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金をくれないか?

いいよ

ありがとう

もし世界中全ての人類がこのようになったら一体どうなってしまうのか考えてみましょう。

ルールは以下の通りです。

・お金をくれと頼まれたらいかなる状況であろうと
渡さなければならない。
・貰う側が金額を指定した場合はその金額を渡さないといけないが、指定しなかった場合は渡す側が金額を自由に決められる。
・請求する際、渡す側が請求された額を持っていなかった場合は貰う側が自分の財産を全て渡す側に支払わなくてはならない。
・自分の手持ちの金が一円もなくなった場合、死ぬ。
・上記のルールが適用されるのは、自分が自由に使える金を始めて手にしたときからである。


・お金をくれと頼まれたらいかなる状況であろうと
渡さなければならない。

この世界は言ったもんがちです。
金をくれといえば金が手に入ります。
そのため、早口で金を請求できる人間が最も金持ちになれるというわけです。
真っ当に働くなんて馬鹿らしくなるかもしれません。
しかし、隙をつかれて大金を請求されれば、一気に金が減ってしまうのです。
常にリスクと隣り合わせですね。


・貰う側が金額を指定した場合はその金額を渡さないといけないが、指定しなかった場合は渡す側が金額を自由に決められる。

「お金をくれ」

「はい一円」

「お金をくれ」

「はい一円」

「お金を…」

リスクを負いたくない人は、「お金をくれ」と言います。
この世界では一円も持ってない人はいません。
なぜなら一円も持ってない人は死ぬからです。
とはいえ、ノーリスクでお金を得ようとしても基本的に一円しかもらえません。相手がお人好しであれば話は変わってきますが。


・請求する際、渡す側が請求された額を持っていなかった場合は貰う側が自分の財産を全て渡す側に支払わなくてはならない。

「七億円くれ」

「持ってません」

「全財産渡します(絶命)」

「ありがとう」

欲をかくと、死ぬということですね。


・自分の手持ちの金が一円もなくなった場合、死ぬ。

「お金をくれ」

「はい一円」

「お金をくれ」

「はい一円(絶命)」

一円戦法を使えば貧乏人をノーリスクで殺すことが出来ます。わかりやすく説明しましょう。

Aさんは手持ちが20円しかありません。
昨日までは八億持っていたのですが、酔った勢いでBさんに八億持っていると話してしまい、七億九千九百九十九万九千九百八十円取られてしまったのです。

そこにBさんからその話を聞いたCさんがやってきました。
Cさんの妻はこの前Aさんに二億円取られて死んでしまっていました。
CさんはAさんに20回金をくれといいました。
Aさんは必死で抵抗し、逆にCさんから金を取ろうとしましたが、この日のために早口を鍛えてきたCさんには叶いませんでした。
こうしてAさんは死に、Cさんは20円手にいれました。


・上記のルールが適用されるのは、自分が自由に使える金を始めて手にしたときからである。

生まれたての子どもは当然一円も持っていません。
それで死んでしまっては不憫なので、全てのルールが適用されるのは自分が自由に使える金を始めて手にしたときです。

なので、普通の親は子どもがしっかり成熟するまでお小遣いを渡しません。悪い大人にふんだくられて死んだり、よくわからないまま人に一兆円請求して死んだりする可能性が高いからです。
当然学校でも金銭教育は非常に詳しく教えられます。


では、この世界で一番の金持ちの人生を見てみましょう。

その男が小学校を卒業した時、彼は父親から1円貰いました。
彼の父親は狡猾な人間で、様々な人間から大量にお金を奪っていました。
彼の親は言いました。

「今この瞬間、お前は始めて自由に使える金を手に入れた。
 私がお前にお金をくれと言った瞬間、お前は死ぬのだ。」

「はい、父さん。」

「だからお前は、今から私のお金をとれ。
 金額設定は自由だ。一円でもいいし数億でもいい。
 ただ気をつけろ、お前も知っている通りミスは死だ。」

「2兆285億9982万3451円ください。」

「…!わかりました。」
彼の父親の全財産は2兆285億9982万3452円でした。
彼は父親の財産の合計金額を知っていたのです。
当然狡猾な父親は口座をいくつも分け、隠し金庫に現金でもしまっていました。
しかし彼はそれらを全て調べ上げ、確信を持ってこう言ったのです。

