計画性がないのに無計画だと不安になるアラフィフ夫婦が伊勢神宮に行った話。

9月ごろからいろいろあって元気がない夫が気になり、どうしたものかと思案した結果、ふと思いついたのが、伊勢神宮へのお詣り。

なぜ伊勢神宮なのかというと、わたしは仕事で行ったことがあるのだけれど夫はまだ一度も伊勢神宮には行けていない。一度は行ってみたいと事あるごとに呟いていたのだ。

「そうだ!伊勢神宮にお詣りに行かん?」と提案したら、いつもは素っ気ない返事ばかりするのに「行きたい!」と言った夫。

(あら、珍しい…、やっぱしんどいんかな)と思いつつも久しぶりに見た夫の笑顔に、計画しなきゃ!と思ったのだけれど、夫婦揃って計画を立てるのが得意ではない。

スマホに苦手意識があったのだけれど地図・経路検索ですっかり操作に慣れた夫は、手慣れた手つきで伊勢神宮への経路を検索している。

最近のわたしは動画サイトで車中泊のチャンネルばかり見ているせいか、朝5時に開くのに間に合うように夜中に出発するより、ご飯を食べてお風呂に入って出発、できるだけ伊勢神宮に近い道の駅で仮眠すればいいんじゃないかと考えた。

そんなこと言ったら夫は拒絶すると思ったら「それ、いいかも。週末暑いて言うてるし、風邪ひかんやろ」とあっさり承諾。

辛い時期が続いたから現実逃避じゃないけれど、いつもとは違うことがしたいのかもしれない。

「そやな、体力あるうちにやってみるのもいいかもしれん。冒険やな」

土曜、お互い仕事が終わり、簡単に夕食と入浴を済ませ、20時頃に出発。

見慣れた町を抜け、車を走らせる。仕事終わりにこんな無謀な…と何度も思ったし、嫌になったら引き返そうくらいは思ってたのだけれど、夫は「暗いな~、この道、夜走ったことないから緊張するわ」と言いつつ、なんだか少し嬉しそうに見えた。

本当は伊勢神宮近くに宿をとり、ゆっくりしたいと思っていたけれど、計画性がない上に、計画するだけで疲れてしまい、当日行きたくなくなるという非常に迷惑な性格のわたしにはこういうほうがいいのかもしれない。

途中、道の駅を見つけ、寄ってみたのだが、そんなに狭くない道の駅の駐車場が車でいっぱいだった。

道の駅はとうに閉まっている。休憩の人もいたかもしれないけれど、窓に目隠ししている車も多くいた。「車中泊の人かもしれんね」と言いつつ、車を降りてトイレだけ済ませる。

ここで仮眠するつもりだったが、車が多過ぎて落ち着かない。そりゃそうだ、車で仮眠した経験はほぼ皆無、ビビりました(笑)

どこか適当な道の駅をググってみたが見つからず。こうなったら伊勢自動車道のパーキングエリアに向かおうと近くのインターチェンジから伊勢自動車道を進む。

伊勢神宮近くのインターチェンジまでの道中、パーキングエリアは2つ、サービスエリアはない。

車は少なく走りやすい、と夫が言った。ひとつめのパーキングエリアに入ってみる。ここも仮眠をとっている人たちが予想していたより多かった。

どうせなら降りるインターチェンジに近いパーキングエリアまで進もう。と、これがまずかった。一番近いパーキングエリアは大変混んでいてトラックも多かった。

(しまった…)と内心思ったが、夫は朝出発すること考えたらここがいい、ここで仮眠しようと。わたしは寝付けなかったが夫はすぐに寝息を立てていた。仕事終わりの移動にくわえ、慣れない道を運転してたんだから…寝息を聞きながら少しホッとしている自分がいた。

まさかのアラームよりも早く目覚めた夫は「さあ、行くぞ」と昨夜よりもノリノリ(古い?)だ。一度は行ってみたかった伊勢神宮はもうすぐ近くにある。

夫もわたしも人混みが苦手で有名な場所や観光地など行けたことがない。さすがに子どもたちが小さい頃は頑張って行ったけれど、夫婦二人の生活になってからは行ったことがない。

朝5時には外宮の駐車場に着きたい!と言うので身支度を済ませ車を走らせる。いつもは口数が少なく、何を考えているか分かりづらいところのある人なんだけれど、めちゃ喋る、喋る(笑)

4時58分に外宮の駐車場に到着。駐車場には10数台の車。こんな早くに…と感心していると「おれらもやん」と…。確かに(笑)

いくら夏日予想だとはいえ、11月の朝5時はめちゃくちゃ暗い。

懐中電灯持ってくればよかったなと笑いながらスマホの明かりで正宮へと歩く。暗くてよく分からないけれど、鳥居をくぐった途端、空気が変わったと夫が言った。

お詣りさせていただいて駐車場に引き返し、内宮へ向かう。

内宮に向けて進んでいる道中、「渋滞」という文字が目に入る。「駅伝あるみたいやで」というので調べてみると大学対抗の駅伝があると分かった。

なんて日にここに来たんだと偶然を喜び、内宮前の駐車場へ。駐車場の方から出庫規制がかかるという旨の案内をもらう。これも記念だ。

正宮に向かう道中、テレビで見たことのある景色を見て(まだ暗いけどだいぶ見えるようになっていた)、「ここ見たことある!」と大はしゃぎする夫。普段の夫を知っている人から見れば(え?どうしたん?)と言われそうなくらいのはしゃぎっぷり。

こういう夫を見るのも久しぶりだ。お酒を飲んでいるときのはしゃぎっぷりよりも上だ。来てよかった、と何度も思う。

正宮に着いた頃には空が明るくなってきていて、周りがよく見えるようになっていた。きっと夫に見せてあげようと思ってくれたんだろうと思いながらお詣りさせていただいた。

「いろいろあって心配やら迷惑やら…、ごめんな…。でもおってくれて見放さんといてくれてありがとうな!」と笑顔で言われたときは正直泣きそうになった。

ほんと、辛かったよね。見てて腹立たしいこともあったし、悔しい思いもしたし、正直、なんでやねん!!と思ったことが何度もあった。

人がいいにも程がある!と思ったこともあった。もっと自分を大切にしてよ!と何度も…。けれど、これが夫なのだ。30年以上前から見てきた夫なのだ。

もっと支えてあげられたらいいのにそれができないもどかしさ。自分の力の無さだったりいろんなものが足りない自分を責めたときもあった。

けれど、こうして横で大はしゃぎする夫を見られている今がとても尊い時間に思えた。もう少し優しくしてあげなきゃな…なんて思ったりもした。

帰り道、「楽しかったなぁ、無茶したけど楽しかった」と何度も言う夫。こういうことを口にする夫ではないので、貴重過ぎて動画撮っとこうかと思うくらいだった。

計画性がないのに計画していないと不安になるアラフィフ夫婦の珍道中。お互いが知らない、知識もない、何があるか分からない時間を共有できたことで、なんだかちょっと距離が変わったような気がする。

アラフィフ世代としては無計画過ぎて、子どもたちには叱られそうだけれど、こういう時間を持つことができて良かったと思う。

まだまだ夫は全開まではいかないけれど、「お礼が言えてよかった」とすっきりした顔をしているのを見て少しホッとしている。

「春になったら奈良に行きたい!」と言い出した夫。また計画性がない夫婦の珍道中が繰り広げられる…かもしれない。


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