを押せませんでしたが、背景に入れてみるとどうだろうと思って撮ったものです。しかし、左側の立体駐車場と右側の案内図が入ったので今風な感じが出ましたね。

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そこから川沿いを歩いていると、道中で「あら!フィルムカメラじゃない!」と柴犬をお散歩中のご夫妻に話かけていただいて、可愛い柴犬をパシャリと撮らせてもらったのですが、とんでもなくショックを受けてしまったような表情の柴犬になってしまいました。

過去の思い出なんかの話を聞いたりしながら、お散歩を途中まで同行させてもらいましたが、フィルムカメラどころかカメラが普及もしていない時代を生きた方々ですから、いまのカメラとの違いを話してみると「時代も変わったものね」と話されていました。

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せっかく川辺まで来たので地面すれすれに水を受けている階段を見つけて休憩をとります。先ほどの写真では絞りを5に変えて、再度4に戻していたので先ほどの写真と比較すると背景の映り込み方がややはっきりしたように感じます。

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少しばかり歩いて歩道橋に。フィルムカメラの面白さは高いところから撮る写真だと思っていましたが、ジオラマのような雰囲気になりますよね。絞りを8に変えて全体を撮影してみましたが、横断歩道を渡る人々が綺麗に止まって見えます。このまま世界の時間が止まればいいのに。

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せっかく歩道橋を上ったので、させぼ四ケ町を上から撮ってみました。さっきの写真が逆光になってしまったので、同様の設定で反対側も撮影してみましたが暗すぎますね。絞りの値によって写真の質感が大きく変わるのが面白いなあと現像してみて思いました。

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川沿いから大通りに出る橋のところ。昔この場所で2年ほど付き合っていた彼女の後ろ姿を映した写真を撮ったことがあります。タイトルをつけるなら「もういない」。なんてことを思っていたのですが、痛すぎる。これは誰にも言えないと、自分の胸の中にそっとしまいこみました。

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またてくてくと歩いていると野菜売り場が。僕は節約のためのこの一週間、ずっとパスタだけを食べ続けているのですが(おかげで食費は週に1500円)、野菜を食べなきゃなあと思いながら撮った写真です。やけに鮮明でフィルムカメラ感がありません。

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ここでようやく絞りを2.8と僕が一眼レフで使っている数値と同じものにしてみましたが、思っていたよりもしっかりと絞れていますよね。牛と女の子が戯れ合っている銅像です。

近くは子連れの夫婦がたくさん遊びに来ていて、早く結婚したいなと思いました。最近は女性関係が無さ過ぎるあまりにワインの瓶のことを彼女と呼び、抱き枕にして寝ているのでそうそう結婚なんてできそうもありません。

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絞りを2.8にしてからの写真のキレがなかなかいいです。先ほどの逆光の写真と比較する意味で撮ってみたカブ。日本人の生活スタイルを大きく変えたこのバイクは、なんとなくこのカメラと似たようなところがあるのかもしれないなと思いましたが、カブは別に日本で初めてできたバイクではないことを思い出しました。

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個人的に鏡に映る自分の写真を撮るのが好きなのですが、可愛らしい雑貨屋さんとクリスマスに向けてシーズン感を出しているガラスで一枚パシャリ。

思ったような写真は撮れませんでしたが、お店の人が出てきてくれて「ありがとう!」となぜかお礼を言っていただいてしまって、素敵なお店ですねと返すと「またきてね、写真撮ってください」と言われてしまい、またフィルムカメラをこさえて写真を撮りにこようと思います(今度は置かれているものにピントを合わせて)

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舞台を移して佐世保五番街という中型商業施設に来てみました。

佐世保港から出る船をみながらスターバックスのコーヒーを飲むというおしゃれなこともできます。最近では中国から巨大客船がよく来ているみたいで、以前この近くの動物園でバイトをしていた時に「今日は中国から客船来る日だから品出しは多めにね!」と佐世保市の経済にも大きな影響を与えているそうです。これぞフィルムカメラというような写真が撮れました。影の感じが美しいですね、フィルムカメラは日光を受けるととたんに美しい写真が撮れるようになって面白いです。

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同じ場所でもう一枚。奥に見えるのがインターナショナルポートで、先ほどの中国からの客船は大体奥に泊まっています。可愛い子供たちとそのお母さん。絞りをもうちょっと閉じたほうが綺麗だったかもしれませんが、この3人が強調される形になってこれはこれでいいのかもなと思いました。

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佐世保駅の改札に来てみました。僕は趣味のサッカー観戦で佐世保から福岡まで1年で32往復しているような人なので、改札を出ていくことには慣れっこです。佐世保駅構内にあるコーヒーショップのコーヒーがとてもおいしくて、たまに通ってます。ただあまりに現代的なものを撮影すると、どうしてもフィルムカメラである必要性を感じない気がします。

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絞りを2.8にしてバス停を撮ってみたのですが、やはりしっかりと背景がぼやけてくれています。スマートフォンのカメラは現在ぼかし機能を付けるためにレンズを本体にいくつも搭載している機種もありますが、1960年代からこのようなぼけ感を出せるんですね。

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今回の写真はこれが最後です。駐輪禁止の横に停めてある自転車ってなんかいいですよね。いや、本当はダメなんですけど。

これを撮っているとバイト先の店長とお会いしたのでフィルムカメラについての話をお聞きしましたが、「フィルムカメラは操作が難しいから写ルンですみたいなインスタントカメラが出来たんだよ」とのこと。なるほど。


フィルムカメラを使ってみて

さて、フィルムカメラを使ってみての感想ですが。やっぱり不便です。

しかし、その不便さを上回るほどの期待感があります。これはどんな写真が撮れているか分からないという所にあり、フィルムカメラでしか味わえない感覚だったと思います。現像をしてみて出来上がった写真たちを見て、今日はそういえばここに行ったんだったと懐かしくなったように、これを1か月単位でやってみると楽しそうだなあと感じた次第です。

また、実際に使ってみると「せっかくだから良い写真を撮りたい」周囲を丹念に観察するようになりました。いままでのカメラなら「とりあえず撮ってけ!」とパシャリとしていたので、フィルムカメラならではなのかなと感じます。実際に出来上がった写真を見て「ここも撮っておけばよかった!」と限られたフィルムの中で何を撮るかを選択する過程での後悔もありました。恐らく回数を重ねるごとにその選択も上手くなっていき、納得のいく写真も増えていくものですかね。

初めにも考えていたように「1枚の重み」、それこそがフィルムカメラの良さであると同時に、フィルムカメラを通じた年配の方を始めとしたコミュニケーションも面白いポイントでした。僕たち若い世代にとって、年配の方との共通点がいままで(ほとんど)ありませんでしたが、フィルムカメラを通じてその人の過去の思い出を聞くというような流れは自分の中の1つの財産になりました。

このカメラが発売されて55年が経とうとしていますが、今の70代以上の方がちょうど僕の今の世代の時にどんな経験があったのかを聞いていけるかもしれないという期待がこれからの楽しみになったように、将来僕が70歳になったとき、その時の20歳(2048年生まれの子たち)は何を使って写真を撮っているのでしょうか。ちょっぴり楽しみです。


参考

Pentax- ASAHI PENTAX SP 取り扱い説明書


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