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投資一任契約と金販法の重要事項説明(その1)

投資一任契約締結の際には、契約締結前交付書面に加えて、重要事項説明書も顧客に交付されます。

契約締結前交付書面は金商法に基づく書面、重要事項説明書は金販法に基づく書面です。

どちらもリスクについて記載されます。だぶっているように感じます。

実際、金商法施行の際には、金販法上の説明義務を金商法に移行して金販法を廃止することも検討されたようです。しかし、結果として存置されました。

金販法は民法上の不法行為責任の特則を定めたものであり、業法規制としての金商法とは性質が異なるなどの理由によるようです。

しかし、結局のところ、だぶった内容の書面が顧客に交付されるという実務だけが残ってしまったように感じます。


このような金販法の重要事項説明ですが、投資一任契約との関係では、もう一つ厄介な問題があります。

金販法の重要事項説明は金融商品の販売について行われるものですが、投資一任契約それ自体は「金融商品」ではありません。

そのため、投資一任契約の締結について、同契約の締結までに1回説明すればよいということにはなりません(※)。

投資一任契約に基づいて投資運用業者が行う個々の金融商品の取引について、取引を行う前に、取引ごとの重要事項の説明が必要ということになりそうです。


しかし、投資一任契約を締結したということは、まさに投資判断を一任されたわけです。

それなのに、投資一任契約締結後の個々の取引ごとに、
「こういうリスクがありますのでご承知おきください」
と説明するというのは、現実的ではありません。

そこで、この実務的な課題をどのように克服すべきかが問題となるわけです。


(※)「運用方法が特定されていない信託財産」は「金融商品」の一つとされているため、信託商品や保険商品は契約の締結までに1回説明すれば足ります。そのため、この問題は投資一任契約特有の論点となっています。

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