これからのこと語りあふ葛湯かな 立本美知代

「椋」2022年2月号より。

今年の冬、女性五人で吉祥寺のネパールカレーを食べに行った。その際どんな流れだったかは忘れたが「60歳になったらしたいこと」をそれぞれ語り合った。

そのうち一人は南極に行く(冒険家の彼女らしい)、一人は大学に通い直す(彼女はこの春大学を卒業したばかり)、一人は農業を始める、うち二人は出会うべきパートナーと自然のある余生を過ごす(山か海かは悩みどころ)。こんな内訳である。

掲句もそんな場面ではないだろうか。〈これからのこと〉にとりたてて暗い気分を感じさせないのは「話しあふ」ではなく〈語りあふ〉のチョイスの成功からか。もちろん人のこころをほぐす〈葛湯〉にもほがらかな未来を感じさせる。

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