運用会社とマネロン(その2)
運用会社が顧客の取引時確認を行わなくても良い理由は、犯収法の中にあります。
取引時確認の対象となる取引(特定取引)は犯収法施行令7条1項1号に列挙されていますが、その一つである「投資運用業に係る契約の締結」から「当該契約により金銭の預託を受けない場合」が除かれています(同号ヌ)。
運用会社は、原則として顧客から金銭の預託を受けることが禁止されています(金商法42条の5)。投資運用業のうち自己運用業は除外されていますが、これは自己運用業の業務の性質上当然のことです。
そのため、自己運用業以外の投資運用業を営む運用会社においては、原則として顧客から金銭の預託を受けることがありません(禁止されているので)。金銭の預託を受けないため、特定取引から除外され、取引時確認義務を負いません。
自己設定投資信託の直販を行う場合は二種業として取引時確認が必要となりますが、日本では直販を行っている運用会社は多くありません。
まとめると、
「自己運用業以外の投資運用業を営む運用会社は、直販を行っていない限り、原則として取引時確認義務を負わない」
となります。
従来の運用会社は、このロジックを金科玉条として、顧客の取引時確認を行ってきませんでした。