音楽の処方箋

このnoteは、私達二人の音楽に対する思いや考えをお伝えしたい、というシンプルな気持ちで始めました。

そのコンセプトにそって、色々語ることも出来ますが、今は世界中がストレスフルな状況です。

私達は音楽を心の処方箋、薬と捉えています。

そこで私達が皆さまのストレスを解毒する、とっておきの音楽を処方いたします。

まずは内山からこの一曲を。爽やかさと清涼感を求める方、甘いノスタルジーに浸りたい方へ。

ドビュッシー作曲:ピアノ三重奏曲ト長調


新緑が目に眩しい、これからの季節。
たとえ外に出られずとも、この曲は全身を心地良い風が吹き抜けていくような清涼感をもたらしてくれるでしょう。

どこを切り取っても甘く瑞々しい。薬というより、まるで果物のようです。

音楽好きな方で、この曲を初めてお聴きになった方は、こんな感想を抱くかもしれません。

「これって本当にあのドビュッシーが作った曲なの?」と。

この作品はドビュッシーの代表作と称される作品の数々が生み出される前、18歳の時に作曲されました。

印象派の絵画を連想させるような、輪郭のはっきりしない音の移ろい。そして東洋的な音列が生み出すエスニックな雰囲気。前例のない彼の作品は、音楽史に革新をもたらしました。

この作品はそんな彼の個性が確立される前、青春時代に生まれました。聴きながら青春時代を追憶し、現実を忘れてみるのも一興。

つづいては山下から。

波立った心を静めたい時、束の間の現実逃避によく効く曲です。

頑張る、前を向く、希望をもつ。

何かに挑む時には、ポジティブな思考や姿勢、周囲との連帯感を求められることがありますよね。それ故に、周囲の人間の精神的な上昇気流に乗ること、その波長に合わせることに疲れを感じてしまうことも。

そんな時は、周りのことも自分のことも一旦置いておいて、
何を見るでもなくぼーっと、美しいものを聴いて心を落ち着けたくなります。

フランスの作曲家、G.フォーレの歌曲『月の光』。
是非とも夜、その日の活動を終えて眠る前の一時に聴いていただきたい一曲です。
詩はポール・ヴェルレーヌ。詩の和訳を知りたくなりますが、まずは仏語の響き、伴奏と歌の絡み方や声色を頼りに空想してみてはいかがでしょうか?

ひとつ目の演奏は、歌とピアノの組み合わせ。調性はb-moll(変ロ短調)。♭が多い調に何となく湿度というか、しっとり感を感じる私は好きな曲にb-mollが多い。目を閉じて聴くと、魅惑的な月の光に誘われながら眠りの世界へ旅立てそう。

二つ目の演奏は、歌とハープの組み合わせ。
ハープというと天使や女神など、天界をイメージする楽器だけれど、このハープとの組み合わせで聴くとまた別の味があってとても良い。調性はc-moll(ハ短調)。先ほどのb-mollよりはキーが上がり、これによって曲の持つ湿度や重量感がだいぶ変わって聴こえるのがまた面白いところ。
聴き終えると心が浄化された気分になります。

いかがでしたか?今回は優美な二曲を処方いたしましたが、クラシック音楽には「毒をもって毒を制す」という言葉を体現したかのような、一歩扱い方を間違えれば劇薬となってしまう作品も存在します。
そんな音楽を今後も皆さまに処方するかどうか…は、私達の気分次第。。

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