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ワイルド・オオクワガタ共生酵母菌(京極株)実用試験経過

 培養も進み、次の段階に進んでおります。様々な実用試験段階です。
 と言っても、実施は簡単。飼育中のオオクワガタが接する何かしらに添加するだけのことですが。

  • 成虫の餌に添加
     考えてみれば、自然下で樹液浸出している樹の患部には泡立ちがよく見られるのですが、あれは酵母菌によるものです。酵母は発酵の際によく泡立つのが特徴なのです。つまり、あれは樹液が天然の酵母菌によって自然発酵している証拠です。実際、最近の研究報告では、樹液場が昆虫たちの酵母菌の交換収集場所になっており、ネブトクワガタが多種の酵母菌の保有者であり媒介者でもある可能性があるとのことです。*
     がしかし、樹液場に居る天然酵母菌とオオクワガタ幼虫が育つ白色腐朽材を住処とする天然酵母菌とでは、同じ酵母菌でもまた種類が違うと言われています(酵母菌は種類が異なれば分解酵素の働きや生成物質も違う)。これはあくまでわたしの観察に基づいた考察ですが、在来種の一部のカミキリムシ、ヤマトタマムシ、オオゴキブリ、シロアリについてはオオクワガタと共通種の共生酵母菌を保持していると考えられます。
     それとはまた別の観点では、実は、酵母培養によって得られる酵素液は糖が発酵したものですので、つまりはこれはですね、我々、人間的には、美味い・不味いの食味はさて置いて、立派な発酵酒の一種であり、昆虫からすれば、単純に成虫の餌になるんです。
     あとは、♀成虫の場合は、酵素液に含まれる酵母菌自体を拾ってマイカンギア(菌嚢)に補完される筈です。ですので、産卵前の種親候補個体には特に有効かと思われます。

  • 産卵材に添加
     今回、試してみて、もっとも効果覿面だったのがこれでした。カビ消滅に有効性を確認。そして、引き続き産卵材静置中は高湿度維持にも関わらず、産卵後の♀成虫を取り出した後でもカビの再発生が見られません。
     もう一つ、こちらの方が大事な案件ですが、白色腐朽菌が木質であるオガ(炭素)を分解して生成したグルコースを酵母菌が更に酵素分解することで、幼虫に必要な栄養が供給される筈です。
     また、バクテリアの侵入を阻止できる効果もある筈で、実際、現状を観察しますと、産卵材の辺材は木肌色を保っており、バクテリア材のような分解による褐色化傾向が見られません。

  • 菌糸瓶に添加
     産卵材の場合と同様で、添加後は経過を観察するだけです。酵母は呼吸によって炭素と水を放出するか、アルコール発酵を行い炭素とアルコールを生成します。ですので、菌糸瓶の培地全体に酵母菌が蔓延すれば、その確認は簡単。匂いを嗅げば確認できます。白色腐朽菌による分解の過程でセルロースから単離されたキシロースもまた酵母菌が分解するんですね。これが幼虫の消化器官が摂り込める栄養源になります。
     酵母菌は細胞分裂で増殖するのではなく、出芽細胞といって、親酵母(母酵母)から小さい芽が出て、それが大きくなって新たに別細胞(娘酵母)になります。出芽増殖を繰り返した古い親酵母から順に自然に死滅してゆきますが、この酵母の死体が幼虫にとっては重要なタンパク源になっているのではないかとわたしは考えています。また、ビタミンなどの他の有用栄養素含有も酵母菌自体の細胞壁には多いのです。

 これら酵母に関連した専門的資料は、この記事テーマのマガジン内に出典元資料として参照できるようにURL添付してありますので、詳しくはそちらをご参照くだされ。

酵母培養液を添加した産卵材
更に添加するためと産卵確認のために辺材の一部を破壊した状態
木肌色を維持

最後の確信犯

「自然下の腐朽菌材中に居て、菌糸瓶の中には居ないやつはどいつだ?」——
それはもう、こいつしか居ないわけですよ。ということで、オオクワガタが大きく育つ要素で最も重要なのは、わたし的に今は、「これしかない!」との考えに至っています。つまり、共生酵母菌の存在です。おそらく、鍵は菌糸瓶の培地中に共生酵母菌が蔓延しているか否か。その見極めは発酵です。他のタンパク質の添加ではオオクワガタは大きくはならない(食べても消化吸収できない)。
 注意喚起しておきますが、酵母菌なら他種でも何でもいいってわけではないですよ。それなら、それこそ、パン作りに必須のイースト菌でもビール酵母でも日本酒の酵母でも良いわけで。

*Subject 1に記述の出典元参考

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