読経の畳にのびる冬日かな 田草川㓛子

「椋」2022年2月号より。

〈冬日〉といえば思い出す句がありますよね。

大仏の冬日は山に移りけり 星野立子『立子句集』(玉藻社、1937)

名句過ぎる.....ので比較してしまうというより、この句がベースにあってもう季語の本意みたいになっている状態。だから〈冬日〉には仏教の香りがする。澄んだ空気の中のぬくもりは、この国の生活に根付く信仰心。

〈畳〉に家庭の小さな仏間を想像する。仏間だから物も少ない。ござっぱりした仏間の畳の表面に〈冬日〉がのびていく時間の経過を詠んだ句である。そこに読者は誰かのすこやかな時間を味わうことができる。

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