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研究・批評のための文献管理の方法

今回は前回予告したとおり、文献の管理の仕方について紹介していきたいと思います。といっても文献管理ソフトは何がいいとか、そういう話ではありません(ちなみに学生時代、使っていたのはEndNoteです)。主に文献をPDF化して管理する方法についてです。僕は「研究・批評のための資料整理の方法」で紹介したように、所有している映像データについては細かく管理していますが、もっている書籍まではエクセルに入力して整理していません。だから間違って同じ本を買うことは、ある。いままで3冊までは5回くらいやってしまいました。本当は書籍も細かく管理できればいいのですが、さすがにそこまで時間は使えない。ただ、本というものは物理的に場所を使うので、管理の方法は工夫しなければなりません。また、すべての本を購入するわけにはいきません。学生のときは困窮していたので、ほとんど大学の図書館の本を借りていました。

これも前の記事で書いたとおり、研究室や書斎の本棚は見出しをつけて分類しています。ですが、本は増えていく一方で、スペースは減っていく一方です。これはさすがに工夫して管理するしかない。というわけで、今回は文献をデータ化して保有するやり方について、ご紹介したいと思います。この10年ほどでスキャナーの技術は劇的に向上しました。僕が学生だったとき(2000年代後半から2010年代前半あたり)、スキャンの技術は本当にしょぼかった。というか、マジで時間がかかりました。一冊英語の書籍を借りて半日がかりでプリンター室にこもってPDFにしていました。それと2010年から1年間、アメリカの大学に留学したのですが、その時も自宅の複合機を使って、大量に本をPDFにした記憶があります。これも驚くべき時間を使ってやりました。いま思えば、あの努力はなんだったのか……。途方もない貴重な時間を浪費しました。

前置きが長くなりましたが、ここ5年くらいのスキャナーの技術は目覚ましいものがある。これもいくつか試して、この数年で定着したのが、CZUR Aura X Pro のドキュメントスキャナーです。これ、2019年の商品で5年間前なので、いまはもっといい商品もあるはずです。というか、今回はこの商品がいいというのではなく、スキャナーをうまく使えば、これほど楽に文献管理できるよ、という話なので、そういう前提で読んでほしいと思います。それぞれの用途にあわせて、適合するスキャナーを選べばいいので、特にこの商品を推しているわけではありません。僕が重たく分厚い本をデータ化するにあたって重要なのは、時間がかからず効率的に作業がおわるということ、研究書をいつでもどこでも読めるようにするのが目的なので、クオリティはさして重要ではなく、文字が読めたらいい。これ、ポイントです。僕は紙の本が大好きで、読みたい本はすべて持っておく。けれども、たとえば出張先で読んだり、海外にいっているときに論文を書かなければならなかったり、クラウドにあげておいて色んなPC(自宅のPC、研究室のPC、出先でのノートPCなど)でアクセスしたりという場合も多く、こういう用途には圧倒的にデータがいいのです。

CZUR Aura X Pro のドキュメントスキャナー

このスキャナーは電気スタンドとしても使えるようになっていて、スマートフォンに入れたアプリで電気のオン/オフもできます。この点も使い勝手がよいです。スキャナーの使い方も簡単で、とにかく早い。かつては1冊に3〜4時間とかかけていました。死んだ魚の目でひたすら作業をやっていたあの頃の僕に教えてあげたい。こういう作業は本当に効率が大事です。タイパです。研究者や批評家にとって時間はめちゃくちゃ貴重なのです。さて、このスキャナーですが、以下のようにスキャンするのが基本(以前ツイッター時代に投稿した動画を参照ください)。

テクノロジーの力というのは偉大ですね。ちなみに上記のCZUR Aura Proというのはバッテリーなしバージョンで、そのあと買い直したCZUR Aura X Proがバッテリー内蔵モデル。僕などはアメリカの国立公文書館などにいくので、そういうときはバッテリーありのほうが断然いいです。が、自宅で使うぶんにはバッテリーなしでまったく問題ありません。とりわけスキャンしてOCRをかけて短時間で保存できるのは革命的です。書籍だと索引がないものも多く、一発で検索できるので、これなしで研究は進まないといっても過言ではないのです。横書きの洋書の精度はかなり高いです。ただし、このCZURのスキャナーをいつも使っているわけではないです。スキャナーを置いて、シートを広げて指サックとフットペダルを準備して開始するので、やりはじめたら早いですが、さあ書籍をPDF化するぞ、と思ったときに活躍するガジェットです。

1枚の書類程度ならプリンターとして設置している複合機の機能を使うことも多いですし、PCにUSBを繋ぐだけで手軽に使える、エプソン スキャナー GT-S650も併用して使っています。これも本が分厚くても必要な箇所だけ簡単にスキャンでき、スキャンを始めるまでの手軽さでいうと抜群です。用途にあわせて使い分けるのがよいのではないでしょうか。このスキャナーはめちゃめちゃ軽いので、大きさはそれなりにありますが、簡単に持ち運ぶこともできます。

エプソン スキャナー GT-S650

ところで、書籍はエクセルで管理していないと最初に書きましたが、さすがにデータ化した大量の論文や書籍は大まかなカテゴリーではありますが、以下のようにファイルにわけて管理しています。

データ化した論文や書籍のファイル

これとは別に研究や批評には大量に複写した資料があります。以前は複写したまま紙の資料をボックスにわけて管理していましたが、これも物理的に増えていく一方なので、徐々にではありますが、デジタル化して管理するようになりました。国会図書館でコピーした昔の資料などは、やはりスキャンを使ってデータにしています。紙はもっていればいるほど劣化して読めなくなっていきますし、データにすれば読めないところもアップにして可読性もあがる(昔の資料は文字が潰れていて読めないこともあります)。以上、今回はスキャナーを効果的に使った文献管理の手法についてでした。次回はトップ画像にあるような、PC周辺まわりのガジェット類について紹介しようかなと思っています。

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