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中学生のためのテストの段取り講座その4 全体量を把握すると不安がなくなる

 その4 全体量を把握すると不安がなくなる


 さて、休憩しましたか? 次に進んでいきましょう。
 今日は少し具体的に話を進めていってみたいと思います。前回までで、僕がこれから伝えようとしていることの考え方みたいなものは伝わりましたかね?
 テストとは何か? 段取りとは何か? そして、大人とは何か?
 この3点が頭に入ったら、この講義を進めてください。まだもうちょっとわからないって人はもう一回、テキストを読んでみてくださいね。
 さあ、では自分で段取りを組んでみましょう。
 
 まず、段取りについて、つまり、これは時間割も段取りってことです。時間割を作っているのは、みなさんではなく、みなさんの担任の先生だって話はもうしましたよね。
 つまり、先生はこれから何が起こるかどのような進行なのかを理解してます。先生は全体を把握しているわけです。
 しかし、みなさんは毎週プリントで配られる時間割を通してしか、わかりません。週ごとの動きしかわからないわけです。
 これ何かに似てませんか? そうです。週刊ジャンプです。そして、月9の恋愛ドラマです。
 つまり、エンタメですね。エンタメの世界で、もしも観客が全体像を把握していたらどうなりますか? 何か面白いことありますか?
 ネタバレって言葉があるくらいです。先を知っていたら、何ひとつ面白くありません。先を知らないことこそがエンタメの命です。
 つまり、担任の先生はエンタメ的にみなさんに勉強を教えようとしているわけですね。
 でも何か面白いですか? 勉強って面白いですか? 
 全然面白くないですよね。テストとか緊張するばっかりで嫌ですよね。あつ森とか王様ランキング味わう方が楽しいですよね。どう考えても、勉強というエンタメは、他のゲームやドラマや漫画には負けてしまいます。ゲームやドラマや漫画より面白い勉強なんてありませんよね。なぜ面白くないのか。
 簡単です。勉強はエンタメじゃないからです。勉強は先を知らないことがいいことなんか一つもないのです。むしろそれじゃ勉強はできないんです。勉強はエンタメではなくて、なんですか? これも何度も言いましたよね。そうです。大人になるための訓練です。大人になるってなんですか? これももう暗記してますよね。そうです。大人とは自分で時間割が作れる人です。段取りが組める人です。
 先生から教えられることをドラマのように毎週受け身で待っているという状態では勉強はできません。それはエンタメの勉強です。それはいつまで経っても、子供が観るテレビ番組です。ただボタンを押せば、少しずつ進んでいく世界。先がわからない世界。もちろんそれはそれで楽しいですよ。それこそ、段取りという言葉は、元々歌舞伎用語です。つまり、エンタメです。観客が台本を知っていたら楽しくないわけです。でもあなたは観客ではなく、プレイヤーになる必要があるんです。段取りですから。演じる側です。観る側ではありません。エンタメから抜け出てください。エンタメはテレビやゲームや漫画に任せてください。勉強はエンタメではありません。つまり、自分で段取りを作るんです。そういうわけで、僕はここでこうして熱く講座を開いているわけです。

 さて、段取りを作りましょう。
 段取りとはなんでしょうか。これも何度も言ってきましたが、大工の笠井さんによると、一日にやる全ての仕事を朝確認しておくってことです。
 これはつまり、どういうことかというと、全体を先に把握するってことです。台本を全部読んで、セリフを覚えるってことです。エンタメじゃないってことです。
 全体を把握する、つまりこれは全体の量を把握するってことです。段取りとは量を知ることです。 
 ここでまた僕の師匠に登場してもらいましょう。
 隅田川沿岸で暮らしていた鈴木さんという気持ちのおじさんです。どうぞ!
「はい、鈴木です」
「鈴木さんお久しぶりです」
「おう。坂口さん、お久しぶりです。なんだい、偉くなっちゃって、講座の先生をやっているのかい」
「そうなんです。でもお金は一円もとってませんよ。無料の先生です」
「それはいい。なんでも無料がいい」
「今回、鈴木さんをゲストにお呼びした理由は、段取りについて教えたくて、段取りとは量であるってことを伝えたいんですね」
「ふむふむ。で、私は何を教えたらいいの?」
「はい、ここでみなさんに鈴木さんについてちょっとだけ補足で説明をしておきましょう。鈴木さんはいわゆる路上生活者です。みなさん路上生活者って言葉はわかりますか? 日本ではお金がないと家賃が払えません。家賃が払えなくなったら家を追い出されます。それでも、人間は生きていていいんです。憲法の第23条がそれを証明してます。人間は最低限度の生活を営むことができるってやつです。それがこの国の基本的人権です。そんなわけで、お金がなくなった鈴木さんは10年以上もの間、隅田川の川沿いに、ここは墨田区の土地なのですが、鈴木さんは基本的人権があるので、どうにか拾ってきたもので小さな家を建てているのですが、追い出されません。基本的人権ですから、役所は何もできないわけです。鈴木さんはそういう人です。路上生活者だからって差別しないでくださいね。僕の師匠なんです。なんでも彼は知ってます。では量について聞いてみましょう。これがきっと段取りについての理解を助けると思うので。鈴木さんは1日にどれくらいの水を使うんですか?」
「水? 水は調理と飲水と風呂と洗濯に使うよ。それでこの宝焼酎の4ℓのペットボトルがあるんだけど10本使うから、何リットルだ?」
「みなさんわかりますか? 答えは40ℓですね。鈴木さんはパートナーのみっちゃんさんと一緒に暮らしているのですが、大人二人で40ℓ、一人当たり20ℓが必要とのことです。つまり宝焼酎のペットボトル5本分あれば、ご飯が作れてお水も飲めてお風呂にも入れて洗濯もできるってことです。それではみなさんに質問です。みなさんは一日にどれだけ水を使っているか知っている人はいますか? いませんよね。知ってます。おそらくみなさんのお父さんもお母さんも知らないと思います」

