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孤独感という肥沃な大地

「寂しい」という感情に抗うのは難しい。それは特別弱いからではなく、多くの人にとっても同じであってほしいと願ってしまう、弱い私。

悲しいことがあった時、疲れて帰る夜道、何もない1日の終わりに見る華やかなSNS。見ない振りをしていた孤独感がふと目の前に広がる瞬間。

最初は小さなプランターサイズだったのがどんどん大きくなっていって、その上に、焦りとか、嫉妬とか、自己嫌悪とかいろんな感情が次々に咲いていく感じ。

そんな花畑も楽しめたらいいのだけど、そういうのって、ナガミヒナゲシみたいに他の花が咲かないように邪魔しちゃって、気分もすっかり沈んでしまう。

だから図書館で『孤独をたのしむ本』というかわいらしい本を見かけたとき、思わず手に取ってしまった。

失礼ながら私は存じ上げなかったのだけど、たくさんの少女の心を鷲掴みにした著名なイラストレーターさんの本らしい。

今は高齢となった彼女の、無理はしない丁寧な一人暮らしがお茶目に綴られた1冊だった。

けど、内容のほとんどは「一人時間の楽しみ方」のようなもので、私が困っている「孤独感」については"人間とはそういうものよ"という達観した態度に終始しているようだった。

彼女は、若い時の孤独と老いてからの孤独は違う、若い時は仲間に入れない時の疎外感が多いけど、老いてからは大好きな家族や友人、恩人が先立って本当の一人になっていく、というようなことも書いていて、(この本は私には早かったのかも)と思った。

それでも「自分の中にアドバイザーを作りなさい」という項目は役に立つかも、と思った。物語の人物でも、自分が作り出した人物でもいい、落ち込んだ時や悩んでる時に、励ましてくれる人を作るのだそうだ。

それでも私は自分に優しい言葉をかけるのが苦手で、ましてや誰かの皮を被せた自己都合で生み出した人物にそれを言わせるなんてきっと難しいから、大好きなドラマや映画のセリフをいつでも思い出せるようにしておきたい。

やはり「一人でいる」と「孤独」は違うと思う。

「孤独感」は感じるものだから、どれだけ人に囲まれていようと、大好きな人が目の前にいようと、不意に足を踏み入れてしまう呪いの森。

足元には不気味な花がたくさん咲いていて、どこかに毒虫が潜んでいるかもしれない恐ろしい場所。それを楽しめるようになるには、やはりまだまだ人生経験が足りないのだろう。

心細くて動けなくなった時、出口まで手を引いてくれる人がいなくても、せめて道標になる灯りは持っておこう。

世の中にはすごくて素敵な人がたくさんいるから。その人たちの魔法を借りて、なんとか今日も生きていこう。その中で私も、誰かの足元を照らせたら、こっちだよって声をかけることができたら、いいな。

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