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笑う門には福来たる(災難に備える)

日本の正月の風物詩に、「三河万歳」があります。物事の繁栄を願い、めでたい文句をおどけて唱って舞うことで、ほんとうに幸せがやってくると信じられています。
起源は戦国時代の三河の国(現在の愛知県南部)で、当時は 戦に明け暮れていたうえ、毎年 水害にも襲われていました。「たいへんな災難に遭った時こそ、くじけない精神力や心のゆとりが 被害を最小に抑え、回復力を得る」という庶民の知恵が、この伝統芸能に込められているのです。

困った時こそ、笑顔は大事です。とりわけ駐在員家族は、旅行者ではなく “住民” として赴任地に住んでいるので、周囲から “応分の負担” や “受忍限度” を求められて面食らうこともありますが、まず笑顔で受け止めましょう。外国人がお邪魔しているのだから、そこに住むための “決まりごと” の心得が、それなりに必要なのです。日ごろから それを察知する努力が、そして 「わからなければ聞く姿勢」がなければ、いざというときに助けてもらえません。

また 支援を頼んだり改善を要求したりする場合にも、笑顔で論理的に話すことが必要です。価値観も習慣も、あるいは感覚も異なる相手なので、こちらの窮状は なかなか理解されにくいでしょうが、つい 「これくらいはわかってよ!」と感情的になると、相手の態度も固くなります。

他方、笑うことによる身体的効果も小さくありません。脳の働きが活性化され、血行促進、自律神経のバランスの安定、筋力アップ、鎮痛作用などの効果があると医者は言います。そのことが心理面で 活力やゆとり、癒やされたり慰められたりにも つながっていきます。

逆に 「こんなことをしたら馬鹿にされないだろうか」などの強迫観念や 焦り・恐怖心などにとらわれていると、心の治癒力・回復力まで 殺がれかねません。まず笑顔を交わし励まし合うことが、互いの活力を生むことを知りましょう。

また、情報収集も行動計画も 夫婦の共同作業にするのがコツです。夫婦間・家族間でよく話し合って決めたことは、たとえ 後で誤りだとわかっても、被害を小さく抑えられますし、回復も早いのです。

2020年4月、狂言師の野村萬斎の『うちで笑おう 狂言の笑い』がインターネット上に流れ、秋ごろまで人気を集めていました。また、“口角を上げる” トレーニングなども注目されています。「こうしてがんばっていれば、自分たちは大丈夫! なんとかなる」と前向きに考える方法を知ることで、怖さもつらさも半減するわけです。
「笑う門には福来たる」ですね。

※ このコラムは、『月刊 海外子女教育』2021年1月号の『非常事態に備える
  メンタルヘルス』のために書きました。災難や試練に遭遇した時こそ、む
  しろ その災禍から何かを得て力にしてほしいと願っています。

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