 段取りを組み立てるには、まず全体量の把握が必要です。鈴木さんで考えると、段取りとは、生活の段取りです。鈴木さんには水道も繋がってません。電源もありません。そんなわけで、自立しなくちゃいけないんですね。社会に出る前のみなさんと同じような状況なわけです。そこで生活の段取りを組む必要がある。そのときに、まず自分がどのくらいの水や電気やお金が必要かを知っておく必要があるんです。そうすれば、それを獲得すればいいだけですから。
 人が不安になるのは理由があります。
 それは、わからない、ということです。
 まだみなさんはお金を稼いではいないですよね。稼ぐのはお父さんお母さんたちです。多くの大人がそうやって自分でお金を稼いでいるわけですが、みんな不安を感じてます。理由は、どれくらいのお金が生きている間、必要なのかわからないからです。もっと言えば、お金で買うもの、つまり、水、電気、食材などがあると思いますが、その全体量を把握していないから不安になるんですね。
 もっと言いますと、全体量を把握していたら、不安になりません。
 自分に必要なことがどれくらいかを把握する。これが段取りの基本なのですが、段取りをしっかり組むことができると、何が、いいかといいますと、

 不安がなくなる

 ってことなんです。だって、全体量を把握していたら、もっともっと必要かもしれない、みたいに、見えない不安を感じないじゃないですか。もっと言いますと、今の社会は、水がどこからくるのかも電気がどこからきているのかもわからない。お金がないと家賃が払えないと生きていけない。でも誰も自分では家を建てられない。こんなふうに、何事もできない、知らない、わからない、と見えない不安のオンパレードなんですね。だから、お父さんもお母さんも不安なんです。働き続けていないと生きていけないという妄想で、かなり心がズタボロになってます。
 ぜひともお父さんお母さんが不安そうな顔をしたら、こう言ってあげてくださいね。
「生きていくのに必要な全体量を把握しようよ。そうしたら、必要な分量がわかるから、きっと楽になるよ」って。
 みんな知らないことばかりの世界に生きているから不安なんです。鈴木さんは自分が生活をしていく上でどんなエネルギーがどれくらい必要なのか水の量から電気の量からなんから知っているんです。だから不安ではない。ちなみに鈴木さんは電源は自動車用の12ボルトバッテリーを活用してます。みなさんの家は何ボルトとか知ってますか? 知りませんか? 日本は100ボルトです。それであらゆる電化製品は動きますが、実は自動車用のバッテリーでも動くものも多いです。だって、自動車の中にクーラーも、テレビも、ラジカセも、照明も、USBもなんでもあるのみなさん知ってますよね。つまり、電気は何も電線伝って、発電所で作ったものでなくても、バッテリーの電気で、鈴木さんによると、バッテリー一台で20日間ほど、電化製品が使えます。こうやって全体量を知っていると、とにかく少しずつ不安が減っていきますので、ピンときた人は一体、自分にはどれくらいの量が必要なのか、テストどころではなく、生活全体で見て考えてみてください。きっと楽しくなりますよ。
 そんなわけで鈴木さんありがとうございました。また必要な時にお呼びするかもしれません。みなさんもお礼を言いましょう。ありがとう、鈴木さん!

 さて、みなさん、今回も終わりが近づいてますよ。最後にまとめです。

 みなさんはテストを受けるときに不安になりますよね。うまくできるかどうかわからない。
 なぜ不安になるかが、今回わかったわけです。
 つまり、みなさんはテストの全体量が頭に入っていないんです。目で見える形にしないと、頭には入りません。ただ先生からテスト範囲のプリントをもらうだけじゃ、不安は無くなりません。それは電線伝ってやってくる電気みたいなものです。どこからやってきているのかわからない。つまり、それは自分の体で感じていないんですね。それでは不安になって当然です。
 みなさんは今、不安である。不安な理由は全体量を知らないから。不安で当然です。しかも、不安は簡単に軽減できるのです。
 全体量を知ればいい。知るだけでなく、鈴木さんみたいに体で感じれるように、とってもわかりやすく、染み込ませたらいい。
 さあ、みなさん不安のない世界に飛んでいきましょう。
 まずは全体量を、自分が一番わかりやすいように、把握するんです。
 少しずつテスト勉強をする方法に向かっていきますね。
 ではまた休憩しましょう。水分補給も忘れずに。

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