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2024 2nd. lineage

 今年の2系統目の産卵セット、親♀をリリースしました。
 こちら♀は結構早期にこのように深く産卵坑道を掘り始め、産座も確認できましたので、打ち止めとしていただきました。
 この材にも酵母培養液を添加しましたので、このとおり、カビは消滅して美材となっております。

産卵坑道が二箇所
産卵痕の状態からして良好と判断

 やはり、産卵材は昨年のように天然腐朽材か、植菌材の生きた腐朽菌材が安定的ですね。廃ホダ木を加水しただけというのは菌は死滅していますから、ちょっと心もとないところありますもんね。無論、わたしの場合は「バクテリア材」なる物の使用は言語道断。絶対に使用しませぬ。あれはオオクワガタではない糸状菌や納豆菌による分解材に適した別種用です。

バクテリア有益説の原点に歴史あり

 思索しますに、オオクワガタにバクテリアが有用であるとの発想の根源は、そもそもは昔のカブトムシ飼育が原点なんだろうと思うのですよね。謂わばオールドスクール飼育法なのです。キノコ栽培用菌糸瓶が転用されるようになってからも「バクテリア瓶」なるものが販売されたりしていたようで、今でもGoogle検索すると結構上位に出てきたりするのですが、そんなものはもうとっくに市場からは淘汰されていて在りませんよね。「本当にそんな菌糸瓶が成立するのか?」とわたしなんかは思うのですが、検索でヒットしたサイトのページにはご熱心に解説されている消し残しの説明文がネット上では公開されたままになっているので、それを一読してはみるのですが、誤字脱字は多いし、文語的誤りも多く、しかも、その内容については、わたしがアホなのか読解力に乏しいのか、残念ながらまったく理解ができませんでした。理科的に論理が破綻しているように思います。しかしながら、「菌糸瓶交換時は、旧食痕の新規瓶への移入が有益である」という、今に続くバクテリア有益説定番化のルーツ的発想の原点は、どうもこの辺りの飼育材を開発・販売されたりして業界内で大型化飼育方法を牽引されていた方々にあるのだと思われます。
 そういったインセクト業界のオールドファッションな皆様方の一義的目的は大型化飼育ですので、おそらくはですね、「大きくするにはタンパク質が圧倒的に足らないのでそれを何で補うか」という考え方が根本にあるのですよね。で、同じペット業界の水生生物の飼育なんかでも水生バクテリアの有用性なんかは昔から定番なので、そのような発想も取り入れつつ試行錯誤されていたのでしょう。しかしながら、幾らタンパク質でも高分子のままでは添加したところで幼虫には消化吸収できません。ですから、タンパク質を何に分解させるか? ということで、空気中でも、水中にも、地球平面上のほぼ何処にでも存在するバクテリアに活路を見出されたのでしょう。コイツなら、幾ら捕まえようが利用しようが全世界で均一無料ですからね。昆虫の始祖と考えられている海の昆虫——カニやエビなどの甲殻類の餌もバクテリアですしね。確かに、それを食べてタラバガニも伊勢海老もデカくなりますしね。それで、産卵材も同じ発想でマットに埋めてバクテリアに分解させるという手法が広がったものと思われます。が、本来、自然界ではそのような材にオオクワガタは産卵しません。何らかの原因で腐朽材が時系列的に劣化したと見られるような材に居ることはあっても。
 あと、味の素の使用ですかね。こちらは有料の市販品ですが。「グルタミン酸やイノシン酸に♀が反応する」というやつです。これは、キノコ(腐朽菌)が生合成する成分で、我々、人の有用性からすると旨味成分ですが、それからヒントを得ての直球的発想です。ひょっとすると、今もやってる人は居るのかも知れませんね。でも、不正解。何故なら、それらは子実体に含まれる成分だからです。

わたしの独自見解(自然観察と実験結果による)

 自然下でワイルド・オオクワガタ♀が産卵材を探索するとき、腐朽材が産卵に最適かどうか、その成否を判断するために受容体が感応するのは、グルコースとアルコール臭に対してだとわたしは考えています(キシロースの分解臭も含まれているかも知れません)。オオクワガタの♀が産卵に適正な状態に腐朽した材を見分ける(嗅ぎ分ける)とすれば、これら以外に腐朽材から発せられる芳香としては考えられないからです。わたしも山ではこの匂いを頼りに採集材を探して見つけていますのでね。それくらい腐朽材の芳香は強烈なのです。

放置すれば勝手にバクテリア分解

 ……なんですよ。別に特別なことをする必要など無くて。ここ、みなさん、お忘れか? と、わたしなんかは思うのですが、コンポストですよね。家の生ゴミだって堆肥になる。はい、これ、立派な自家製発酵マットっすよ。微生物による好気発酵分解。言い方を変えているだけのことで、これ、バクテリア発酵マットです。蓮舫議員なんかだったら「コンポストじゃダメなんですか?」って恐ろしい真顔で詰め寄ってきそうですが、わたしも言いますとも。
 なんかね、クワガタ業界の重鎮たちは、マットという名の褐色の湿気った粉の由来について、誤魔化しに小難しいことをいろいろと解説なさるわけですが、同じなんですって。しかしながら、これが無料転じて有償化できる、と。これは手を出しますよね、強欲な人たちは。本来、お金を払って引き取ってもらわないといけない生ゴミがお金に化けるんですから。だから、コバエの卵も混入してます。
 生ゴミ・コンポストがいけないなんてまったく言っていません。でも、失敗して嫌気発酵してしまうと腐敗。「腐り」です。分解が進んでどんどん川下に移動です。オオクワガタの幼虫の住処は川上領域なんです。だから、どうか、川上の清流に戻してやってくださいな。

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