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除夜の鐘がうるさく感じる人々には、脳の病気が隠れている  ~日本人の3%未満しか、知らないことシリーズ~ No.2

こんにちは。KyoKannazuki21です。
(自己紹介はこちら)

 1つめの「日本人は愚かなのか?」のその2を書いていたのですが、シーズン的に「除夜の鐘」についてニュースがよく入ってきますので、これについて、急遽、知っていただきたいことがあるので、書いてみたいと思います。
 私は、脳科学を研究していますが、他に、メンタルヘルスの資格も持っています。
 メンタルヘルス的にいいますと、やはり脳の病気の可能性があります。

 実は、脳に病気を抱えている人は、「普通程度の音が、大きく聞こえることや、うるさく聞こえる(いわゆるキンキン聞こえるなど)こと」が多いのです。
 「除夜の鐘がうるさい」以外に、よくご老人が「公園の子供の声がうるさく聞こえるから、子供を公園で遊ばせるな」というわがままをいって社会問題になることがあります。
 これについて、脳科学とメンタルヘルスの見地から、あまり日本人が知らないことを説明したいと思います。

 実は、除夜の鐘程度でもうるさく聞こえる人は、脳に障害がある可能性があります。もし、徐々にそうなっていて、そこそこ高年齢でしたら、その可能性は高いです。では、こういう感覚の違いが生じやすい病気をあげていきます。

(A) 認知症や加齢: ご承知のように認知症は(一部若年性もありますが)高年齢になってくると、脳の一部が欠けてきて、様々な認知能力が低下する病気です。ある人は、言葉が発しにくくなったり、昔のことを思い出せなくなったり・・・。欠損がある脳の部位によって、その部位の能力が欠損しやすくなります。当然、聴覚異常も考えられます。
 老人になると、どうしても耳が遠くなって、聞こえにくくなります。しかし、異常の部位が違うと、「大きく、キンキン聞こえすぎて不快だ」ということもありえるのです。その証拠に、除夜の鐘がうるさいといわれるようになったのはわりと最近(ここ10年ほど)ですし、同じタイミングで「公園の子供の声がうるさい」という老人も増えています。つまり、これは80歳90歳と日本高齢化が増えてきたので、目立ってきた現象なのでしょう。100年前であれば、60代など(いえ、下手したら50歳以下で)、認知症が始まる前に亡くなっていた大人が多いのですから、こんな伝統的な「除夜の声がうるさい」「子供の声がうるさい」などと言いませんでした。

(B) うつ病や双極性障害: もしあまり老人でもないのに、働き盛りの人が音がうるさいと感じることがあったら、これは別の問題があります。それは、うつ病です。あと、うつ病に近い病気だと、双極性障害などもあげられます。うつ病は、たとえば人によって、さまざまな苦痛を感じます。多いのは、「背中や肩がものすごく、年中痛い」「胃が痛い、腸が弱くなってよく下痢や便秘が続く」「味覚がおかしくなる」などですが、その症状の1つに、「音がキンキン聞こえて、なんでもうるさく聞こえる」というのがあります。ストレスでうつ病になった人が、「電話に出るのがしんどい。電話の音がうるさくてたまらない。受話器で何か言われると、すごく大きく聞こえて嫌だ」とい症状を訴える人がいます。このような方は、「あれ? ストレスがないときは、そんな音がうるさいと感じることはなかったよね?」というのを一度自問自答してみてください。いつから音がうるさくなったのか? ストレスが始まったり、うつ病疑いが出てきたのがいつなのか? 一度思い返してみましょう。たぶん、高確度で符号して、同時期ではないかなと思います。

(C) 発達障害: 何年か前に、発達障害支援法ができて、子供の発達障害、大人の発達障害の啓もうが徐々に進んできました。たとえば、有名な症状でいうと「アスペルガー障害は、他人の顔色など雰囲気がわからず、空気が読めない。コミュニケーションミスを起こしやすい」や「ADHDは、遅刻が多い、忘れ物が多いなど、落ち着かない」などが有名になってきました。しかし、発達障害であまり知られていないのが、「感覚異常」です。ある発達障害の人は、「太陽がまぶしすぎる」「他の人より、室温に敏感で、すぐ暑いと思ってしまう」などです。その1種として、「音のセンスが違う」ことがあげられます。普通の小さめの音でも、「大きく聞こえてしまう」人もいるのです。
(余談ですが、子供が好き嫌いが激しいのは、味覚異常の可能性がありますので、しつこく続くようなら、子供も大人も発達障害を疑うのがいいと思います。もちろん、グレーゾーン程度で、普通の生活にはあまり支障はないことも多いです。ただ、知っておいて、いろいろケアしてあげるほうが、当人にとってもいいと思います。)

以上、代表的な病名を上げました。
 もちろん私は医者ではありませんので、「ほかにも珍しい病気で、音がうるさく聞こえる病気」というのはありえます。
 ちなみに、「他人の声が聞こえる」「幽霊、守護霊、宇宙人、天使、悪魔、神様などの声が聞こえる」という場合は、統合失調症という有名な病気です。これもすみやかに、精神科に行ってみてもらう必要があります。あと、側頭葉に脳腫瘍があった場合も、「幽霊が・・・天使が・・・」という幻聴や幻覚があるらしいです。こっちだと脳外科の先生に診てもらうのがいいかもしれません。

