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音楽の処方箋 その2「心躍るクラシック音楽」

家で過ごす時間が長くなり、運動不足になりがちな今日この頃。意識的にストレッチや筋トレに励んでいる方も多いかと思います。

ところで心の運動、ストレッチは足りていますか?カチカチに凝り固まっていませんか?

今回は皆さまの心がほぐれ、踊り(躍り)出したくなるようなクラシック音楽を処方いたします。

まずは山下から。

スパイシーで爽快感の味わえる1曲。
ぼんやりした日や退屈な時など、気分を変えたい時に効く曲です。


ウクライナの作曲家 カプースチンのピアノ作品。8つの演奏会用練習曲Op.40より第3曲"Toccatina"

小気味好く乾いたリズム、メロディーの展開や♭調を経由する転調の過程など、聴く度に好きな所が増えていきますが、初めて聴いた時は特に『ミ』が印象的でした。

ミミミミミミ ミミミミミミ ミ ミ
ミミミミミミ ミミミミミミ ミ
ゲシュタルト崩壊ですね。
強烈な感じ、伝わるでしょうか。

序盤に連打される低音の『ミ』とそのリズムのインパクトが強く、聴き終えて暫くしても頭の中でループしていました。
躍動感に溢れた意表を突くリズムやエキサイティングなメロディー、他にも魅力的な部分はありますが、あの単音連打はその部分だけでも弾いてみたくなる魅力があります。
自分で弾く以外にも、そろそろあのリズムが来るぞ、あのメロディーの盛り上がりが来るぞ、と、好きなところを待ちながら聴くのも面白いですね。

続いて内山からはこの曲を。


ブラームス作曲:ピアノソナタ第1番ハ長調 作品1

若きブラームスの活力がほとばしるこの作品。是非とも全体を通してお聴き頂きたいのですが、特に踊り出したくなるのは最後の第4楽章。

楽譜には第3楽章と同様、con fuoco(コン フォーコ=火のように)と指示されています。「血湧き肉躍る」とはまさにこの音楽のこと!身体を動かすことが好きな方は勿論、「私、運動は苦手なんだけどな…」という方も、この音楽を聴けば全身に活力がみなぎり、曲が終わる頃には心身ともホットになるはずです。

ちなみにこの作品、他の作品と並行して作曲が進められたため、ピアノソナタ第2番よりも後に曲が完成しました。自身の作品を世に送り出すことに慎重だったブラームスが「作品番号1」を与えたこのソナタ。それだけ彼にとっては自信作だったのでしょう。シューマン夫妻とベルリオーズはこの作品を高く評価し、その自信が裏付けられることとなりました。

先輩ベートーヴェンのピアノソナタ第21番『ハンマークラヴィーア』や第29番『ワルトシュタイン』の影響が強く表れており、第3楽章には約20年後に完成することとなる交響曲第1番を思わせるフレーズも登場します。

「心躍るクラシック音楽」いかがでしたか?メヌエットやガボット、ワルツなど、昔から音楽と踊りは密接な関係にありますが、あえて今回はそういったタイトルがついていない曲を処方いたしました。

私達が処方する音楽が、皆さまにとって心が跳ねる素敵な出会いでありますように。

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