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お金の学校 (4) お金とは時間である

 ここはお金の学校です。お金についての研究の場です。と言っても、ただ研究するだけでは研究はできません。研究のためには実験が必要です。お金の実験ですから、つまり、お金を手にする実践をするということです。多くの人が、この「どうやってお金を手にするのか」ということを一切教わっていません。これってとんでもないことだと思いませんか?教わってないんですから、ほとんどの人がどうやってお金を手にするのかを知らないわけです。みんなが考えているのは、会社に行けば給料がもらえる、ということだけです。自分で会社をやってもお金を手にすることはできるわけですが、なぜかそのことに関しては絶対に誰も教えません。学校でもどうやったらいい会社に入れるのか、ということしか言わないんです。しかも、どうやったら、の答えは、いい大学に入れば、の一点張りです。これはもはやトンデモの世界です。みなさん、このような言葉を聞いたら、いますぐにその学校をやめましょう。そんなところにいても、絶対にお金は手に入りません。なぜなら、そう教える先生たちが、どうやってお金が手に入るのかを知らないからです。だめ、ゼッタイ、ですよ。
 どうやったらサッカーボールをうまく蹴ることができるのか。そんなことをサッカーをやったことがない人には聞かないでしょう。単純なことです。しかし、今の世の中は、お金に関してだけは、お金がどうやったら手に入るのか、という実は生きていく上で一番大事なことを、お金を手に入れることに全くの素人である高校の先生たちが教えちゃってます。しかも、聞こえてくる言葉は、いい大学に入って、いい会社に入れ、の一点張り。違うことを言う人はいません。しかも、先生だけでなく、あなたたちの親もまた、同じようなことを言います。そして、みんな会社に行っているのです。なんか変だなと思いますよね。そうです。無茶苦茶変です。もはや狂気の沙汰と言っても過言ではありません。
 というわけで繰り返し言うわけですけど「経験していない人からは絶対に教わらない」こと。
 これだけは徹底してくださいね。あなたの学校の先生からお金に関して教えてもらえるのは唯一「あなたの給料はいくらですか?」ということだけです。ぜひ聞いてみてください。絶対に言わないと思います。言わないのはなぜかというと、給料が安いからです。安いだけではありません。安いことに不満を感じているからです。ほとんどの人間はうまくいっていないことは口にしません。黙っていたら、うまくいっていないんだと判断すれば大抵当たってます。つまり、僕が今、お金の学校をやっているということは、自分が納得できるくらいにはうまくいっているということです。
 今日は「右腕」について話をするなんてことを前回言いましたけど、その話ができるのかどうかはわかりません。でもまた今日も実例からはじめてみましょう。これもまた僕が作った会社の話です。包み隠さず話してみたいと思います。
 僕は「畑部」という会社をやってます。畑部の社長をやってますが、社員からは社長ではなく、部長と呼ばれてます。社員は全部で8名の小さな会社です。しかも、驚かないで欲しいのですが、売上は毎年0円です。そんなものが会社なのかと、笑われるかもしれません。どうぞ笑ってください。僕も笑ってしまうくらいの変な会社ですから。
 売上は0円ですが、社員は誰も怒ったりしません。ただのいい人なのでしょうか。そうかもしれません。僕も怒らないですし、社員も怒りません。でも暗くなったりすることもありませんし、みんないつも笑ってます。でも実際はどうなんだろう。僕にはわからないところもあります。なぜなら我々は一度も顔を合わせたことがないからです。どういうことかと言うと、我々の連絡手段はすべて電話でして、面接も電話、仕事の報告も電話、会議はありません。売上は0円ですから、僕が一人ずつ手渡しで給料をあげるなんてことも必要ありません。そんなわけで、我々は会う必要がないんです。でも電話では無茶苦茶仲良しです。でも僕はどこに住んでいるかすら知りません。大体の県とか市の名前とかはもちろん知ってますよ。でもそれ以上は知る必要がないんです。
 これ以上話しても混乱するでしょうから、畑部の事業内容について説明しておきましょう。
