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相互生産性とは? (Mutual Productivity / MP) 【マネジメント編 #1】

1. 概要

この投稿では、「相互生産性(Mutual Productivity / MP)」というマネジメントモデルの概念とその効果、「相互生産性の最適化(Mutual Productivity Optimaization / MPO)」についてご紹介します。

これにより経営戦略や、ビジネススケール、プロダクトグロース、チームマネジメント等に少しでもお役に立つ事ができれば幸いです。

2. はじめに

これまでいくつもの企業の社内外 CxO(CTO、CPO、CMO、CAIO、 COO)や、技術顧問、プロダクト顧問を務めてきた中で、ビジネススケールやプロダクトグロースさせるために、いろんな組織論、マネジメント論、技術論等を実践してきましたが、更に目的意識を共有化して組織をより強くするためのアプローチとして「相互生産性(Mutual Productivity / MP)」というマネジメントモデルをいくつかの組織で導入してきました。
その結果「潜在的な生産性」改善や、「生産性の相関」強化等により、更なる生産性向上の成果を出す事ができました。

長田 恭治 / Kyoji Osada

また、私のこれまでの経験値では、優秀とされる経営者やビジネスマン、エンジニア、デザイナー、マーケター等の多くは、私と表現は違っても、または感覚的にでも、「相互生産性」に似た概念を上位に持っている方が多くいました。

そして、これらの上位概念や目的が大きくズレているとき程、どんな取り組みをしても、どこかの段階で組織のグロースやスケールの障壁になるような生産性停滞の事象が生じるというケースも多く見てきました。

これらは特に複雑な話ではなく、シンプルかつ感覚特性を持つ概念でもありますので、次のセクションからは「相互生産性」とは何か、を事例混ぜて解説していきます。

3. 相互生産性とは?

相互生産性とは、

  • 直接的に関わりあう個人あるいは組織同士の「お互いの生産性」の定量的な指標

  • あるいは「お互いの生産性の相互認識」という社会的関係性の概念

  • 逆説的に「どちらかに偏った生産性活動」に対する反意的な概念

等の事をさします。

相互生産性
相互生産性

そもそも生産性とは、個人あるいは組織の価値創出のための投資効率(または価値効率)であり、数式では「Output / Input」あるいは、「価値 / 投資」等で表せます。
(※ 生産性の詳細については、次の「生産性について」投稿で解説を予定しています。)

生産性 = 価値(Output)/ 投資(Input)= 価値創出の投資効率
生産性とは

例えば、ビジネス現場にける「企業」の観点の例では、「企業」「従業員」「顧客」「協業者」「出資者」「社会」の 6 層に領域を分類した上で、

  • 「企業」と他 5 層との
    「1 x n 相互生産性モデル / 1 x n Mutual Productivity(1n MP)Model」

  • または
    「6 層間相互生産性モデル / 6 Mutual Productivity(6 MP)Model」

という相互生産性モデルの例が考えられます。
それぞれがその「企業」と関わりあうことで、相互の価値を高めあう、いわば「エコシステム」的な社会的関係性ともいえます。
(目的によって 6 層である必要はありません。)

「1 x n 相互生産性モデル / 1 x n Mutual Productivity(1n MP)Model」

1 x n 相互生産性モデル / 1 x n Mutual Productivity(1n MP)Model
1 x n 相互生産性モデル

例えば、プライベートにおいても、友人・知人関係、恋人関係、夫婦関係などで、一方の価値を一方だけがコミットする関係性は、一時的に利害が一致して関係性が成り立つケースもありますが、お互いが長く価値を高めあえる関係にはなりにくい傾向にはないでしょうか?
このように、どちらかが片方向的に生産性に寄与することではなく、相互が相互の生産性を高めあうという概念です。

昔から「Win x Win」や「三方良し」など、類似の概念は多く存在しますが、あえて「相互生産性」を推奨する理由(メリット)は以下の通りとなります。

  • 概念に留まらず、定量的な生産性の指標化ができる事

  • 生産性領域を明確化できる事

  • 経済学の生産性定義に限定しない応用解釈ができる事

以下では、「1 x n 相互生産性モデル / 1 x n Mutual Productivity(1n MP)Model」を例に、それぞれの層の観点に立った生産性の例を示してみます。

■ 従業員生産性の例

従業員

生産性が

  • 価値創出の投資効率(アウトプット(価値)/ インプット(投資))

という定義であるならば、従業員側の観点からも、同様の数式が成り立つ、という応用解釈です。

  • 例)従業員生産性

    • 対価 / 労力 = 従業員の価値効率

生産性とは、「企業」の生産性を「従業員」が追うという、(経済学上の定義や慣習によって)片方向的な解釈が多いように思いますが、例えば、従業員側から見た生産性とは、より少ない労力等でより高い自身の価値を生む、というように応用解釈する事も可能でしょう。

■ 顧客生産性の例

顧客

生産性の応用解釈は顧客の価値効率にもあてはまります。

  • 例)ユーザー生産性

    • 受けるサービス / 消費 = ユーザーの価値効率

例えば、顧客は高いお金を払ってわざわざ粗悪なサービスを受けたいものでしょうか?
出費以上と感じる満足度の高いサービスを受けられれば、それはユーザーの価値向上となりえるでしょう。
また、UX の観点では、同等の商品を手にできるならば、ユーザーは多くの時間を費やすよりも、より少ない時間で獲得できる UI を選択したくなるでしょう。

