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新スタジアム、こけら落としの日

雪ふれば 冬ごもりせる 草も木も
春に知られぬ 花ぞ咲きける 
―紀貫之

 まだ草も木々も冬ごもりをしている季節だけど、山には春でも見られないような真っ白な花が咲いていた。亀岡駅を降りると、目の前に見えるサンガスタジアムbyKYOCERAの背景に。
 2020年2月9日。前夜から降った雪が京都府南部でも薄っすらと積もり、寒さがとても厳しかった日。サンガスタジアムbyKYOCERAこけら落としマッチの日のことを書き留めておきたい。

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サンガスタジアムbyKYOCERAと冠雪した牛松山

大混雑!嵯峨野線亀岡方面行き

 この日は、10時代の快速電車に乗車。京都駅ではなく途中の駅から乗車したので、ホームに到着した車内は既にびっしり満員。周囲の乗客と密着するほどの混み具合だった。混雑時の新快速くらいの混み方…だろうか。普段は嵯峨嵐山駅でどっさり降りて車内は空くのだが、この日は亀岡まで満員満杯のまま(そしてほとんど亀岡で降りた)。キックオフ時間の3時間半前でこの状態なのは、おそらく今回だけだろうが、「行き」でこの混雑は予想外だった。そして人混みに流されながら亀岡駅を出て目に飛び込んできたのが、冒頭の風景だった。

ネーミングライツに敬意を

 スタジアムの外観について、以前書いた時(1月)から変わったのは、「サンガスタジアム by KYOCERA」という名称の表示が付いたこと。嵯峨野線の線路側(南)と、観客が必ず通る北側に看板が設置された。この日ネーミングライツの除幕式で(株)京セラの山口会長が「プロサッカーのチーム名を冠するスタジアムは日本で唯一」とおっしゃっていたが、1億×20年間という高額&長期の契約を結びながらも、自社名でなくクラブ名(まぁ子会社だが)を付けてくれたことに心から感謝。今後たとえばオリンピックの日本代表の国際試合でも「サンガスタジアム」と伝えられるなんて。だからスポンサーへの敬意を込めてTwitterとかでもなるべくサンガスタジアムbyKYOCERAと書くようにしている。「サンガス」まで打つと変換されるように辞書登録推奨。略して言う場合も「サンガスタ」と言おうじゃないか。京スタでもましてや亀スタでもない。それが名付け親への敬意ってものだ。

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北側のSANGA STADIUM by KYOCERAの看板

列の作り方は要改善

 キックオフ3時間半前の段階で、スタジアムの周囲はどこもかしこも行列ができていた。しかもその行列が何の行列だかよくわからないという混沌さ。今回は指定席だったので特に並ぶ必要もなかったが、ざっと見るとゴール裏&バック自由席の列、アウェイ席の列、グッズの列、ICOCAブースの列…大きくこれくらいは列を作っていただろうか。図面を見た時から敷地の余白が狭いとは感じていたものの、列の作らせ方は根本的な改善が必要かと思う。そもそも駅から徒歩3分という好立地なのに、さらに駅から徒歩5分みたいな場所まで列を伸ばすのはせっかくのメリットが台無し。広場の運用方法を改めるなり、使う階段とか動線ルートを見直すなりの改善は必要だ。この日も時折吹雪いたが、雨の日とかになるとさらに大変だぞ。

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既に入場時間を過ぎてもまだこの行列(スタジアム外部コンコースより)

あってよかったフードコート

 この日は時折雪雲が流れ込むような気象で、雪が強めに降り始めたので、そそくさと1階フードコートに退避。暖房が入ってぬっくぬく。夏場は冷房空間となって快適に違いない。西京極は豪雨の時などは隣のスポーツ会館に逃げ込むしかなかったけど、こういう空間があってよかった。フードコートの店舗は「亀岡牛丼の店」「お弁当の店」だけだったのが「うどんの店」「米粉ベーカリーとジュース屋」「パンとか和菓子の店」あたりが増え、さらにこの日限定で「フルーツサンドの店」が出店していた。あとで聞けばなかなかレアなお店だったようで…。フードコートのお店についてはクラブ側を通じて出店しているスタジアムグルメとは別系統なので、そこはスタジアム側から積極的に情報を発信してほしいところ。このフードコートはかなり快適なので、試合開催日限定でいろいろと出してほしいぞ。フルーツサンド含め。

