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新しい冒険の船出に立ち会うということ

井上先生へ

色鮮やかな紫陽花が咲く季節となりましたが先生はお元気でお過ごしでしょうか

6月1日よりデイリースポーツ紙で井上先生と船江先生の詰将棋コーナーが連載開始となりました
48年間もの長きにわたった、言わば内藤先生のライフワークでもあった歴史ある紙面を井上一門で引き継ぐ形となり、この度は本当におめでとうございます

先日5月21日の丸善ジュンク堂書店梅田店での谷川先生とのトークイベントで井上先生が「6月1日からデイリースポーツ紙で詰将棋の連載が始まる」とおっしゃっていたので、連載開始をとても心待ちにしていました

もちろん記念すべき第一回の掲載紙は出勤前の朝一番に買い求めました
その日は家でゆっくり先生の詰将棋を解こうと、名人戦第5局2日目を終局まで見届けた夕食後にリビングで新聞を広げました
すると息子が興味を示し「慶太先生の写真載ってる!何かあったの?」と聞くので
「井上先生と船江先生がこれから毎日この新聞に詰将棋を出題するんだよ、だからお母さん頑張って毎日解こうと思ってるんだ」と言うと
息子が面白そうだから自分も一緒に毎日やりたい!と言ってくれました
第一回の問題を見て「この問題、3分で初段だって!オレ時間測りながらやる!」と台所からタイマーを持ってきて眉間にシワを作りつつも楽しそうに解いていました

息子は今年4月に中学生となり思春期に差し掛かかりつつあります
いつまでこうして母親と一緒に並んで詰将棋を解いてくれるか分かりませんが、親子で共通の時間を過ごすきっかけを井上先生に与えていただけたことが何よりも嬉しいです
本当にありがとうございます
今後、デイリースポーツの詰将棋を息子と解くのが我が家の夕食後のルーティンになるといいなと思います

詰将棋連載のことを知った時は本当に驚きました
船江先生と半月交代とはいえ2日に一作品のペースで創作しなければいけないので、内藤先生の後任を引き受けることは名誉なこととは言え本当に大変なお仕事だと存じます
今回は相当の覚悟を持って引き受けられたのではないかと拝察いたします
競技者としてだけでなく、公務に普及に育成にと時間の制約がある中で、新たに【詰将棋創作】という形で活動の場を広げられる決意をなさった先生の勇気とバイタリティに心からの敬意を捧げます

先生の作品に毎日触れることができるのが嬉しいのはもちろんですが、私にとってこの連載はもう一つ大きな意味を持っています
それは【井上先生が新たな冒険に船出する瞬間に立ち会うことができた】という喜びです

ここで少し自分語りをすることをお許しいただけますでしょうか
私は人前で「井上ファン」だと言う時にいつもほんの少しのためらいを感じています
今年の2月にプロ入り40周年を迎えた先生の長いキャリアを鑑みると、私はそのうちわずか10分の1に過ぎない4年ほどしか先生を応援しておりません
そんなニワカで薄いファンなのに井上ファンです!と名乗るだなんてちょっと図々しくないか?と常々思っているからです

井上先生ほどの棋士であれば「将来きっと彼はプロ棋士になるだろう」と先生を奨励会時代から熱心に応援してきた将棋ファンがいたでしょうし、
何なら先生が小学生時代に若松師匠の道場に通っていた頃から「うちの道場に井上君っていうすごく強い子がいてねぇ」と目をかけてきた地元のおっちゃん達もいらっしゃることでしょう
そんな応援も含めれば「井上慶太がプロになるずっと前からファンで、なおかつ応援歴は50年」なんていう強者がいてもおかしくはない

長年にわたって先生のファンでいらした方なら当然見てきたような、先生がこれまでに達成してきた棋士としての数多くの実績について、数年前に先生のファンになったばかりの私は残念ながらリアルタイムでは見ておりません

二つの棋戦優勝、順位戦で一つずつ昇級を積み重ねてA級まで辿り着かれたこと、一度はA級から陥落したものの11年後に再昇級を果たされたこと、竜王戦ランキング戦で4回優勝されたこと、600勝(将棋栄誉賞)を達成されたこと

先生が棋士として経験してきた数多くの偉業がありますが、私はどれも直接見たわけではなくて、過去の出来事としてただ知っているだけに過ぎなくて‥

ですから、先生が今回、還暦を目前とする今の年齢から新しく大きな挑戦に臨むこと、ほぼ毎日のペースとなる詰将棋の新聞連載を開始するというビッグニュースを知って私がどれほど歓喜したか言葉では表しようがありません

「私は井上先生のターニングポイントになるような出来事は全て後追いでしか知ることができなかった」
「でも今回は違う、井上先生が一からスタートさせる大きな仕事、その冒険が始まる瞬間を自分の目で見ることができるのだ」
「第一回からこの先連載が続く限り見逃さないように大切に追いかけたいし、そうすることで【私は井上先生をずっと応援しているファンです】と胸を張って言える自信も出てくるような気がする」

そんな嬉しい想いでいっぱいになりました

内藤先生から48年分の重みのあるバトンを受け取る瞬間を見ることができて、5月31日と6月1日のデイリースポーツ紙は私の宝物です
初回のインタビューで井上先生は「内藤先生は1万6000回、48年間ですか‥(自分は)どこまでできるか分かりませんが」とお話しされていました
内藤先生超えを目指していただきたい気持ちはありますが、正直それはややハードルが高いでしょうか?
でも先生がこの先もご健康で今と変わらない将棋へのひたむきな情熱をお持ちの限り、長く連載を続けていかれることは可能だと思っていますし、そうなるようにと願っています

これからは毎日、井上先生から我々将棋ファンあてのお手紙を受け取るような温かな気持ちでデイリースポーツ紙を手に取ろうと思います
この連載が末長く続き、多くのファンに親しまれ愛されるコーナーになりますようにと心からのエールをお送りして筆を置かせていただきます
長文かつ乱文にて失礼いたしました

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