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Mar 12, 23. 春のオオクワガタ採取行記

 今日は新たなトレッキング・ルート開発をメインに山活してきました。それと、わたしの山活はオオクワガタ採取も兼ねてはいるのですが、最近、材割り採取者が増えてきているようですし、下手にそのような人たちと交錯したエリアを探索すると、他採取者たちにわたしの足取り(踏み跡)をトラッキング(追跡)されてしまう懸念があります。

他採取者による割り跡(白枯れクロマツ材を執拗に割ってあった)

 今日も方々でタコ割り跡に遭遇しましたし……「だからー、カワラ材には入ってないってー」……なんて、つい、そんな現場で呟いてしまいますが、地道に探索し続けて見つけた大事なポイントをそんなタコ割りで荒らされたら堪ったものではありません。
 画像のように、割った破片を散乱させたまま、平気で割り跡を遺して去って行くような採取者は間違いなく本命を当てられていないことは明白です。それは、そんな割り跡をじっくりと観察するに及ばないことで、何故なら、採取ポイントをわざわざ他者に派手に盛大に教えているのと同じことだからです。
 試し割りするにしても、せめてもっと控えめに……などとわたしなんかは思うのですが、大半のクワガタ採取者による材割り跡というのはこのような大雑把なもの
で、見た目には大変コントラストがハッキリしたものですから、山中では遠目にも非常に目立つのです。これではハイカーやトレッカーたちからの心象も悪いですよね。……何故にそこにまで心及ばないのだろうか……。ゴミやマスクを山中に捨て去ってゆくハイカーも多数なので、まあ、どっちもどっちでしょうが、クワガタ採取者がそういう粗雑な人たちだと思われても、このような材割り跡を確認する限り仕方がないですよね。

他採取者による割り跡(何の確証も得ずに手当たり次第、ただ無闇に割っているだけ)

 わたしは自分の踏み跡は可能な限り遺さないように林内に足を踏み入れて行きます。其処は他者の踏み入ることが滅多に無いような僻地的エリアで、且つなるべく目に入り難いポイントであること、そして、そのようなポイントであっても余程の確度を得ない限り材には手を着けません。それくらい用心しないと、目敏い他採取者にポイントを荒らされてしまうんです。ほんと、楽して得をしたいやつらは目敏いのです!
 また、わたしとしては常に山活の新たな引き出しを増やしたい思いもあり、オオクワガタ採取についても新たな採取エリアを発掘したいという意識がありますので、探索域を拡げていかないといけません。でも、まあ、こうして記事にすることで同時にそういった採取方法やそれに至るKnow Howを教えているようなものではあるのですが……。

オルタナティヴを広げる——定番化(決めつけ)を避けたい

 これまでのワイルド・オオクワガタ材採取では、クヌギ、或いは、アベマキのヒラタケ、若しくはネンドタケ腐朽材から採取しています。というか、これ以外の組み合わせでは一度も出せていないんです。
 これには地域性が大きく関係しているのであろうことは間違いないと思うのですが、例えば、わたしの活動エリアである京都市内の里山、薪炭林、雑木林では、クヌギ、アベマキよりもむしろ圧倒的大多数を占める定番広葉樹はコナラです。しかし、コナラ腐朽材からはコクワガタは出ても、オオクワガタについては一頭たりともわたしに限っては採取実績がありません。というか、他者でも同様だとわたしは思っているのですが、これは何もわたしがコナラ材を敢えて避けてクヌギ、アベマキ腐朽材を偏執的に狙って採取しているわけではなくて、そもそも、オオクワガタが好むようなコナラ腐朽材というものが林内に殆ど見当たらないという事実があります。言い換えれば、ヒラタケやネンドタケ腐朽のコナラ材が在っても、クヌギやアベマキの場合のそれと同様に良好な腐朽状態になっているものは本当に稀、ということからなんです。

何故、ワイルド・オオクワガタにとってクヌギ、アベマキがトップ・プライオリティ樹種なのか? ——クヌギ林は人工林

 また、数在る広葉樹から日本のワイルド・オオクワガタが吸樹木としても産卵材としてもクヌギとアベマキに非常に高い嗜好性を持っていることは間違いありません。がしかし、京都市以外の他地域ではブナやニレ、ヤナギ、エノキ、シデ、サクラなどの広葉樹にも昔から採取実績が報告されています。
 また、コナラの廃シイタケ榾木を産卵材として使用して人工産卵させる手法はオオクワガタ・ブリード界では定番ですが、自然下ではシイタケ腐朽材にもシイタケ栽培用榾木にも産卵するなどということは報告されていません(コクワガタについては有り)。しかし、これでも問題なく産卵します。つまり、基本的には広葉樹ならば、そして加えて、その腐朽菌株とその腐朽深度が適度でありさえすれば、オオクワガタの産卵材としてはまったく問題ない筈なんですよね。
 しかし、それでも、クヌギ、アベマキが存在する環境下では何を差し置いてもオオクワガタはそれらの樹種を嗜好するんです。しかし、これらの樹種は日本では古来より長年に渡り人工的に植林され続けてきたものであり、学術的な専門家の調べによりますと、そもそも、クヌギ、アベマキの天然林は日本には存在(現存)しないと言われています。それなのに、不思議だと思いませんか? そこには一体、何が関係しているのでしょうか? わたしはこれが知りたいですし、独自に観察研究もしています。今、これについてわたしが最も有力な資質と考えているのは、その芳香です。

