わたしの看取りプロジェクト16

医療者は家族の気持ちも診るのだなあ

9月22日に「たまたまカメラを持っているから」と言ってわが家の集合写真を撮ってくれた看護師さんが、その4日後(死の前日)、写真を額に入れて持ってきてくれました。
父の肩には、黄色い小鳥のシールが貼ってありました(ピーちゃんだ!)。

あとからわかったのですが、小鳥や花のシールで飾られた写真は、訪問看護ステーションの看護師さんたちがみんなで作ってくれたようです。

この日、母が気弱になっていることに気付いた看護師さんは、父の昔のことをあれこれ聞いてくれました。

お見合いを含めて結婚式までに3度しか会わなかったこと。
6畳一間のアパートで新婚時代を過ごしたこと。

昔の写真を見せながら父のことを話す母は、意外と饒舌でした。

そのなかで、看護師さんがポロッと自分のことを話しました。
30歳で未亡人になったこと。
病院に頼み込んで集中治療室に入り、夫の手を握って4日過ごしたこと。

「手を握っているあいだ夫の数値は安定していたけれど、トイレ行ってくるねーと言って手を離すと、とたんに数値が乱れたの」

「だからお父さんの手を握って話しかけてあげてね」

彼女がこの話をしてくれなかったら、母はもっと動揺していたと思います。

わたしよりずっと若いこの看護師さんが、先週、わたしの父の髭をていねいに剃り、口や鼻の中まできれいにしてくれたわけが、少しわかったような気がしました。
(2014.9)

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