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吹雪の時間帯があってもフードコートに逃げ込めばいいじゃない

球技を観るための最高の舞台

 約束の時間だ。11時半。指定席だったので何の行列もストレスもなく入場。まだ軽い降雪が続いていたが、前の方まで行っても座席は濡れていなかった。スタジアム内に入るのはこれで3回目になるが、ピッチにラインが引かれ、ゴールが設置され、観客が入ってくると、そこは「箱」から「舞台」へと変化してていた。今さら陸上競技場と比較するつもりはないが、持論として「陸上競技場でサッカーを観るのは、体育館でオーケストラを観るようなもの」と思っている。オーケストラはコンサートホールで観る方が絶対にいい。スポーツもその競技に適した舞台が必要だ、と。サンガスタジアムbyKYOCERAは、どの席からも本当に見やすい。死角はなく、同サイド逆側のコーナー付近までちゃんと見えるように設計されている。規模的にコンパクトなので、遠すぎる席もない。個人的には最前列付近はあまり見やすいとは思えないが、近い距離感を求める人には魅力だろう。ここは、球技を観るための最高の舞台だ。

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青空に雪がちらついているが、前の方でも全然濡れない

分散するスタジアムグルメ

 京都サンガの運営では、席に着いてから外に出ることも可能。再入場ゲートでスタンプチェック、内部コンコースに入る時にはその都度チケットを表示する。スタジアムグルメは主に外部コンコースに配置されているのだが、メイン側(西)に2、アウェイ側(南)に1、バック側(東)に5、ホーム側(北)に3、場外に1…という感じで分散。なので、岐阜長良川の屋台村や岡山のファジフーズのようにズラッと並んでいる屋台を一通り見てから選ぶというやり方は無理がある。どこに何があるか、事前にわかりやすく伝える方法はあると思う。それぞれの店の列の作り方もこなれてないように見受けられたので要改善ポイント。内部コンコースにも飲食ブースがあり、ハーフタイムに外に出ずに気軽に買いに行けるというメリットがあるものの、後半開始後もぞろぞろと人が通路を歩き、試合に集中できないという面もあった(メインスタンドの場合)。試合に集中したい人はやはり3階席(2層目)に上がれ…と。

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バックスタンド側の外部コンコース(まだそんなに混んでない時間)

亀岡は海外

「とても美しくファンタスティック。プレミアリーグみたい」(ピーター・ウタカ)。プレーした選手たちだけでなく、観客席でも「すげぇ!プレミアみたい」という会話はちょくちょく耳にした。確かに、見学会や内覧会の時に見た印象以上に、観客が入るとヨーロッパの中規模スタジアムの雰囲気に近いと思えた。ネット上では「ホームじゃないみたい」「何かアウェイに思える」というような感想もあった。つまり(西京極に慣れた身には)違和感を覚えるほどの非日常感があったということ。スタジアムの中に入ると、外部の景色がほとんど見えなくなるため、一気に隔絶された世界になるのだ。別世界だ。もう亀岡は海外といってもいい。電車で20分で行けるイングランドだ。
 思えば京都に本格的に専用スタジアム構想が持ち上がってから17年の月日が経った。決して順調ではなかった。紆余曲折だらけだった。ものすごく遠回りした。だからこそこんな最新の素晴らしいスタジアムに出会えたのかもしれない。14時過ぎ、松屋一主審が吹いたキックオフのホイッスルがスタジアムに鳴り響く。万感の思いが、こみ上げた。

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記念すべきサンガスタジアムbyKYOCERAのキックオフの瞬間

