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本年度♂蛹化第1号

 2023ラインの♂個体も1頭めが蛹化しました。小さいです。羽化後体長はおそらく50mm代でしょうか。我が家では珍しい中歯型のようです。まあ、今となっては仕方がないですね。

失敗原因

 思い返すと、昨年は市販菌糸ブロックを使用し、脱リグニンのための再発菌操作を繰り返すというオリジナルな手法のみ手を入れたコンサバティブな飼育に切り替えたのが仇になったかたちです。
 何故、そうしたのかと申しますと、夏場のオリジナル菌糸瓶製作の最大の懸念、害菌コンタミによる失敗リスクを回避せんとした判断だったからです。1本目の製作をしくると、それは即ちそのシーズンが終わったに等しいわけで、つまり、1本目投入用として用意すべく仕込んだオリジナル菌糸瓶ボトルの大半が培養途中で害菌汚染で使えないとなったらば、これはもう早期終了です。しかし、夏場はそのリスクが高く、実際に用意した内の半分以上の菌糸瓶培地の廃棄を余儀なくされた経験もあり、この大量失敗したときのリカバリーは、代替菌床の入手手配など、もう間に合わないということに成り兼ねません。リカバリー作業の手間だけではなく、その際の精神的なダメージも大きくてですね、かなり落ち込むのですよ。そういうことで、正攻法と言いますか、一般的な菌床ブロックをそのまま使用したわけですが、その結果もよろしくありませんでした。
 冬場はカビ菌が繁殖し難くなるので、失敗リスクは大幅に低減するのですが、夏場は高リスクとなり、雑菌どもは目には見えずに大気中に五万と居て、こいつらが無条件にボトルに侵入してくるのだから防ぎようが無い。こればかりはもうどうしようもないなあ、と諦めかけていたところの前投稿の無加水培地培養法の思いつきだったというわけです。

起死回生なるか

 やはり、実験精神無くしてKYOGOKU OAKWAGATA無し、と自分でも思いますし、オリジナル菌糸瓶の同時開発在りきのわたしのオオクワガタ飼育なわけです。凹み基調だった実験精神は、ワイルド・オオクワガタ共生酵母菌培養成功を切っ掛けにして復調し、疑問を感じたことからの独自の思いつきの大事さを再認識した次第です。
 今回の無加水培地培養の思いつきも正にそれでして、これが成功すると、飼育上でのその相乗的効果は大変大きいのですよ。

Labレベルと個人の実践レベルとでは手法も結果も異なる

 菌糸培養にせよ、酵母培養にせよ、研究室レベルの使用機材やその他の条件環境での結果と個人の生活環境での実践とでは、その内容も結果もまったく違うんですよね。例えば、Labではシャーレの寒天培地に培養みたいなのが基本ですよね。そんなもんね、一般家庭では無菌室なんて無いし、保管用の専用容器なんてものもないわけです。そんなちまちました確認の実験なんてすっ飛ばして、今すぐ使えるネタを一定量確保したいわけです。外の風もチリやホコリも入り放題、雑菌うじゃうじゃの環境でもそういった明確な一定の成果をコンスタントに上げる実践方法というのは独自の工夫が必要で、手法も結果も自ずと違ってくるものなのです。
 なので、Labレベルでの結果を基にした培養手法は基本的な情報としては有用ではありますが、それをそのまま個人が一般家屋で真似たところで成功率は低いということなんです。それよりも、実際に「使いものになる」品質レベルの菌糸瓶なりの製作法というのは、非常に意外な作法と言いますか、Labレベルでは決して推奨されないような滅茶苦茶な方法でこそ上手く行ったりするわけです(今回は正にこれです)。
 そういう意味でも、例えば、自作菌床では種菌の活性なんかが大事になってくる。それを追求していくうちに高害菌リスク環境でも他の菌に負けない強活性の種菌が見つかったりする。がしかし、Labレベルでは無菌環境の精度が高いからそういうファクターはあまり関係無かったりするわけです。つまり、重要視されないから、考慮に入らずに無視されていたりする。要するに盲点です。すると、研究者は「いやいや、そんなわけないから」と素人の結果を六に精査もせずに全否定されるわけですが、いや、素人の実践レベルを舐めるなよ、となる。
 そもそも、我ら人類史に於る菌類の利用というのは、漬物、酒醸造、味噌醸造、ヨーグルト、チーズなどなど、歴史的にも発酵食品の食用を目的とした民生技術がベースなわけです。謂わば、一般の人々の工夫と技術の結晶です。現代の科学的研究はそれあっての後付け検証と理論的解釈なわけです。なので、個人レベルでも新たな発見は可能な筈です。そのベースは自然に対する興味、観察力だと思うのです。

真似ではなく独自の視点と発想に拘るべし

 よく研究論文を盾に論を立てるインセクト業界人が居るんですが、研究論文の内容が全て正しいなんてことはないのです。実際、読んでみますと、文章が初歩的な文法的に誤っていておかしな表現をされているものだったり、要約力に乏しいだけでやたら長文になっているだけのものであったり、わたし的には、なんで研究論文の句読点ってコンマとピリオドなんだろうか? とか、素朴に疑問符が浮かんでしまうのですが、まあ、同分野の研究者による査読を経たもの以外は素人目にも怪しい内容のものは多いのです。なので、自分で独自に仮説を立てるなり、或いは、何らかの検証を得るために関係論文を調べて確認するとかなら意味があると思うのですが、ただ、学者による研究論文だから正しい筈と自身の論の盾に使おうというようなさもしくも盲目的な思い込みによる引用刷り込みは危険だとわたしは思います。わたしがこのnoteで参考資料として引用紹介しているものは、前者の意味でのものです。
 そういう、なんだか同業者や初心者にマウント取りたいだけの自己顕示欲満々なポジショニング論なんかよりもですね、間違っていてもよいから、独自の視点を持って観察し、仮説を立てて、その検証をする。これです。これの繰り返ししか無い。本当に、そのようなblogerやYouTuberって世の中広いとは言え、中々いらっしゃらないのでわたしはいつもとても残念な気分なのです。そういう方の発想ならば大いに刺激になるのですが。まあ、それで、自分だけは常にそう在りたいと思っての今ということです。何番煎じだかわからないくらいの只の他人の猿真似の繰り返しは害悪です。

目標も大事

 とは言え、目標設定も大事ではあります。
 ワイルドの羽化成虫でも70mm代後半くらいまでは実在すると思うのですよね。となると、我が家では残念ながらそれにも未到達ということになる。であれば、それはオリジナル菌床・菌糸瓶の餌材としての有意性は担保されていないということです。但し、餌材の完成度とは別の飼育管理上の環境ファクターも成虫の大型化には絡んでくるので、餌材だけの完成度だけで大型化が実現されるわけではないとも考えています。
 けれども、やはり、数値結果を出すのが最もわかりやすい。日本人は特に数値基準重視ですしね。ワイルドか、ブリード二世代目♂での親サイズ超え80mm upを出せれば、オリジナル菌糸の餌材としての一定の効果は認められるのではないかと考えていますし、個体も血統種として世に出しても良いレベルではないかと思っています。今のところ、目標はそんなところでしょうか。

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