見出し画像

「自殺会議」のトークイベントに行ってきました

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/106801

末井昭さんの著書「自殺会議」のトークイベントに行ってきました。
「自殺会議」の本も今、読了。
予想以上に面白く、あけすけな表現にくすりと笑いました。
読後感は不思議なほど清々しかったのです。それは、末井さんのやさしく、どこまでもフラットな目線で描かれた「生きづらさを感じる人々」へのエールが、散りばめられているからかも知れません。
さらに「人はなぜ自殺するのか」「日本はなぜ自殺大国なのか」を民俗学、宗教、精神医学的なアプローチもしていて、深いです。浅瀬かと思ったら、どっぷりと「人はなぜ生きるのか?」という哲学の深海を覗いてしまった感覚。


さてトークイベント。
そもそも、なぜ今回このイベントに行こうと思ったのかと言うと、大きな理由は今月(1月)3日に、仕事の付き合いがあった編集者の女性が、自殺で亡くなったのです。シングルマザーで、2人のお子さんのうち男の子に発達障害があり、とても手を焼いているということ話していました。
そんな悩みは聞いていましたが「まさか亡くなるなんて!」と驚く反面
「そうなのか・・」となぜか少し納得している自分がいました。
とてもテキパキと仕事ができる人でしたが、精神的に不安定なところもあり、時々弱さを見せていました。そのときに自分に何かできることはなかったのか?という後悔と、まだ中高生であろうお子さんたちのことが心に残っていました。

今回の登壇者の末井さん、岡さん、弓指さんのお三方も自殺遺族。
それも母親を亡くしています。
と、イベントの初っぱなで「今、死にたい気分なんです」と岡さん。
なぜに??と思いましたが、今、鬱でそういう気分なのだそう。
「岡さん、死なないで!!」という気分の中で会は進行。

母親という大きな存在を亡くしたときに、子供はどうやってその心を癒し、乗り越えるのか。弓指さんのいう「『母親に自殺された子供』という呪い」を解く方法は様々でした。母親に隣家の青年とダイナマイト心中された末井さんは、それを本に書くことで、弓指さんは絵を描くこと、そして岡さんは「母親が自殺した」という旨の電話を受けた後に、以前自分が取材した、その方も親が自殺したという人に電話をかけたそうです。
興味深いのは、その行動それぞれが、お三方の仕事に繋がっているということ。人は大きな悲しみに遭遇したとき、無意識にそれぞれの得意な方法で悲しみを癒す行為をしてしまうのかも知れません。

そして「自殺会議」の中にもあるように「自殺を減らすのは、自殺した人の死を悼み、その人に思いを馳せること」と末井さんは言います。その通り、弓指さんのお母さんは巨大なアートとして蘇り、末井さんのお母さんは本や映画になり、さらに弓指さんの作品の中でも蘇りました。それもとびきり魅力的にアップデートして。

もちろん、あまりにもつらい思い出なので、心の奥底にしまっている人も多いと思います。でもいなくなるわけではない。
特に「自殺」という方法で突然家族を亡くした遺族は「なぜ?」という疑問がいつまでも付きまとうと思います。
問いたくも、もうそのひとはいない。だから繰り返し心の蓋を開けて思い出し、語り、作品にしたり「この世」に引き戻しているのかも知れません。遺族の心の中で新たな生を与えられ、ある意味、新しい物語を生み出している死者に「なぜ?」「どうして?」と問いかけ続ける行為。
その「なぜ?」と言う問いが、新たに「死にたい」と願う人への「なぜ?」という問いかけにつながると思いました。

とても良いイベントでした。こうしてオープンに「自殺」や「死」を語りあうことが自殺を防ぐことにつながると思います。そして皆、語りたいんだな〜と実感しました。また開催して欲しいです。そして岡さん、死なないて欲しいです。
みんな生きて、とりあえず。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?