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J2視覚化計画2024〈第28節〉

#J2視覚化計画2024

首位清水と2位横浜FCが勝ちきった一方で、3位長崎は山口に敗れて足踏み。その差は8まで開いた。プレーオフ争い勢も山口以外は勝点を伸ばせず、千葉・山形も猛追。残留争いでは水戸と熊本が勝って中位後方まで浮上。勝点が試合数×1を下回る栃木、鹿児島は苦しくなった。群馬は風前の灯。


ラスト10節。昇格争いを読む

◎特別寄稿◎Text by 丹生賀 育太郎

J2は28節を終え、残りは10節となった。今季から試合数が減ったが、これまでのレギュレーションならば、残り10節は32節終了時点と同じ。まずは過去5年間の「残り10節(=32節終了時)」の状況を確認してみよう。

赤=自動昇格/ピンク=プレーオフ(※2021、2022はPOなしのため3~6位を紫)

上図は32節終了時点でのJ2上位(概ね9~10チーム)の勝点状況を「自動昇格ライン(=2位)」を基準にしてマッピングしたものである。様々な情報が読み解けるが、昨年の町田がいかに独走していたのか、視覚的に読み解けるはずだ。

そして重要なのは、 過去5シーズンにおいて残り10試合の時点で1位、2位にいたチームは9/10が自動昇格している という事実である。唯一の逆転自動昇格例は2019の横浜FCだが、この時点で2位山形との勝点差は1だった。つまりシーズンの4分の3以上を消化して2位以内に位置にいるチームが残り10試合で崩れてしまう例はほとんどないということ。試合数が減った今季はまだ4分の3を消化していないが、やはり残り10試合で崩れることは考えにくい。

現状、上位2チームが抜け出し、3位と勝点8差…というのはちょうど2021年と似た形である。奇しくも3位は同じく長崎。このシーズンはプレーオフがなかったため参考にはしずらいが、傾向としては2021シーズンに近い「残り10試合」となりそうだ。

上図データは、今季の清水&横浜FCが圧倒的優位に立ったことを裏付けている。3強の一角が崩れ、2位から8差付けられた長崎には苦しい数字となっているが、むしろ残り10試合で再び一度調子を取り戻し、上り調子に入ったところでプレーオフに臨むくらいの気持ちに切り替えた方がよいのかもしれない。自動昇格を諦めろ、というのではない。下手に2位以上にこだわって齟齬を生じさせるより、それくらいの開き直った方が状況は好転するのではないか…と思うのである。

一方プレーオフはどうか。残り10試合の時点でプレーオフ進出ライン(=6位)との差がありながらも、6位以上に入った例は2019年の甲府と徳島が6位と4差2020年の磐田が6位と5差(※PO未開催年)、2023年の千葉が6位と4差あたりである。昨シーズン驚異の猛追でプレーオフ入りした千葉でさえ、残り10試合の段階で順位こそ11位ながら、6位とは4差まで詰めていたのである。セオリーとして逆転可能勝点差は残り試合数×1(つまり残り10試合ならば勝点10)と言われているが、近年はそこまでの逆転劇はない。現在6位と勝点5差の千葉、現状の勢いを考えれば勝点6差の山形あたりまではまだ可能性あるかもしれない。それより下はかなり望みは薄いだろう。

逆にこの時点でプレーオフ圏内にいながら、プレーオフを逃した例は割と目に付く。毎年2チームくらいが残り10節の成績で脱落していることを見れば、最も気を引き締める必要があるのは、現在プレーオフ圏内にいる4チームといえる。プレーオフ圏内をキープするのは難しいが、転落する時は早いのだ。

残留争いについては、近年のデータ比較が難しいためグラフ化していない。というのも、降格なしシーズンがあったり、降格数4があったりとまちまちで、その上今季は初めての自動降格3レギュレーションとなっている。
数字の上では残り試合数10で奪えるMAX勝点は30。しかし、それは到底無理な話である。残留を争うチームは残り試合数×1(=勝点10)をベースに、残り10試合でそれをいくつ上回れるか、下回ってしまうかで運命が決せられることになる。現時点で17差が付いている群馬はほぼ絶望的で、降格枠は実質残り2つ。5~6チームが生き残りを賭けるが、今節の結果で栃木、鹿児島の旗色は悪い。加えて、秋田と鹿児島のクラブライセンスの行方(来季J1は不適合としても、来季J2ならば認められるのかどうか)も気になるところだ。

丹生賀 育太郎(にぶが・そだてたろう)
1979年和歌山県生まれ。気まぐれ文筆家。大学時代は朝ドラ社会学を専攻。座右の銘は「J2でしか見えぬものがある。J2でしか育たぬ者がいる」


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