加水不要な件
このボトル、2024ラインの初令幼虫を投入済みの1500ccウスヒラタケ菌糸瓶なのですが、通気穴はこのようにガムテープで目張りして塞いであります。
幼虫投入後に気づいたことで、前投稿に詳しく書きました、ボトル上部のスペースを無くすべく早速処置したのがコレでして……コーンフレークじゃないですよ。
思いつきで、常備してあったパルプ材(只の紙屑)を培地上面の空きスペースに蓋すれすれまで打ち込みまして、蓋をしてそのまま数日放置してみました。このパルプ材は非加水です。すると、もうこのように培地上面から菌糸が伸びてきて新たにパルプ材にまで蔓延してきています。で、「やっぱ、加水の必要ないわ」と。
これまで思考停止で、菌糸培養には定石通りに培地の加水が必要(きのこ栽培では約60%前後)として、オオクワガタ用には独自に幾分少なめ割合に設定し直した水分加減でそのメソッドに準じて従ってきたのですが、最も懸念されるのは害菌繁殖(主にカビ)による失敗なんですね。水分が多いとカビ易い。特に今の夏場は高失敗リスクです。この失敗でこれまでに捨ててきた培地の量たるや……なのですが、腐朽菌の分解代謝水のことをふと考えたのですよね。——仕込み時にベストだった培地の水分量は幼虫投入後には多めに維持される——という観察結果を得ていまして、それはつまり、培地が分解されて排出された水分が蒸発することなくそのまま培地内に溜まる傾向が高いことからだと思ったのです。で、今回から実施する課題の「蓋ピタピタまでスペースを培地で埋める」施工をどうするかを考えていたときの思いつきがこれで、「新たな培地には加水せずとも代謝水分で問題ないのではないか? 加水しなければ外菌繁殖も防げるのでは?」と考えた結果なのです。インスタント実験の結果はこのとおり大成功でした。
菌糸瓶の仕込み時点で蓋すれすれまで培地を充填してしまいますと、幼虫投入時に掘った分の培地を無駄に捨てなければいけなくなります。YouTuberなんかは平気で捨て去っておられますが、わたしは自分で苦労して作った菌糸瓶培地は少しでも捨てる気にはなれないのですよね。勿体無くてね。それで、ボトル仕込み時は普通の容量にしておいて、それでも幼虫投入後に上部にスペースが空いてしまったときにこのように非加水パルプなり生オガを充填しておけばよいではないかいな、と。これで、200cc cupの蓋ピタ充填のボトル再現ができる。
非加水培地菌糸培養実験
それでですね、そもそも論として、「加水の必要性、本当にある?」と考え直してみたのです。と言うのも、自然界ででもですね、白色腐朽材って、良好な状態の材ほど水分量って然程多くはないんですよね。「枯れ木」ってくらいのもので、カッサカサのガチ堅材にでもキノコは生えてます。特にカワラタケ系は傾向的に躊躇な気がします。無論、天然では雨ざらしなので長雨であったりすれば自然吸水されるし、直射日光照射、炎天下続きで乾燥したりの環境依存変化ではあるのですが、実際、大きなワイルド・オオクワガタ幼虫が入っていたヒラタケ腐朽材というのは水分過多な材ではないんですよね。クヌギ材の原木植菌もやってはみたのですが、これまで悉く失敗してきたのは、水分過多だったからなのでは? とも思えてきました。木材は調湿材としての側面もあります。加水せずとも自然に最低限度の水分は空気中から吸収されている筈で、不要な分は蒸発して大気に戻される。キノコ(腐朽菌)は多湿を好む傾向とは言われますが、実際は必ずしもそうではない。むしろ、他の湿潤環境を好むライバルたち(カビなど)とテリトリー争いは激化する。
上述の非加水パルプ材に問題無く(と言うよりも優秀に)菌糸が蔓延するのであるならば、通常の拡大培養で非加水生オガ使用でも結果は同じ筈。となれば、カビ菌繁殖による培養失敗率を大きく下げられることになる。オートクレープ処理が不可能な個人レベルのオリジナル菌糸瓶製作では、培地の加水と同時に滅菌操作をどう処理するかにわたしとしては大変苦慮してきた過去があります。滅菌とは言っても100%は不可能で、実際は消毒レベルでしかないので、時間経過と共にカビが発生してしまうのですが、要するに、目的の腐朽菌がカビの増殖に時間的に勝てるかどうかに掛かっていると言えるのですよね。正に競争です。それは直接的には腐朽菌の活性次第でもあり、けれどもその状態の読みは非常に困難なのです。問題は水分と温度。水があればカビ・リスクは必然的に高まるし気温が高ければ尚更。しかし、それをもう考慮する必要がないとなれば、この効果は大きい。
ということで、次回、非加水生オガに菌糸拡大培養を試してみることにします。これが上手くいけば、オリジナル菌糸瓶製作の手間が大きく省けるし、培養の成功率が上がり、その後の劣化抑制にも効果が高いと考えられる。また、オオクワガタ用としても理想的な水分量に保たれるのではないか。そうなれば、幾多の失敗の苦労が報われます。
同じ真菌類であっても野外の自然界ではキノコがカビに勝るのは、おそらく、水分量が少なくても増殖ができるからではないでしょうか? 紫外線の影響もあるかとは思いますが、これが野外でカビに中々お目に掛かれない原因ではないかと思うのです。キノコだらけの立ち枯れや倒木は多くとも、カビだらけのそんな材なんてのは山で見たことが無いのです。
やはり、前に習えだけの思考停止というのは弊害なのですよね。これまでの突破口もそうだったのですけれど、一見、しょーもなさげな独自の思いつきが大成功の呼び水になったことは多々。これもその予感です。
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