やはり鉄板の組み合わせ

 そんなこんなで、今日は樹相としては特にオオバヤシャブシの多いエリアを流してみました。おそらく、クヌギと同じくオオバヤシャブシの林も或る意図を持った上での人工植林エリア(砂防、窒素固定、天然染料の原材料)で、そういうポイントにはノコギリクワガタとミヤマクワガタの生息数が多い気がしてますが、これら二種の生態についてはわたしはほぼ門外漢ですのでまったく詳しくありません。
 まあ、特に目新しい発見は無かった山行きだったのですが、上り下りの繰り返しで体力を使い、結構疲れたので帰り道ではのんびりと歩いていました。ところが、その途中で気になる倒木を見つけてしまいまして、近づいて確かめてみると良い塩梅の白色腐朽菌材でしたので、試しに、目星をつけたポイント目掛けてハンドアックスを一打ち入れたら、即、硬めの辺材の中にオオクワガタ幼虫に特有の綺麗な色の食痕が在る部分が出ました。その太さからして、オオクワガタ2令が濃厚。
 「ありゃ、当たった」……「では」と、続けて2発目、そして、3発目で幼虫の姿が露わに……もしも、ハズレの場合はコクワガタ3令ですが……。これはわたしの採取最速記録だったかもしれません。そこに居たのは、どう見てもワイルド・オオクワガタ♂の越冬2令幼虫です。3発目のハンドアックスの刃先の入ったポイントが幼虫の居処キワキワ過ぎたので、危うく潰してしまうところでしたが間一髪、セーフでした。

京都市産ワイルド・オオクワガタ♂2令幼虫

 で、この材が、やはりクヌギのネンドタケ腐朽材だった……という。いつものド定番、ド鉄板の組み合わせ事例だったというオチだったわけでして……。

将来有望個体

計測結果 頭幅: 6mm+、体重: 1.2g

 帰宅後、計測しますと、頭幅6mm強 - 体重1.2gでした(生体を傷つける可能性がありますので、ノギスをヘッドカプセルに密着させての計測はしていません)。2令のヘッドカプセルが6mm超えは、かなり優秀なワイルド♂個体です(3令加齢時の頭幅予測値:12mm強)。京都市産個体は、これまでのわたしの採取データのアベレージとして、♂・♀共に頭幅の大きな個体はあまり出ない傾向なんです。なので、もし、♂3令で12mmを超えたら、これまで見慣れた個体よりもかなり大きな印象がすると思います。現時点で2令ということは、2024年羽化予定の2年化個体ということになるので、即ち、ワイルドでも菌糸をたっぷり今年1年食べさせることで大型化が期待できる優良個体となります(わたしが3令幼虫よりも初令と2令個体の採取を目指すのはこれが理由です)。体重は通常の2令のアベレージ値ですが、この頭幅は3令加齢後の期待を膨らまさせてくれるに充分。
 本日よりウスヒラタケ菌糸瓶飼育ですが、順調に成長すれば本年の5 - 6月頃に脱皮して3令化すると予測されます(京都市産初令、2令個体の場合、例年その頃に順次脱皮加齢しています)。

ワイルド・オオクワガタは良質腐朽材には産卵リピートする

 今日はもう時間が遅かったので、この一頭のみの採取で切り上げて山を下りてきましたが、同腹兄弟が同材にまだ入っているかどうかは、この個体が入っていた材の部位からして微妙な感じでした。というのも、この採取個体が入っていた部位が、黒枯れ部と隣り合わせに白枯れしていた幅約40mmくらいの帯状の僅かな良質腐朽部で、黒枯れ部は雑虫の持ち込みによるコンタミ細菌類の酵素分解による腐朽部と思われ、おそらくは兄弟が入っていたとしても既に雑虫どもに殺られている確率が高いような状況だったんですよね。そんな部材からして、あのままでは採取個体も3令に成長できていなかったと思われます。なので、自画自賛にはなりますが、今回は劣悪腐朽部分からの救出的な、まあ、そんな良い採取事例だったと思います。
 また、未腐朽部のボリュームがまだ多く残る大きな倒木材でしたので、白色腐朽菌の支配状態が上手く進行さえすれば、十中八九、今年、また別の♀個体が産卵に来ると見ました。なので、定点観察対象の、いつもの「見置き材」としようと思っています。これは知る人ぞ知るワイルド・オオクワガタ・アルアルなのです。

 今年も採取実績確定。これで6年連続京都市産採取達成しました。

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