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紙が原料 —— オオクワガタ飼育用菌糸—— オリジナル種菌


100%パルプ培養ウスヒラタケ

 なんだかチャーハンの残飯を詰め込んだみたいに見えなくもないですが(笑)、これ、わたしがパルプ培養したオリジナル菌糸です。十分に菌を蔓延させ、養生させていたものを10/10に粉砕して容器に詰め直しました。これを種菌として新たに拡大培養するためです。
 チャーハンっぽく見える原因は、培地が100%パルプであるため、リグニンがほぼ分解されて白色化しているためです。生の原木おが屑を使用した培地ですと、ブナであってもここまで完全には白色化しません。そこが自然化で観察する腐朽原木と菌糸瓶との違いで、しかし、パルプ100%培地ですとこのように天然木と同様な白色化となりました。菌株は同じでも条件が異なるとこうも違うものかといつも不思議に思うと同時に、人工養殖である菌糸瓶培養と天然腐朽木との間のこのリグニン分解能の差異は何が原因なのか、今後も突き止めていきたいと思うところです。

菌のコンデションは常に一定ではない
 さて、この菌種はウスヒラタケで、わたしの観察ではちょうど今頃の我が家の管理部屋の室温——22℃前後——が子実体発芽の適温っぽいです。で、どうやら、オオクワガタは菌の状態か、或いは、培地の状態か、それらのいずれかの推移状態を察知できるらしく(pH?)、それまでは動きが緩慢だったのに、発芽と同時によく移動するようになり、培地をよく食べているんです。環境温度は一気に下がっているにも関わらず、です。これはおそらく、子実体を形成するために培地内の、その直下の組織に菌体の栄養素が凝縮するからではないかとわたしは考察しています。秋から冬季の採取時の天然腐朽材をよくよく観察しますと、それを裏付けるように、ヒラタケ腐朽材などでは、子実体が生えている部分の直下の材中から幼虫が出てくることが実に多いのです。それは、特に大きく育った個体に躊躇な気がします。そして、これにはもう一つ興味深い事実が含まれているのですが、また次の機会に。
 そして、やはり、菌体は子実体形成時が最も活性が高いので、培養にも適時かと思われます。この容器に充填して1日経過しただけですが、内壁に水滴が多数確認できますよね。これ、培地内の菌が排出している代謝水なんです。菌が生理的に呼吸している表れであり、つまり、これが菌の活性が高いと判断できる根拠なんです。菌が培養に適していない状態——ほぼ死に体状態——ですと、このような水滴の発生は観られず(約半日ほどの経過観察で判断可能かと思います)、培地が徐々に褐色化するか、青カビの発生が観られるようになります。要するに、白色腐朽菌によって培地とその周囲の空気環境が上手く占拠されていますと、カビ菌や他の微生物を寄せ付けず、白色腐朽菌が増殖可能な環境を占有維持できるため、順調に増殖が進むわけです。
 とは言っても、この白色腐朽菌の状態の見極めは中々難しく、そのキモは温度帯と湿度ということにはなりますが、経験を積んでも、観察眼をよく研ぎ澄まさないとタイミングを誤ってしまいますし、実際、それは多々あります。というのも、こちらの都合(というか、オオクワガタの菌糸瓶交換時期など)に腐朽菌の活性とが上手く合致することは少ないので、妥協的に培養開始すると失敗するということがあるからです。なので、できるだけ先読みして腐朽菌の活性本位で準備しておかないと上手くいかないのです。
 この容器は1.5リッター容器なのですが、上半分の容量が余っていますよね、それは、菌の活性状態を見計らって、この培地の上に重ねるように新しい培地(100%パルプ)を充填し、それを拡大培養とするためです。「え? そんな方法で菌を増やせるの?」と思われましたでしょうか。わたし独自の方法なのかもしれませんが、Yesです。この培養培地の増やし方ですが、それぞれ試した結果、幾つ異なった手法がありまして、それらにも一長一短があり、相手が環境変化に敏感な生物ということもあり、その結果もまた一様ではないんですよね。経験上、その都度、状態に適した最も培養失敗リスクの低い手法を選択するやり方にしています。例えば、種菌を新しい培地と一緒にして直接攪拌して混ぜ込むという方法もアリではあります。しかし、これは、水分量が適正であり、また、菌の活性が間違いない場合でないと失敗する確率が高いです。何故なら、培地の環境暴露時間が長く、空気中の雑菌の侵入リスクが非常に高い方法だからです(雑菌も一緒に混ぜ込むことになる)。他の菌や微生物は空気中に実は沢山存在しています。それらを完全にシャットアウトすることは、大学の研究室などの陰圧室などでさえ不可能に近いことです。それを一般家屋の室内でやるという困難さは常に伴います。
 がしかし、それでも、人のやらないことをやってこそ意味があるとわたしは考えているので、オリジナル菌糸瓶製作はまだ続行していくつもりです。実際、独自の実験からこれまでに多くの発見があったからです。

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