 畑部という名前が示しているように、畑部は主に畑で仕事をしてます。九州の熊本に本店があり、沖縄、広島、高知、鳥取、新潟、千葉、岩手、北海道にそれぞれ支店があります。厳密に言うと、会社の建物はありません。それぞれに畑があるだけです。本店の畑は30平米です。無茶苦茶小さいです。支店もそれぞれ30平米。それぞれの支店に社員が1名ずついます。僕も含めて、それぞれに畑をやってます。はっきり言いますと、事業内容はこれで終わりです。畑で何を育てるかは問いません。食べたいものを育てるように、と僕は社員に伝えてます。僕は現在、きゅうり、じゃがいも、ルッコラ、ブロッコリー、イタリアンパセリ、大葉、大根、ピーマン、九条ネギ、白ナス、ササゲ(小豆に似た豆)、ベニオクラ、サンチュ、レタス、リーフレタス、キャベツ、芽キャベツ、グリーンボール(キャベツの別種)、白菜、ニンニク、にんじん、ほうれん草、小葱の全23種類の野菜を育ててます。結構すごいでしょ? でもそれぞれ一株、二株くらいなので、我が家が食べる分くらいです。だからほとんど誰にも分けてません。売っていません。
 それぞれの社員も思い思いに作ってます。僕はルールを決めるのが嫌いなので、何にも決めてません。監視するのも嫌いなので、就業時間もそれぞれ好きなようにやって〜と伝えてます。おかげでクレームもありませんし、会社をやめる人もいません。休みたいときに休むようにとむしろ、それは強く言ってます。
 野菜ってすぐにわかるんですよ、人間の心が。だから、売るために作ったりすると、あんまり美味しくできません。ちょっと野菜がいたずらするんですよ。だからうちの会社では野菜は売らないと決めたんです。たいした決断です。だって売上が0円ですから。でも、誰一人給料を求めてこないので、やっていけるんです。ここでまず重要なことは売上が0円の会社もある、ということです。それを頭に入れておいてください。あの大企業なんか今年の三月期に発表した数字によると、1兆4381億円の赤字ですから。売上0円だからって気にすることはありません。ソフトバンクよりもずいぶんマシです。むしろ優良企業と言ってもいいかもしれません。実のところお話ししますけど、借金をしていない企業を探す方が大変なんです。それに比べて畑部は売上もありませんが、借金も同じ0円です。潰れようがありません。よって、永遠に運営することができる超優良企業なんです。
 しかし、社員だって食べていかなくてはいけません。しかも社員全員がもともとは僕がやっているいのっちの電話にかけてきた人なんです。つまり、元・死にたい人です。みんなお金がなく、仕事もうまくいかず、友達もおらず、両親にも見捨てられて、もうどうやって生きていけばいいのかわからなくなって、僕のところに電話をかけてきた人です。ちなみに、いのっちの電話も、売上0円の僕の会社です。こちらは年間10万円ほどの赤字を出してます。10年やってますからもう100万円赤字が重なってます。売上0円なのに。それでも潰れないのは、親会社である合同会社ことりえ、これもまた僕がやっている会社なのですが、そこから毎月100万円のお給料を、いのっちの電話という会社からではなく、ことりえが肩代わりして払ってくれているからです。いのっちの電話の社員は僕一人ですので、そのお給料から、赤字分を補填しているというわけなんです。ちょっとややこしくてすみません。わからないところはすっ飛ばしてください。別に問題はないです。わからないところを知ろうとしなくていいです。何度も言うように気持ちよくないでしょ。わからないところを必死で知ろうとしても無駄です。わかるところを伸ばしてください。そのうち僕が言っていることは何一つ難しくないんだとわかってくるはずです。楽しいことだけをしてくださいね。そうしないとお金はすぐどこかに逃げていってしまいます。
 で、給料はどうするんだよ社長、ってことですよね。しかし、売上0円ですからないものは出せません。でもそれだとひどい会社になりますし、違法と言われるかもしれません。というわけで、登記上は会社ということにしてません。申請してないってことです。申請しなくても会社は作れます。もちろん儲けているのに、申告しなかったら脱税で捕まります。でも畑部は売上0円だから、全く問題ありません。税務署も僕のことは無視してます。金が無いところには一切興味がないからです。国家というものは税金搾取だけが仕事です。だから1円でも稼いだらすぐに目をつけられます。しかし売上0円であるかぎり、どんなに目立っても無視されてしまいます。なんか薄情な感じですよね。でも、それでいいんです。