 ですので、知人が「除夜の鐘がうるさい」「公園の子供の声がうるさい」と言っている場合は、「いつから、そう思うか?」「同じタイミングで、物忘れ、痛み、加齢による変化、ストレスによる変化などがないか」を確認してあげるのがいいと思います。
 そして、まず、耳栓をおすすめします。他人を変えることはできません。自分が変わるのが一番問題解決が早いです。他人のせいにするような人は、永遠に問題解決するのが難しいのです。自分でなんとかするなら、簡単です。耳栓なんて、300円ほどで買えると思います。

 また、状況がひどい場合は、すみやかに精神科、心療内科に受診しましょう。無知な人は、「精神科、怖そう」と思われるかもしれませんが、内科と大して変わりません。病気の症状や前後の生活習慣や親族の傾向(遺伝などがありますから)をお医者さんが問診して、お薬を出してくれます。それで、月に何度か通うだけです。愚痴があれば、先生や心理カウンセラーの先生などが聞いてくれますので、そこで愚痴を吐き出せばいいでしょう。
普通に「胃が痛い」程度の内科に行くのと何も変わりません。
 なんか「近所の人が聞いたら、偏見がありそうでいや」という人はあるかもしれませんが、日本ではうつ病が100万人くらいいますし、発達障害は48万人くらいです。発達障害は、目立ちますので、クラスに1,2人、ふらふら教室でおとなしくできない子供がいましたが、それと大して変わりません。偏見のある人にたいしては、「自分が病気になってみろ」くらいの気持ちでいればいいのです。

 認知症については、MRI設備がある少し大きめの病院にいけば、一発でわかります。がんがんとうるさい音がするのがネックですが、他に痛みもなく、寝て少し横になったり、体の位置を変えたりするだけで、数十分で終わるし、画像で見せてくれますから、素晴らしくわかりやすいです。
 「うつ病とかっていわれて、薬を飲まされるのが嫌だ」という人は、TMS治療のある病院にいけば、30回通院で6-7割が寛解します。TMS治療は磁気治療でして、頭にコイルをあてて、15-30分ほどリラックスして座っていればいいだけです。なんだか、「かんかん」という変な音がするらしいですが、耳栓をくれるはずなので、ちょっとした我慢をしていれば終わります。最近では、保険診療もしてくれる病院があるので、相談すればいいでしょう。もし、保険対象にならなかったとしても、サラリーマンやOLの人なら、ボーナス分1,2回を払えば、寛解するのですから、安いものです。ちょっと海外旅行にいったと思えば、健康が回復するのです。
 ちなみに、病院によっては、認知症も治してくれる先生もいるようですので、探して相談すればいいだけです。
(※ 寛解というのは、精神病は完治がないのですが、普通の生活が送れるくらいに復帰はできるようになりますので、それを「寛解」といいます。病院に行く必要はなくなってきます。再発しないようにだけ、お医者さんの指導を守って、ストレスにならない生活をすればいいだけになるでしょう。)

 なお、精神科の名医は、なんでも予約が取り辛いらしいので、1か月2か月待ちかもしれないです。だからこそ、よけいに早めに踏ん切りをつけて医者にいくべきなのです。

 以上、「除夜の鐘がうるさい」「公園の子供の声がうるさい」と文句を言う人は、脳に問題のある病気を抱えているので、まずは早いうちに、心療内科に相談してみる、MRIのある脳神経科などの病院で診察してもらう・・・などの対応をしましょう。
 特に高齢者の認知症については、まだ治療薬はありません。実験段階の薬はありますが、日本で認可されて広く近くの病院で処置してくれるには、もう何年かかかりそうです。その間に、認知症が進んでしまっては、普及したときにはすでに死んでいるか、自分が誰かもわからず、家族と離れて、老人ホームの特別室で徘徊するだけの老人になっているかもしれません。認知症の進行を遅くする薬はまあありますので、一日も早く、適切な医者にいくことをおすすめします。
 
「怖い」と言っている暇があったら、ちゃんとした病院にいけばいいだけです。いちいち、無駄に「怖い怖い」といっているほうが最悪の結果を出すかもしれませんよ。

以上、日本人がほとんど知らない、「除夜の鐘の音さえ、うるさいと思う人々は、もしかしたら、脳に病気があるかもしれないから、早く診察してもらえ」という、脳科学研究者兼メンタルヘルス専門家からの、ご提案でした。

閲覧、ありがとうございました。また来てくださいねー!

【参考リンク】
発達障害の感覚のずれについて

うつ病とTMS治療について

認知症予防とTMS治療の可能性


AI,脳科学、生物学、心理学など幅広く研究しております。 貴重なサポートは、文献の購入などにあてさせていただきます。 これからも、科学的事実を皆様に役立つようにシェアしていきたいと思います。 ありがとうございます!!