■ 出資者生産性の例

出資者

いちばん分かりやすい例は、投資家や株主などの出資者の価値効率でしょう。

  • 例)出資者生産性

    • ゲイン / 投資額 = 出資者の価値効率

例えば、少ない投資額でより高いゲインを生むことでしょう。

■ 協業者生産性の例

協業者

協業者は、仕入れ先、提携やコラボレーション相手となるでしょう。

  • 例)コラボレーション先の生産性

    • 効果 / コスト = コラボレーション先の価値効率

例えば、仕入先の生産性は、そのクライアントに関わる事で、自社がより成長し価値の高いものとなる事や、コラボ相手などは、活動を共にする事による集客効果やブランディング効果なども含まれるかもしれません。

■ 社会生産性の例

社会

社会にとっても生産性の応用解釈はあてはまります。

  • 例)社会生産性

    • 自然保護効果 / 時間 = 社会の価値効率

    • 安全性 / 労力 = 社会の価値効率

SDGs やサステナビリティが叫ばれていますが、例えば Co2 削減対策なども実現に時間がかかる程、社会における生産性は低く、Co2 削減効果が高い程、社会における生産性は高いという事になるでしょう。

ここまで、いつかの例を示しながら相互生産性について解説を進めてきましたが、ここまでで重要な 1 つ目のポイントは、

  • 相互の生産性の存在を認識する

という事です。
次のセクションで、その理由を含めて解説を進めていきます。

4. 相互生産性の効果

相互生産性の効果

前セクションでは、「1 x n 相互生産性モデル / 1 x n Mutual Productivity(1n MP)Model」をもとに、「各層の観点から見た生産性」を例示しました。

このような各層の観点から見た生産性や価値を、相互で高めあう活動が「相互生産性活動」となるのですが、2 つ目の重要なポイントは、

  •  実は相互の生産性には相関性がある

という点です。

相互生産性活動は、どこかの層の生産性を上げる程、他方の生産性も上がりやすいという連鎖の特性を持っているのですが、実はこれこそが相互生産性活動に着目して取り組むべき理由であり、相互生産性の効果なのです。

ここまでで重要なポイントをもう 1 度整理しますと、

  1. 相互の生産性の存在を認識する事

  2. それらの生産性には相関性がある事を知る事

となります。
要するに、相互生産性活動は、これまで見過ごされやすかった、各層の生産性要素の存在や、その相関性をしっかりと言語化し、可視化、構造化などで共通認識する事により、更に生産性を向上させようする活動と言い換える事ができます。

そして、相互生産性の相関性は複雑な話ではなく、普段からみなさんの身近で起こりうる事象でもありますので、以下でその例を簡単に示してみます。

例えば、従業員がモチベーションを高め、組織へのエンゲージメントが高まる事により、従業員から見た生産性が上がれば、顧客に付加価値をもたらす業務に集中し、企業、従業員、顧客、ひいては出資者の価値の向上をもたらす事ができるなど、相互生産性の相関を高める事にも繋がるでしょう。

逆に、従業員に対して説明責任を果たさず、従業員に高負荷をかけ続け、一過性の企業の生産性向上を求めた場合には、従業員から見た生産性は下がり、そう遠くない未来に従業員がまとまって転職する等の可能性を高め、企業の生産性も停滞するかもしれません。

5. 相互生産性の最適化

(Mutual Productivity Optimization / MPO)

相互生産性の最適化

生産性の議論をしていると、「生産性の最大化」という表現を耳にする事がよくあります。
しかし、この「生産性の最大化」という表現については、生産性向上の取り組みを進めていく過程で、理解しやすい表現である反面、認識齟齬を生みやすい表現であると私は感じています。

そのため、私は「最大化」ではなく「最適化」という表現をできるだけ使うようにしています。
「生産性の最適化」の詳細につきましては、次の次の「生産性の最適化について」の投稿で解説を予定していますので、この投稿では結論だけ先に投稿します。

「生産性の最適化とは?」

  • 定める期間における、生産性の最大値を目指す活動である事

  • 持続可能な生産性最大化の活動である事

  • 見過ごされやすい生産性要素の認識化も活動に含まれている事

としています。

そして

「相互生産性の最適化とは?」

  • 「生産性の最適化」の上位概念である事

  • 相互生産性の概念が踏襲されている事

  • 相互生産性要素の相関性強化が進められている事

としています。

6. まとめ

この投稿では、「相互生産性(Mutual Productivity / MP)」というマネジメントモデルの概念とその効果、「相互生産性の最適化(Mutual Productivity Optimaization / MPO)」についてご紹介しました。

実際には、はじめから全ての層の相互生産性を高い精度で実現する事は、現実的ではないはずです。
しかし、相互生産性とは、持続特性の高い取り組みであり、関係をつくり続ける事により、個々の生産性や相互の生産性の相関性も上がり、全体の生産性も上がっていくという性質を持っています。
実践にあたり、できるところから小さく早くアジャイルで育て続けていく事が重要でしょう。

もし、組織において常に生産性を向上し続けたいという場合には、見過ごされやすい生産性要素にも目を向け、相互生産性を指標化、言語化、可視化、構造化し、相互生産活動により相互生産性の最適化を進めていく事をオススメします。

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