 社員全員には、泣きっ面で役所に行ってきて、と伝えてます。そうすると、役所は色々調べます。貯金があるのではないか、とか、車を持っているんじゃないか、とか、実家に帰ったら養育してもらえるんじゃないか、とか。しかし、彼らには本当に何にもないんです。それぞれに実家はあるんです。でも実家の両親とは仲が良くないので、僕は「親に養育拒否をすると言ってもらったらいいよ」と教えました。こちらも給料を払えないわけですから必死です。そこで編み出した方法がこれなんです。どうしようもない両親たちのところに戻ると、病状が悪化し、また死にたくなるので、僕が彼らの両親全員に電話をして「そのどうしようもない、息子、娘の養育なんかしなきゃいいんですよ。養育拒否をするという選択肢がありますよ」と教えてあげたんですね。すると、彼らもどうしようもない息子娘と思ってますから、彼らに金を使わないでいいと思うと、みんな喜んで「坂口さんのいう通りに養育拒否しますよ、いひひ」だなんて言うわけです。薄情な奴らですが、ま、いいでしょう。気にせず突き進みましょう。
 そういう状態で、社員たちは役所に行きます。彼らは何も持ってません。役人はすぐに両親に電話をします。養育しろ、と言うわけですね。すると両親たちは皆口を揃えて「そんなどうしようもない息子娘は養育しません」と啖呵を切るわけですよ。役人はそれ以上は何にもできません。というわけで、無事に生活保護を受け取ることができるわけです。幸い社員は皆、家族という形態が嫌いな人ばかりで、誰も子供はいません。離婚で苦しめられたという経験も持っている社員ばかりなので、彼氏彼女はできても、いずれは飽きるか飽きられるかして別れる、他に好きな人ができる、ということを承知しているため、みんなパートナーはそれぞれにいるんですが、結婚などしようととんでもないことを考える社員は一人もいません。そんなわけで現在だと毎月13万円が自動的に振り込まれてるようになりました。
 これで僕はほっとしました。給料は払えないし、払う必要もなくなりましたから。さらに売上0円でいようと心を決めたわけです。社員からも「給料をもらうと、生活保護がカットされるので、要りません」と強く念を押されてます。僕に一言も忠告したり、怒ったりしない、素敵な社員ばかりです。
 畑部という会社には目的があります。会社に必要なのは、お金ではなく、この目的なんですね。理念といいますか、理想といいますか、目的といっても自分たちの利益のための目的ではないですよ。しかも、ただ税金を搾取するだけの国家のような「社会のために」というウソくさい目的でもありません。そうではなく、我々、畑部の目的は「一体、人間には、どれくらいの土が必要なのか」ということを研究することなんです。だからこの土でいくら稼ぐかってことでもない、畑部の資本を増やすということでももちろんございません。むしろ資本はゼロで、この土さんと付き合っていくことはできないものかということを研究しているわけです。資本主義なんてもう古いっていうか、ダサい。給料制ダサい。そもそもお金なんかいらんやろ馬鹿野郎。そんな気概のある社員ばかりですから、彼らはまず家賃を払っていません。畑は耕作放棄地を0円で使わせてもらってます。そんな土地がこの日本にはバカみたいにあるんです。東京だけにはないんですが、いや実は東京もはずれにはあるんですが、都心にはありませんので、土地の値段をつけるんですね。みんな求めているってことになってますから。土を研究する人間には必要のない都市です。東京なんかにいたら生きていけませんから。でも本当は土地に値段がついてないようなところが日本にはたくさんあるんですね。うちの社員はそれぞれそういった場所を見つけて、と言いますか、僕がよく知っているので、いのっちの電話にかけてきて死にたいと言ってきた彼らにヒントを教えました。