「ふ、ははははは。
 さすがは我が息子だ。その度胸、その頭脳。
 死んだ母さんにも見せてやりたかっ…」

「お金をください。」

「!?な、何を……わかりました、やはり私の子か………(絶命)」

「母さんの仇だ。」

彼の母は彼が八歳のときに死んでしまいました。
父親は心不全だと言ったが、彼は見ていた。
母の一族は財閥。その金を全て母に奪わせ、更に母の持ち金を全てとったときのことを。

「1兆3987万2564円くれ。」

「わ、わかりました。
 でも、一円しか持ってないと死んでしまうわ。
 少しでいいから返してもらえないかしら…?」

「だめだ。お前を私に逆らえなくする。
 お前の生殺与奪は常に私が握るのだ。」

「そ、そんな…」

「いや待てよ、よく考えたらもうお前に利用価値はない。
 よし、私に金をくれ。」

「わかりました、あの子を…頼みます。(絶命)」

母は裏切られたと知ってなお、父を愛していたようだった。
しかし彼には父を許すことは出来なかった。
だから彼は父を殺したのです。

そして中学生になった彼は自分がすでに金を扱っていることを隠して生活しました。
そうすることで、人から金を取られる可能性が低く、何より大人から巻き上げやすかったのです。

「先生、今日の金融授業についてなんですけど…」

「おお、どうした?」

「先生はいくらぐらい持ってるんですか?」

「はは、いくら君でもそれは教えられないよ。
 もし君が誰かに喋ったら私が殺されてしまう。」

「これ見てください。」

「き、君!この写真をどこで撮った!?」

「先生って妻子持ちでしたよね。
 この写真バラされたくなかったら…」

「わ、わかった!教えるよ。
 私の総資産は2198万円だ!」

「証拠。」

「なに?」

「証拠を見せてくださいよ。
 預金通帳とかあるでしょ?」

「そ、それは…」

「できないんですか?
 嘘だったんですね、さっきのは。」

「…わかったよ、ほら。」

「なんだ、4億9723万円も持ってるじゃないですか。
 随分自分を小さく見せようとしたんですね、先生。
 では、4億9000万円ください。」

「まっ…わかりました。」

「どうも、
 もし僕から金を取ろうとしたらこの写真撒きますからね。」

「鬼め…」

彼はこのようにして他人の弱みを握り、それを利用して金を巻き上げていました。お抱えの探偵を数十人雇い、ありとあらゆる人間から金を搾り取っていたある日、彼はN国の研究所に向かいました。

「出来ているか?」

「はい、動作確認も済ませてあります。」

「資金は足りたか?」

「さすがに足りましたとも。
 A国の国家予算すら凌駕していますからね。」

「そうか、では始めてくれ。」

「わ、わかりました。
 WKN書き換えプログラム、開始。」

「これで世界は変わる…」

彼は恍惚の表情を浮かべていた。

彼の名はベルナール・アルノー。

世界一の金持ち。フランス人だ。

彼は自分の母親のような世界の被害者をなくすため、
「WKN書き換えプログラム」を行いました。
WKNとはWorld・Ka・ne。
これにより、世界の金融観念は現在のような形になったのです。WKNプログラムに資産の八割程度を費やした彼ですが、今でも世界一の金持ちとして名を馳せています。

過去の世界の記憶が残っているのは彼と、
N国研究所の所長のみ。
つまり、私です。

自分の功績がなくなったことは悲しいが、それ以上に世界に平穏がもたらせたことが何より嬉しいのです。

ここに書いたことは老人の戯言として葬ってください。

世界は本当に_____美しくなった。


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