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実は見過ごしてはいけないH2O発露

 画像は、先日、産卵♀をリリースして静置中の2024 Lineage-1の産卵材ですが、今回はちょっと驚きの変化があり、シャッ! と対策を講じましました。

静置中の産卵済み材

 画像からお気付きの方も居られるかも知れませんが、蓋を外して不織布に交換しました。何故かと言いますと、結露の量が尋常じゃなかったからです。「何処から出るの、この水分?!」というくらいにケースの内面、蓋に水滴が一杯だったのです。

発露はサイン

 今回の産卵材はウスヒラタケの自製植菌廃ホダ木材ですので、水分量は高が知れていた筈なんです。というか、加水したわたしが一番よく知っているので何なんですが、植菌の下処理として10分かそこらだけ水没させただけ。しかも、L-size材です。これは加水した水分が蒸発しているんだなんて思いつきは浅はかな発想で、先ず、考えられるのは、ウスヒラタケ菌が活性しているのではないかということです。腐朽菌は呼吸によって酸素を消費し、炭素を分解して糖に変え、それと同時に水と二酸化炭素を排出します。つまり、このときに排出される水が腐朽菌による代謝水です。菌糸瓶での場合も同様ですが、ケース、ボトル内の結露は中の菌糸が生きている証拠であり、培地の分解状態の目安でもあるわけです。結露のまったく無い菌糸瓶の場合、腐朽菌の活性が弱いか、或いは、もう死滅していると読めます。例え、ボトルの皮膜は真っ白であってもです。
 がしかし、今回は腐朽菌による代謝水ではないとわたしは見ました。何故なら、あれを材に添加したからです……共生酵母培養液! そう、これはもう、あれの効果としか考えられません。酵母も腐朽菌と同様で、好気条件下では酸素を吸って糖を分解し、水と二酸化炭素を排出します。嫌気条件下では水の代わりにアルコールを生産します。そう、酵母の酵素分解の効果です。今回に関してはもう、これしか考えられません。
 まあ、それはそれで、おそらくは材中の腐朽菌が分解して溜め込まれていたグルコースが更に酵母によって酵素分解されている過程で水分が排出されているのだと考えられますから、それは孵化した幼虫の餌に成るので願ったり叶ったりなのですが、その結果の副産物である水分排出量があまりにも多量ですと、閾値を超えて今度は卵が腐ったりの弊害に転化しないとも限りません。蓋には3 x 6mmφほどの通気穴を空けていただけでしたので、「このままではサウナだな」と、急遽、蓋を取り外して不織布処置で外気との通気性確保で自然に湿度調整としたというわけです。いやあ、おそるべし酵素パワー。……なんか、洗濯用洗剤のCMのキャッチコピー文句みたいだな(笑)。

 ということで、オオクワガタ飼育に於いてはですね、飼育資材内のH2Oの発露は結構重要な指標ですよ、ということです。腐朽菌も酵母菌も、活性のサインは発露だということです。あ、幼虫もよく活動しているときは呼吸により発露します。

おまけ:
 YouTubeのKYOGOKU OAKWAGATAチャンネルの動画の方に珍しく視聴者からのコメントがありまして、その動画は羽化したオオクワガタ♀が産卵管を蛹室に擦り付けている動画で、——これは蛹化の際に排出した共生酵母菌をマイカンギアに格納し保菌し直している行動である——というわたしの自説の解説動画でしたが、コメント主さまの飼育中の羽化したニジイロクワガタの♀も同じ行動をしていたとのことでした。「でしょ? でしょう?」です(笑)。まあ、これは学術研究論文でも同様の観察結果を得られたとの報告がなされており、学識者がまったく同じ考察・解釈をされておりましたので、間違いないと思います。

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