 それでもみんな家は借りたいと思うんじゃないかと考えてましたけど、予想外だったのは、誰一人家を借りなかったことです。代わりに彼らはみんな自分で家を建てました。僕は2万円でお釣りが来て誰でも建てられる家の研究をしてまして、大学でもその研究をしてましたし、その本も書いたんですけど(集英社文庫モバイルハウスのつくりかた)、彼らはその本を熱心に読んで、それぞれ2万円で家を建てたんですね。その2万円はさすがに支給してあげようと思ったんですけど、彼らは耕作放棄地の周辺のおばあちゃんおじいちゃんたちの肩たたきをして、それぞれ稼いだんです。これには僕も涙しましたよ。だって彼らはもともと死にたいと思ってた人だったんですよ。仕事もうまくいかず無職で、実家では親に文句を言われ、友達もいなかったんです。全員が。それがですよ、畑部に入社してからというもの、しっかり生活保護はもらうわ、自力で2万円ずつ稼いで家を建てるわ、なんだかすごい勢いで僕がこれまで研究してきた生き延びる技術を吸収してですね、今や僕よりも生き延びる力を持ってます。頼もしいです。
 30平米の畑と、2万円で建てた家、畑には共同水道がありますから飲み水は問題ありません。肩たたきしてたら周りの農家たちが水道代も払ってくれてるんです。さすがは肩たたきです。住所がないと生活保護がもらえませんが、畑の土地で住民票は取れますし、実際にそこに家を建てて暮らしているわけです。家賃は0円です。しかも、彼らはみんな自分の畑の野菜が好きすぎて、自分のところのお金と関係のない野菜が美味しいと気づいたんですね。だから、そこでの野菜しか食べてません。米は作ってないからほとんど食べてなかったのですが、最近は、近くの農家から「コメ作ったけ、食べー」とか言われて、どっさりもらってるそうです。最近では田植えも手伝っているみたいで、しかも賃金を受け取らないもんで、生活保護が受けられなくなるから当然なんですが、それが農家が気に入る理由になっており、今では米は我が社全員に回せるくらい余っている状態で、その社員は子供たちがいつでも腹一杯ご飯を食べれる会社も立ち上げてます。もちろんそちらも売上0円です。というわけで食費も0円です。うんちはバケツにためて一ヶ月熟成し、おしっこは牛乳パックにためて一週間熟成すれば肥料になるので、トイレをつくる必要すらありません。僕もここまで行くかとは思っていませんでしたが、実際、彼らは生活費を0円でやっているのです。
 そんなことできるわけないと思われる人もいると思いますが、我が社のモットーは「食べれない時は食べなければいい」です。社員一同「飢え死上等」で生きてます。そんなふうに生きてたら、ま、三日くらい食べれない時もあるけど、ま、いっかみたいな感じになるんですよね。逆に面白いというか、それが仕事でもありますので、みんなそれぞれ手記を残してますから、作品になるっていうか、とにかく彼らのサバイバル能力はとんでもなく高まってます。そして「どれくらいの土があれば人間が生きていけるのか」という結論が、大幅の予想を塗り替えて、30平米の小さな畑さえあればなんとかなっちゃうということになったんです。というわけで、社長である僕も今年の4月から30平米の畑をはじめたんです。なんと、なんとですよね。僕は社長であるにもかかわらず畑をやってなかったんです。ま、僕は司令塔みたいにして動くのが得意だと思ってましたから。でも実際に畑をやりはじめてわかったのは、そんな僕でもできちゃうってことでした。びっくりです。
 一番古株のミツマサくんは、僕にいのっちの電話にかけてきたのが8年前です。もう今年で9年目になるんですね。すごいなあ。ミツマサくんは今でももちろん生きてます。多分この文章を読んでいる誰よりも生きているような気がします。今やなんでも自分で作れます。竹籠とかも編めるんです。料理も一流です。しかも全部自分で作った野菜を使って、一流の味を、炊き出しして、腹が減った子供や大人に食べさせてあげてる心優しい子です。電話してきたのが25歳でした。生活費0円をもう8年も続けてるってことです。
 生活保護でもらったお金でも口座に入れちゃうと、貯金とみなされるので、使ってないとたまりすぎて、生活保護がもらえなくなってしまいます。そこで僕は、社員たちの給料を全て預かって、それぞれに積立してあげてるんですね。もちろんこれは全部、口座に預けているのではなく、僕の親友が熊本で倉庫業、金庫業をやっているのですが、そちらに現金をそのまま預けさせてもらってます。ミツマサくんは、

