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10ヶ月ものオリジナル菌床製作経過

 オリジナル菌床、菌糸瓶の製作は、ほぼわたしのライフワーク的になってますが、これ、難しいんです。難しいからチャレンジし続けられているという感じ。誰でもできる簡単なことだと力抜けちゃうし、第一、すぐに飽きてしまうでしょう? 事、腐朽菌の培養というのは、相手が生き物なので本当に先が読めないことが多くて、こちらの算段どおりにはならないのです。だから、おもしろいし、新たな発見があるし、挑戦し続けられているんだと思います。
 YouTuberの言うとおりの猿真似飼育をしていたっておもしろくもなんともないでしょう? 独自のアプローチによる発見があってこそ醍醐味じゃないですか? ただただ、大きくなるかならないかだけの宝くじ的な飼育をしていて、楽しいですか? まあ、楽しいというひとも居るのでしょうね。人それぞれなので、そういう個人を否定はまったくいたしませんが、わたし自身はそれではぜんぜんおもしろいとは思わない、ということなだけです。
 幼虫飼育も同じだと思うのですが、というか、本来は菌床製作の方が幼虫飼育からの派生作業なのですが……むしろ、今ではオオクワガタ飼育に於いての重要度はこちらの方が高い認識になっています。そう、この新しい餌材の開発なくして大型化は望めないとわたしは考えています。
 で、以前にレポートしたオリジナル菌床仕込み分の経過報告です。

アスペンチップ・ウスヒラタケ菌床

 アスペンの生オガ極太チップをコーヒー・グラインダーで少し砕いたものを特殊消毒液にて殺菌処理した後、ウスヒラタケを植菌し、常温環境にて静置拡大培養していたものです。前回の記事ではウスヒラタケ培養は成功も、同時にカビ菌も増殖という状態の報告でした。そして、そのまま静置していましたが、さて。

カビ菌と思われるコンタミが懸念

 どうでしょう? 見るからにヤバそうですよね。この菌床、使えると思われますか?
 ざっと観察しますと、ケース内に結露が確認できます。ということは……はい、ウスヒラタケ菌は活性しています。要するに、生オガ培地は尚、分解されている途中だということがこれだけで判断できます。このケースの容積は4 literなのですが、子実体の発芽の兆候もありませんので原基成長にまでは未だ至っていないようですから、栄養体添加無しの正味の生オガの分解にはウスヒラタケ菌の場合は悠に一年は掛かるということですね。
 懸念のコンタミ・カビ菌ですが、尚、黒ずんだ緑色のクレヨン状態で確認できるのですが、これは死滅残渣です。やはり、好気性のカビ菌っぽいので、培地内部までは増殖はできずにある程度の時間経過により死滅するようです。ケースの内壁に張り付いているので目立つのですが、実は、これは見掛け倒しでして、培地内部には殆ど増殖していないんですよね。つまり、ケースの内壁面は空気溜まりのスペースができるので中心部よりも通気性があり、そこに好気性の雑菌類は蔓延し易いということなのです。そして、このカビ菌ですが、アスペン・チップを使用しますと、毎回発生が確認できますので、我が家の環境由来ではなくてですね、やはり、どうやらチップ材か、生産工場か販売店舗由来のカビ菌なのだと思われます。
 目視の次は臭気確認。これ、白色腐朽菌培養実験では非常に大事です。蓋のフィルターに鼻を近づけて中の培地の匂いをチェックします……「!」、凄く甘い美味しそうな香りがします! これは思わず人間が培地を食べたくなってしまうほど(笑)。本当に、そんな美味しそうなスィーツの香りなのです(実際に食味してみれば甘みはあるとは思われます)。これはもう、グルコース + アルコール臭ですね。腐朽菌に木質セルロースが分解されて生成されたグルコース。幼虫の栄養、エネルギー源です。まあ、この匂いがしない菌糸培地を食べさせたってオオクワガタの幼虫はちっとも大きくはなりません。

更なる実験

培地内部
ウスヒラタケ菌自体の培養は問題ない

 ということで、培地を掘ってみました。このように内部の培地自体はウスヒラタケ菌に占有されており、まったく問題ないです。チップ材の腐朽深度——分解の程度はまだまだ浅かったです。ふわふわのスポンジケーキの腐朽深度までは程遠い。ということは、まだ長保ちさせられるということでもあります。でも、飼育実用としては使えなくもない腐朽感ではあります(昨年はもっと浅い状態の菌糸瓶で使用して好結果を得られた - ♂73mm羽化)。この培地はバラして、1500ccボトル2個に分けて再充填しました。
 オリジナル菌床製作は、充填する容器次第でも少し変化があるのですよね。温度、通気、湿度など、とにかく、植菌して後、管理する環境ファクターによって生育の変動幅が大きいのです。本当に菌という生き物は難しい。
 同じケースで拡大培養試験しているサンプルはもう2ケースありまして、順次別ボトルに再充填しようかと考えていますが、とりあえずは、今回再充填したボトルの経過を確認してからにしようかと思います。というのも、これらにまた新たな実験を追加で施したからです。当noteの読者ならばだいたいご想像どおりのことですが。

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