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31年間もの間大統領だったスハルトが言った言葉

インドネシアという国は、今年独立から79年を迎えます。この79年という時間の間に、現職のジョコウィ(ジョコ・ウィドド)大統領を含め歴代の大統領は7人。ん・・・少なく感じますよね?

インドネシアに少しでも関わる人であればおそらく名前は聞いたことがある第二代目大統領のスハルトが1967~1998年という長期間にわたり大統領の座についていたから、です。

スハルトに対する評価は様々だと思います。初代スカルノ大統領は世界に第三勢力を作るという構想があり西側諸国を敵視していましたし、国連からの脱退など、外から見ると過激に思える動きがあったにも関わらず、「建国の父」は現在までやはり根強い人気なのだなぁと、スカルノの顔写真がトラックの車体一面に描かれていたり、Tシャツになっているのを今でも見かけることからも感じます。一方のスハルトは、根強いファンは彼にもいるようで、スカルノ同様時々彼の顔写真や名前がプリントされたものを見ることもありますが、やはり数で圧倒的に少ない。インドネシア人夫に「スハルトの良いイメージ・記憶何かある?」と聞いてみたが、「ん~」と考えるも「無いかな」と。いいイメージが無いというよりも、政権の終盤のインドネシアの国内情勢など、アラフォーの夫が持つスハルトの記憶が90年代のものだから、というのも理由かもしれません。実際にはスハルトも政権中にも、スカルノ時代に最悪になっていた欧米諸国との関係回復や、外貨導入による国内経済の改善など、政権の前半(序盤?)には評価されていることもあったのでは、とは思います。

私自身、スハルトに関する情報のインプットは、日本出身の初代スカルノ大統領夫人、デヴィ夫人の著書から得た情報が最初だったので、スハルトとその一族に関してのイメージは全く良くありませんでした・・・。余談になりますが、スハルト大統領のお孫さんにあたるのかな?方をSNSでお見かけし、イケメンだなぁ、と思ったことくらい。笑

それだけスハルトとその政権下のインドネシアについての知識どころか、思い浮かぶイメージもうっすらと少ない私ですが、スハルト政権失脚につながる1998年の暴動を描いた映画を観た時、「この人の去り際はこんなだったのかぁ」とちょっとセンチメンタルな気持ちになりました。が、映画の中のスハルト大統領のセリフを聞いてちょっと腰抜けしたのです。


その映画とは、"Di Balik 98" 英題 Behind 98 と言いNetflixで視聴できます。

今から26年前の1998年5月は、文字通り「インドネシアが動いた」月でした。私は1998年にはまだインドネシアにいませんでしたが、当時暴動をリアルに体験した先輩日本人の皆さんから聞いたお話はどれも恐ろしいものばかり・・・。この映画を観て、その恐ろしい暴動のシーンがリアルに描かれていて寒気さえおぼえました。リアルに描かれていたのはそれだけでなく、学生たちのデモ隊と当時の国軍のやりとり、大統領宮殿の内部での政治家や職員たちの動き、一般市民の生活、どれも迫力あるリアルな描写で、語彙不足でうまく言えませんが、すごい映画だ!!と思いました。

そんなスハルト政権の最後、1998年5月21日にスハルトは会見を開きいよいよ国民に内閣を解体し、自分も大統領の座から下りることを宣言します。その会見の数日前、スハルトが側近に漏らした言葉が今回ご紹介する言葉です。映画のシーンでこの言葉を聞き、これはフィクションなのか、スハルトが実際に言ったことなのか、気になり調べてみたら、本当にスハルトが言った言葉のようです。その言葉とは↓

"Saya ini kapok jadi Presiden"

kapok とは、もう十分、こりごりだと、という意味がある単語です。
なので訳すと、「もう大統領なんて十分だ」

31年間いわゆる独裁政治をしてきた最後の所感が、これだったようです・・・

この記事を書くにあたり、このスハルトの言葉について現代のインドネシア人のコメントを見つけましたが、「30年以上も大統領をやって、国内情勢が悪くなり自分の政権が危なくなったら十分・懲りただなんて、もうこんなことを言う政治家が今後は出ないことを祈る」と書かれているのを見つけてしまいました。

ちなみにこのkapokという単語は、実は私も普段よく使います。子供が懲りずに何度も何かをしたときなど、"belum kapok?"と聞いたり、と使えます。最後にこのkapokという単語が入る例文をご紹介して終わりますね。

“Saya sudah kapok makan di restoran itu karena pelayanannya buruk.”
(サービスが最悪だからもうあのレストランでは食べない!)

この例文はもう嫌だ、もう十分、懲りた、なのでsudah kapokですが、
まだまだ懲りずにいる場合はbelum kapok, tidak kapokです。

今回ご紹介した映画Di Balik 98 / Behin 98, もし観られたらご感想シェアしていただけたら嬉しいです!


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