 13万円×12ヶ月×8年=12,480,000円

 なんともう1238万円になってます。他の社員も彼に続いて続々と1000万円プレイヤーになってます。しかも、生活は今と変えたくないわけです。我が社のモットーの二つ目が「生活水準は下げろ。自分の水準を上げろ」なんです。お金が増えると、下手な人はすぐ生活水準をあげたくなっちゃいます。家賃5万円の安いアパートに住んでた人が少し給料が数十万円になっただけですぐ二桁の家賃のところに住みたくなります。しかし、そうやって生活水準を上げてしまうと、いいアパートに住んで、ボロい車に乗るわけにはいきませんから、なんにせよ、人は近くにいる人と比べてちょっといい感じになるようにできているので、いい服を買い、靴も新調し、家も広くなったら、家具がふえ、電子レンジを新しく買い換えて大容量の使わないものを買ったりします。
 人間はバカです。ここは忘れないようにしておきましょう。なぜなら、そうやって生活水準を上げても、そこは価値基準が一つだけで、つまり、お金だけなんですね。だから、上には上がいるんです。そうすると、10万円代の家賃に上げちゃった人は次に20万円のマンション、もしくは分譲マンションを買っちゃうんですね。ほんとバカです。そうすると、管理費とか、わけのわからないお金、でも、いいんです。お金を持っている人は経費になりますから、そういう一桁台の一万円札をポンポン使っても平気なんですが、その世界に負けていると、人間はバカで常に争うようにできてますので、あいつより金がないとかっこ悪いみたいな感じで、結局どんどんお金を使っちゃうんです。1000万円くらい年収があるサラリーマンのほとんどうまく貯蓄できていないのは、そういう理由にあります。みんなに合わせてお金を使っちゃうんですね。
 大事なことは「経費としてお金を使った方が納税的に得である人に合わせてはいけない」ということです。
 そっちの世界に入っちゃうと、なかなか生活水準を落とすことができなくなります。結局お金はたまりません。なぜお金をためる必要があるかというと、土がないからなんです。土があれば、うちの会社の右腕であるミツマサくんみたいに、まずお金がかかりません。彼は我が社のモットーにのっとって、とことん自分の水準を上げてます。上げまくってます。今では生活費0円なのに、自分で全部作れますし、つくるもの一つ一つが高水準なので、つまり、一点ものの手編みのセーターみたいなものがもう高級ブランド顔負けなんですよね。もちろんそれは8年というミツマサくんが積み上げてきた時間が物を言っているわけですが、何よりも彼はすでにお金が必要な世界を通り抜けて行っているわけです。でも、もしも何かあった時のために、その時に働かなくていいように、つまり、ミツマサくんがミツマサくんらしくあるために、その時間を確保するために、ミツマサくんの1248万円という貯蓄が生きてくるのです。我が社ではそれぞれに給料は(ま、それは生活保護なんですが笑)すべて全額貯金に回してます。そうやって時間の担保としてのお金を生み出しているわけです。 
 時間の担保としてのお金。これが今日の大事なところです。多くの人は逆に考えてます。土地を担保にして、車を担保にして、お金を手に入れるんです。しかし、お金は有限です。つまり、使うとなくなります。そうすると、また担保が必要になってくるんですね。担保がなくなると、今度は他にお金を出してくれる保証人とかが必要になってきます。
 なんか変じゃないですか。ミツマサくんを見てください。ミツマサくんは全くお金を使ってません。それなのにどんどんミツマサくんは豊かになってます。一方、お金を使うとどうなりますか、また稼がなくちゃいけないじゃないですか。ということで、やらなくちゃいけない仕事の量が増えちゃいます。ミツマサくんは作業の効率がどんどん良くなって、今では夕方の時間ちょっとだけ畑に出るだけです。あとはどんどんなんでも作る能力が高まっているので、やれることがどんどん増えているんです。しかも、ミツマサくんはどんどん貯蓄がたまってます。でもやればやるほどお金は使わなくなってきた、お金を使って、いい機械を買っても、実はその機械だって、元は手でやってたわけだから、技術が高まれば高まるほど根源に向かうので、機械を超越してしまう。つまり、大掛かりな初期投資みたいなことは一切不要だと分かったと右腕のミツマサくんは教えてくれました。
 それより、あの次何を作ろうかなとぼんやり畑の中で考えている時間が一番気持ちいい、って言うんです。
 ミツマサくんがその一番気持ちいい時間を侵される危険性が今、ありますか?
 ないんです。畑を追い出されても問題ありません。どこにでも畑はあります。家を壊されても問題ありません。2万円使ってまたもう一軒建てるだけです。不作だったら、食べなきゃいいだけです。周りのおじいちゃんおばあちゃんたちとの信頼関係は不景気だろうが関係ありませんし、時間を経るたびに強く結びついていきます。
 我が社では、何よりも、お金ではなく、時間に着目してます。時間のお金化、そして、お金の時間化をいつも心がけます。そして、これがこの腐った資本主義の世界の中で、生き延びるための次の技術なのではないかと考えているんです。お金を手に入れるように時間を手に入れるんです。その時に重要なことが、生活の水準を下げろ、そして、自分の水準を上げろという我が社のモットーなわけです。
 ミツマサくんには時々、実験と称して、普通の生活をしてもらってます。家を借りて、スーパーで野菜を買って、あとはいつも通り生活してもらってます。年に一度、一ヶ月だけです。もちろん、経費は我が社の親会社であることりえに出してもらってます。彼は新高円寺徒歩1分のところで家賃が1万8000円の物件を2020年の今年も見つけてきて、そこで畑も何もないところで生活してくれてます。これは実験です。果たして、そのような都市生活で彼がいくらかかるのかを実験しているのです。食べれない時は食べないの精神で、食費は1万円でお釣りが来ました。あとは本当に何もお金がかからなかったのです。水道代電気代を入れても、3万円でした。もちろん彼自身の技術の水準だとするとということです。そこで計算をしてみましょう。

