わたしの看取りプロジェクト18

その日はすごくバタバタするんだなあ

父が息を引き取ったあと、すぐに訪問診療所に電話しました。

家で看取るとき、ここであわてて救急車を呼んではいけません。
病院へ行って死亡が確認されると、そのまま警察へ運ばれて検死を受けることになっちゃうの。これは決まりなんだって。

ドクター(ヨン様似)を待つ間、天才バカボンのTシャツを着ていたわたしは、無地の服に着替えました。

ヨン様は30分ほどで到着しました。

わたしがザ・プラターズの音楽を止めようとすると、ヨン様は「そのままでいいですよ」と言いました。

ヨン様は父の息と脈をみて、左右の瞳孔に小さなライトを当ててから、時刻を確認しました。

「18時58分、ご臨終です」

実際に息が止まったのは17時55分ですが、死亡診断書には医師が死亡を確認した時刻が記入されます。

死因は「老衰」。

30分後に看護師さんが到着するまで、ヨン様は父やわたしたちを称える言葉をかけてくれました。
患者さんの最後を看取るお医者さんは、宗教者の役割も担っているんだなと思いました。

ヨン様と入れ替えでうちに来た看護師さんの主導で、わたしたちは父の身体を清めました。
看護師さんは父の身体の穴という穴に脱脂綿を詰め、下着は紙のふんどしをつけました。
そして父の独身時代に母親が縫ってくれた和服を着せ、両手を胸の上で組みました。

「身体がまだやわらかいから着替えさせやすいです」

へえ、そんなに早く固まっちゃうの。

この看護師さんはわたしと同じくらいの歳で、彼女のお父さんも最近亡くなったそうです。
看護師さんのお父さんは入院中、うちへ帰りたいと言っていたそうですが、その地域には訪問診療所や訪問看護ステーションがないため、退院はかなわなかったそうです。

その話を聞きながら、うちで看取ることができたわたしたちは幸せだと思いました。

看護師さんの作業中、葬儀社に電話をかけ、夜9時ごろ葬祭ディレクターが打ち合わせに来ました。
(2014.9)

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