ブレイクスルー感染・あえてマイルドコロナを記録する 02 日々どうだったっけ
今日は、じんわり、嗅覚がもどってきた。どのくらいじんわりかというと、ロクシタンの大好きなコンディショナーのフタを開けて鼻を近づけて思いっきり吸うと、「……ちょっとにおったかも?」というくらい。
でも、ほかの症状は、ほんとうにたいしたことがない、この私のマイルドコロナ。たいしたことがなさすぎて、おもしろくないから、マイルドコロナの体験記を書くひとは少ないかもしれない。だからここに簡単に、日々の症状を書き留めておこうと思う。ちなみに滞ニューヨーク中でもあるので、それも記録しておけばだれかが読んで楽しんでくれるかもという気も、すこしする。わからんけども。
DAY 01 水曜日: 風邪症状を感じ始める
朝から頭が重くて、風邪をひいたかなと思った。ここ2週間ほど、私にしてはめずらしく外出する用事が多かったし、夏から秋への変わり目で、急に涼しくなっていたから。弱い頭痛もあって、風邪、きたな、と思った。外出する気にならなくて、夕方のいつもの散歩を取りやめた。でもそのぶん、いつもより手の込んだ料理を作った。つまり、風邪気味だと感じてはいたものの、料理をする気になるくらい元気ではあったのだ。
でも寝る前に、お気に入りのかぜぐすり・パブロンSαを3錠飲んだ。3錠というのは、大人のフル容量だから、私にとっては「はっきり風邪をひいたと感じる。もしかして明日は、薬の催眠作用で寝坊したりするかもしれないけど、それでも目が覚めた時点で元気になっていたい」という、高めの警戒態勢の量。いつもの軽い風邪症状なら、働きながら1錠や2錠を飲むくらいでも、わりときくのだから。ところが……
DAY 02 木曜日: 陽性発覚
次の日、起きてみて、あれ、と思った。寝る前に愛用のパブロンSαをフルに飲んだのに、まだ風邪っぽい。改善が感じられない。いや、むしろ、悪化している。ふつうの風邪じゃないかもしれない、と、初めて本気で思った。その一方で、感じる症状は頭痛と関節痛と、疲労感と、軽いくしゃみ鼻水。なんとも、ふつうに「悪い風邪」っぽい。咳が出ないからコロナじゃないよね? とも思う。
2時間くらい様子をみてから、夕方の、室内で人と会う用事をキャンセルした。けっこう楽しみにしていた用事だったので、残念だったけど、「この新型コロナ流行のご時世、ただの風邪であっても、調子が悪ければできるだけ用事をキャンセルしろって言うでしょ」と、自分に言い聞かせた。そしてまた、パブロンをフル容量、のむ。おとなしく、PCで仕事をする。ぐったりはしているけれど、軽い頭脳労働なら、問題なくできるかんじ。
昼を過ぎても良くならない。いやむしろまたちょっと悪いかも。なぜだ? 私、インフルだってほぼパブロンで乗り切ったことがある。それなりにつらかったけど、パブロンを飲むと数十分後には必ず、ひどい頭痛が楽になって少し眠れた。だけど今回は、その感覚が起こらない……この「パブロンが私に効かないのは異常事態だ」という認識が、新型コロナのテストを受けようと腰を上げた最大のきっかけだったと思う。
徒歩圏内の検査会場に行く。ありがたいことに、ニューヨークの新型コロナ検出テストは基本的にタダ。ふつうの健康保険を持っていない、しがない留学生の私でもタダのはず。だけど心配だから、知人がテストを受けたと聞いていた会場にして、さらに「タダですよね」と確認しまくった。だって日本ではふつうに検査と証明書に約2万円払って*、そのおかげで飛行機に乗れて、ここにいるわけだからさ……。やっぱりタダって言われても、にわかには信じられない。でもタダだった。
タダだけに(?)、人のあつかいはぞんざいだ。Rapid Testという、すぐに結果に出るテストなので、その場ですわって待てるのかと思ったら、建物の外に追い出された。椅子もない街角で10分、ただ、スマホでもいじって待つしかない。真冬だったらどうすんだ。てかほんとにコロナで立ってられないくらい辛かったらどうすんだ。てかコロナ罹患の可能性を感じている人が戸口で複数ぼやぼやしている、という状況に、近所の物件の人は苦情を言わないのか……といろいろ思ったけど、言わない。タダだからさ。結果の紙、検査をしてくれたお姉さんが自分で持って出てきてくれる。そして、陽性だと告げられた。
「あなたは陽性でした。10日間、自宅で自主隔離してください」「ありゃぁ……ええと、ほかにしなくちゃいけないこととかは」「よく栄養と水分をとってね、くらいかな……」「なるほど、療養だもんね。ふ、ふつうにね」「そう、ふつうにね」てかんじで、あっさり、戸口で解散。保健所に連絡しろとか、この紙のとおりにしてね、とか、そういうのはまったくないのか。
建物にもどる。あたりまえながら、日常どおりの様子。エレベーターに乗ると、あとから来た人が「……いいですか?」てかんじで近づいてきた。この建物では、新型コロナ流行に対応して、1つのエレベーターには1人、もしくは1家族のみしか乗れない、という規則ができた。だけど最近はそれがゆるめられて、おたがいの合意があれば、他人といっしょに乗ってもよくなったのだ。だからいつもなら「いいですよ!」と、ほかの人を乗せてあげてた。そうすると「ワクチン打ってますから」「私も」「ですよね~」という、にこやかな会話になることも、しばしばだった。でも今日は「あ。ちょっとすみません……」という、(私、事情があって、コロナを人一倍、とても警戒してる人なので)的なしぐさで、同乗者をことわり、1人、自宅の階まで上がるのだ。もうそこは新しい日常だった。
つづく
* 日本でも、症状があり医者が必要だと判断したとき、または濃厚接触者である可能性があるときなどには保険適用・自己負担額免除になる(2021年10月現在)。だから私がいま日本にいて同じ状態だったとしたら、まずは検査場ではなく、お医者さんに電話相談し、無料PCRテストを受けることになったのか(検査の自己負担額が免除なだけで、初診料・再診料などは必要)。
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