 月3万円×12ヶ月=36万円 これが多く見積もった彼の一年の生活費です。
 彼の貯蓄1248万円をこの生活費で割ってみましょう。

 1248÷36=34.6666

 つまり、彼はいつどうなっても、土を奪われたとしても、何もしなくても東京のど真ん中で34年以上生き延びることができます。我が社ではこうやって叩き出した数字を、名前の最後に入れて呼ぶことにしてます。ルイ16世みたいな感じで、ミツマサ34世と呼んでます。ミツマサは完全に自分の好きなようにやれる時間を34年分手に入れているということを表す称号です。我が社では誇り高き称号です。そして、もちろんミツマサ34世が我が社では一番の時間持ちです。半端ないんです。ミツマサ34世は。34年後のことも一切不安に思わないでいられる人がこの世でいますでしょうか。大富豪くらいでしょう。しかし、大富豪は経費にお金がかかりすぎてますので、やはりミツマサ34世に軍配が上がるような気がします。素晴らしいことだと思います。
 
 時は金なり、とはいいますが、まさに言い得て妙、いや、むしろ、かのミツマサ34世なら、

「お金は時間である」と断言することでしょう。

 というわけで、今日の長い講義を終わりたいと思います。皆さん、長い時間、我が社の話に付き合っていただき誠にありがとうございました。しかも、また昨日も4名の方が、入学金を払ってくれたようです。なんと650万円が集まりました。何かの詐欺に合っているような気がしますか? 確かに、お金は抜き取られているかもしれません。しかし、同時にあなたの時間は増えているはずなのです笑 怪しい話です。だから皆さんリラックスしつつも、足元はよく見ながらついてきてくださいね! それではここで休憩を入れましょう。また明日。

現在のお金の学校資金 650万円


 


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