見出し画像

「販社様」(その2)- 印紙を貼らない

販売契約書には4,000円の印紙が必要です。
双方が各自負担するのが通常でしょう。

ところが、業界のことを良く分かっていない投信委託会社の新人さんが契約事務を担当していて、悲劇(喜劇?)が起こりました。

契約書を2部作成し、1部にだけ印紙を貼って販売会社に送付すると、販売会社の担当者から電話がかかってきたのです。

やや低めの声で、
「1部にしか印紙が貼られていないが、これはどういうことか?」
と仰られる。

察知した上司が新人さんから電話をとりあげ、
「申し訳ございませんっ。貼り忘れました。」
「すぐに貼付したものをお送りします!」
と平謝りしたというお話です。


このような印紙負担の強制は問題ではないか、気になります。

まず、印紙税法では、印紙税は課税文書の共同作成者(契約当事者)が連帯して納税する義務を負うとされており(同法3条2項)、内部負担割合について法は関知していません。

よって、契約当事者の一方が全額負担しても、印紙税法上は問題になりません。

次に、下請法の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」についてですが(同法4条2項3号)、このケースでは、投信委託会社が委託者、販売会社が受託者であり、下請法が想定している親事業者(委託者)の下請事業者(受託者)に対する優越的地位の濫用とは、立場が逆です。

よって、下請法の問題にもなりません。

民法上の「強迫」にも該当しないでしょう(民法96条)。

このように、何か問題になるかと言われると、特にこれと言って思い当たりませんが、「販社様」がどのようなお方であるかが良く表れたエピソードだと思います。


最近はこの話もあまり聞かなくなりましたが、今でも行われているのでしょうか?


<参考記事>

契約書に貼る収入印紙代は誰が負担すべきか—印紙税の連帯納税義務と負担割合

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?