歩道橋に誰も来なくて冬夕焼 安藤恭子

「椋」2022年2月号より。

もう撤去されてもおかしくない歩道橋が全国各地に存在する。〈歩道橋〉はもはやノルタルジーの存在になってしまった。

〈歩道橋〉を愛する人は多い。だからつい上る。こんなに楽しいのになぜ誰もここに来ないんだろう。その、わたしだけが知っていてみんなが気づかない宝物らしさ。そういうものが小さい頃はたくさんあったはずなのに。

掲句は「来る」という動詞の選択が軽妙。わたしがいる場所に誰かが「来る」。まさしく「go」でなくて「come」なのだ。誰かわたしのところに来てほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?