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800勝(将棋栄誉敢闘賞)まであと20勝!

令和5年10月18日(水)、第95期ヒューリック杯棋聖戦二次予選・井上慶太九段対冨田誠也四段戦が行われました。
前期の同棋戦では12年ぶりの本戦出場を果たした井上九段。
2年連続での本戦入りを視野に入れつつも、まずは目の前の一局を全力で戦い抜こうと本局に臨まれたと思います。

一方、対戦相手の冨田四段は対局時点で8連勝中と勢いに乗る若手有望棋士の一人。
井上ファンの私は正直「予選の初戦から手強い相手に当たったな」と背筋がピンと伸びるような思いがありました。
ですが「井上先生の良いところが出せるような将棋になりますように。そうすればきっと結果も付いてくるはず」と先生を信じて観戦していました。
そして対局結果は井上九段が冨田四段を降し二次予選決勝へと駒を進めました。

アマチュアの私にとって、プロ棋士の棋譜中継で局面だけを見てもどちらの先生がリードしているのかといった盤上の優勢・劣勢は理解できないので、中継の際にAIの評価値があるのはとてもありがたく感じています。
そして、具体的に指し手の意図やこの先の展開を予想し解説してくれる棋譜コメントも本当に参考になります。

本局はAIによる勝率表示によれば、序盤から中盤にかけてはほぼ互角、終盤からは井上九段がかなり指しやすいという評価値で進んでいました。

しかしながら、興味深いことにAI評価値と棋譜コメントが乖離する局面も見られました。
本局98手目においてAI勝率では、後手(=井上九段)の勝率が「73%」と判定され、井上九段がかなり優位を築いているとされていました。
ですが、一方で同じ98手目の棋譜コメントでは棋士室で上がった声として「先手(=冨田四段)がよくなっていてもおかしくない」という趣旨の発言が紹介されており、AIとプロとの見立てが異なっていました。

つまり、プロ棋士や観戦記者という将棋の専門家から見ても「評価値ほどの有利・不利を片方の側に感じることがない、局面を判断するのが難しい」という将棋だったのだと思います。
そして、それは両対局者自身も当然感じていたと推察します。

評価値だけを見れば井上九段の貫録勝ちとも思えるような一戦でしたが、それは評価値を見ながら観戦している側にいるからそう感じるだけで、生身の人間が最後まで正しく指し切るのは非常に困難な一局だったのでしょう。
井上九段の長年の鍛えの入った勝負強さゆえに、この複雑な対局を制することができたのだろうと素人ながら感じた一戦でした。

この勝利によって、井上九段は通算成績を780勝とし、800勝(将棋栄誉敢闘賞)まで残り20勝です。
これで連盟のホームページのキリ番ランキングに井上九段の名前が載ることになりました。
800勝までの通過点とは言え、ここに名前が載ると残りの道のりがかなりクリアに見えてきて視界が開けたような気がしますので、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです!

昇段・キリ数までの勝数|成績・ランキング|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

(以下は私個人の話となってしまいますので申し訳ありません。もし、よろしければあと少々お付き合い下さい)

私は井上九段のファンになったのがここ数年前のため、先生は既に九段に昇段されており、これ以上の昇段はありません。
ですからファンになりたての頃の私は「井上先生の棋士としての慶事をお祝いすることはこの先もう無いのだな。もっと早く将棋に出会っていれば良かったのに」と寂しく感じていました。

ですが、その時に知り合った井上一門ファンの方から「いやいや、この先大きなお祝いができる機会はありますよ。井上先生は800勝を目指して頑張っていらっしゃいます」と教えていただきました。
まだその頃、駆け出しの将棋ファンだった私は「800勝」が棋士にとってどれほど大きな意味を持つのかを知りませんでした。

「800勝」「将棋栄誉敢闘賞」

調べるうちに、それはプロ棋士の誰もが目指せるような勝ち数ではなく、ごくごく限られたトップ棋士で尚且つ長く現役で指し続けた上でコンスタントに勝たなければたどり着けない途方もない遠い場所だと知りました。

井上九段がそんな大きな節目に向けて着実に進まれていると知り「私は先生の昇段といった慶事はリアルタイムでお祝いできなかったけれど、800勝はこれからのことだから一局一局を追いかけて応援できる!」と、とてもわくわくした嬉しい気持ちになったことを今でも覚えています。

そして、しばらくしてからTwitter(現:X)で井上九段が勝つごとに
#800勝までのカウントダウン
というハッシュタグを添えてお祝いのメッセージを備忘録的に投稿するようになりました。

上記が最初のカウントダウンの投稿となり、2020年1月10日に残り65勝から始まっています。
この時から約3年と9か月、本局の勝利をもって800勝まで残り20勝となりました。

飽きっぽい私なので、将棋を始めた頃は「こんなに難しいゲーム、本当に私が続けられるかな」と思っていました。
ですが、将棋を知れば知るほど、飽きるどころかその奥深さにますます興味は募る一方です。
そして、井上九段についても、そのお人柄を知るにつれ応援の気持ちはファンになりたての頃よりもずっとずっと強く、より深くなっています。

残りの20勝も一局一局を大切に見届けて、大きな花を咲かせる日まで今と変わらず応援し続けようと改めて心に誓う一日となりました。

井上先生、これからもお体には気を付けて、我々ファンに今までどおりの強くて格好いい将棋を引き続きお見せいただけますよう期待しています!

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