声援◎、音響設備△

 ゲームが始まっても、どこか夢の中にいるようで、心が浮足立ったままだった。普段ならすぐに両軍の布陣を確認したりするが、そんなことも忘れ、ゲームの内容があまり頭に入ってこない。背番号を確認するために双眼鏡も必要なかった。また、ピッチと距離が近いため、西京極よりもずいぶんとスピード感があるように感じた。ダイナミックなプレーが出ると、迫力が違う。だから観客席も沸きやすい。沸いた声が反響して、それも舞台装置にように雰囲気を作っていく…。両軍のゴール裏からのチャントもよく響いていた。札幌ドームや神戸のノエビアスタジアムのような、跳ね返るような特徴的な響き方ではなく、ナチュラルな響き方だったと思う。ピッチ上での聞こえ方はまた違うようで、「声がずっと舞っているので、近くの選手同士でもコミュニケーションをとるのは難しい環境」(ピーター・ウタカ)、「観客席とピッチが近いというところで、コミュニケーションのところが難しかった」(清水圭介)らしい。
 一方でメインスタンド(コンコース寄り)では得点や選手交代のアナウンスが聞き取りにくかった。コンコース側にスピーカーがなく、別の場所からのアナウンスを漏れ聞いているような感じ。同様に試合前のスタジアムライブも、(ライブ用の)スピーカーは立てていたものの音響が悪かった印象。このスタジアムならばガンバがパナスタやっているようなピッチを使った光と音の演出なども可能なはずだが、そうした場合でも迫力のある音は不可欠になってくる。

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ぜひ現地で感じてほしい、プロのダイナミックなスピード感!

こけら落としを締めくくったエール

 試合内容については省略。とにかくチャンスを迎えると沸き立つように盛り上がるスタジアムなので、たくさんチャンスを作れるチームになればいいな、と。いいプレーや果敢なチャレンジは観客にダイレクトに伝わるし、観客の声援も選手に伝わりやすい。伝わる熱量が違うのだ、お互いに。とにかくサッカーって楽しいと心から思える場所。ゲームは2-3でセレッソ大阪が勝利したが、試合終了後、セレッソのゴール裏から「京都サンガ!」コールが沸き起こる。そこに掲げられた横断幕のメッセージに気づいた人はみんな思わず拍手した。京都の選手たちがコールに応えてセレッソゴール裏に挨拶をし、今後は京都ゴール裏から「セレッソ大阪!」コールが送られる。サンガスタジアムbyKYOCERAのこけら落としを締めくくったのは、両軍のエール交換だった。やっぱりサッカーって、素晴らしい。

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「祝 素晴らしいスタジアムと共に次はJ1で会いましょう!♡」 ありがとう!セレッソサポーター

懸念された帰路の混雑は?

 席を立ったのは選手がピッチから引き上げてから。トイレを済ませてスタジアム外へ。しかし時既に内部コンコースの出入口から人の大渋滞が発生中だった。人混みは外部コンコース~階段下まで続く。構造上メインの階段が2本しかないのでどうしてもここがボトルネックになる。下に降りるまで5分くらい要しただろうか。ここから一旦大河ドラマ館とかで時間を潰すという選択肢もあったのだが、あえてピーク時の混雑を体験しようとそのまま駅に向かう。今度は駅北口の100メートル手前くらいから渋滞中。10~15分くらいかかったとは思うが、少しずつではあるが動いていたのでそれほどストレスでもなかった。駅の階段を1本しか使ってなかったため、ここでもボトルネックができていたのだ。おそらくあえて駅への流入を制限するためもう1本の階段を封鎖したのだろう。駅に入るとICOCA用の大きな広い改札も用意されていて、改札~ホームまでは至ってスムーズ。ちょうど8両編成の快速が止まっていたため、すぐに乗車できた。乗車率も行きより少なく、ちょい混み程度。JR西日本の輸送力、さすがだ。乗客の捌き方もかなり手慣れていたし、駅員はサンガのユニフォーム着てくれていたし、JR西日本、やるじゃないか。この日の動員は1万7978人。リーグ戦はここまで多くはないはずなので、懸念される帰路の混雑も問題なく捌けそうだと感じた。JR西日本が本気出せば。

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駅北口まで続く人の列。3月 1日のV・ファーレン長崎戦からは右手の広場が「かめおかecoマルシェ」としてオープンする予定。

 2月9日、気温6.7℃。サンガスタジアム by KYOCERAのこけら落としマッチの体験記は以上でござる。朝の雪は山々に白い花を咲かせ、新しいスタジアムには、観客席に紫とピンクの花が咲いた。この素晴らしい箱に、これからどんな夢が詰め込まれていくのだろうか。とりあえずはこのスタジアムでまたサッカーが観たい。次の試合がもう待ち遠しい!

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新しい道を模索中。
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