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広島の新スタジアム予定地へ立ち寄った話

 先日広島に行く用事があり、ついでだから新スタジアムの建設予定地・中央公園広場に寄ってみようかと新幹線の中でふと思い立った。ただし、秋の日は釣瓶落とし。広島への到着時間には夜になっている。

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新白島駅から南へ歩く

 広島駅で新幹線から在来線(山陽本線)に乗り換え、1駅先の新白島へ。JRをダイレクトに使うアプローチなら、このルートになるのかな…と。新白島駅は山陽地方の市街地部にありがちな高架駅。いわゆる駅舎はなくて、改札と高架が一体化している構造のため、橋の上から地上に降りるような感じ。ここから先は大きな道路の歩道をひたすら南に歩く。途中の交差点では一度地下道に潜らなければならない。駅から大きな道路を真っ直ぐに20分ほど歩く感覚は、岡山駅→シティライトスタジアムに近い。そういえばこの道路は国道54号、岡山の方は国道53号だ。

広島城が見たかったから

 このルートを選んだのは、途中で見たい風景があったから。そう、毛利輝元が築いた広島城。この城の天守は本丸の北西隅にそびえており、ちょうど中央公園の向かいの北側、ということになる。てことは、だ。スタジアムに行くついでに広島城の天守を見ようと思えば、北からアプローチすると「ついで」に見られるということになる。これだけでも20分歩く価値がある。(広島城の中に入るならば南からアプローチが必要)。なお、天守が見たいだけの場合、新白島駅を出る時道路の左側に出ておくことをおすすめする。

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広島城は文禄2(1593)年までに毛利輝元が築城した近世城郭。毛利氏の本拠地だった郡山城(サンフレの練習場のあるところ)から砂州だらけの河口に移したのは、秀吉の大坂城と密接な関係があり、防御よりも経済活動を優先させる上で都市計画のシンボルとする役割も強かった。輝元に築城を指南したとされているのが黒田官兵衛。ちなみに官兵衛はほぼ同じ時期に砂州地だった博多を町割りをしている。なので大坂-広島-福岡はざっくりと親戚のような町なのである。ゆえに広島城は豊臣系の城。残念ながら原爆により吹き飛んだが、復興天守の外観はおおむね旧天守通り。「豊臣系」の黒が勝っている意匠が美しい。もうひとつ付け加えると、天守とは四隅の櫓から1つだけ変形したものであることが、広島城を見ればよくわかる(北西の隅櫓=天守)。

建設予定地・中央公園

 中央公園は広島城の道向かい。夜だったので正直全貌はわからなかったが、土地としては相当広い印象を受けた。ただし、きっちり南北で設計すると規模に対してやや寸足らずになるらしい。予定地の北側西寄りにはいろいろと懸念材料でもある基町団地がある。この件は触れないでおこう。

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噴水から先あたりが建設予定地の広場

 いずれにしろここが2024年の開業を目指す3万人規模の専用スタジアムの建設予定地だ。広島の都市規模からすれば3万人のキャパシティは適切と思うが、「寸足らず」で南北ゴール裏のスタンド幅が十分にとれない点を設計段階でどう処理していくのかは注目ポイント。ちなみに京都府(サンガスタジアム)の場合、基本設計の段階では円形1層型だったが、実施設計では現在のような四角2層型となった(建設地の変更もあったが)。スタジアムの建築思想や技術は急速に進化しているので、広島の実施設計の頃にどんなアイデアが盛り込まれるのか楽しみである。個人的にはきっちり敷地に対して南北に配置するのではなく、ちょっぴり斜めにとってみればいいのに、と思う。

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現段階では広島城側に複合施設の併設が予定されてるのかな。公園内なので都市公園法で設置可能なカフェとかレストランとかちょっとした売店とか、あるいはジムなど健康増進系か。ちなみにサンガスタジアムの場合スタンド下が複合施設スペースなので、少し考え方が違う。もっとも現段階では仮の案だろうけど。

スタジアム予定地から繁華街へ

 この日の宿は広島の繁華街の中心部だったので、中央公園を後にし、紙屋町方面へと向かう。広島の街を歩いてみてわかるのは、やたらと道路が広くて、歩行者は地下道を歩かされることが多いということ。中央公園から南側へ渡ろうとする場合も、当然ながら地下道へ下りる(上図によるとスタジアム建設時には新たな地下道を作る予定かな)。これがかなりイケてる動線なのだ。一度地下道に入ってしまえば、真っ直ぐ歩けばグリーンアリーナの脇を通って旧市民球場跡地に出られてしまう。この通路の場合、3万人の観客を捌くには少々狭い気もするが、途中広場的な場所もあって、どうにかなりそう。何より自動車と分離して完全に歩行者のみで繁華街中心部まで直結している感覚が良い。歩くこと10分足らず、目の前に大きく囲われたスペースが現れた。そこが旧市民球場跡地だと気付くのにさほど時間はかからなかった。

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 それにしてもこれだけの土地が遊んでいるのは本当に無駄だ。ここにスタジアムを建てることを熱望したサンフレッチェの気持ちが痛いほどにわかる。(景観のため)地下を掘り下げて建設費が大幅に高くなってでも、ここに複合型の市街地中心スタジアムを建てる価値はあったのではなかろうか。それはそれとして、中央公園広場の立地も全然悪くない。こうして100万都市の繁華街に地下道で直結できるスタジアムが日本にいくつあるだろう。実際に歩いてみて、広島の新スタジアムに対する期待値は大きく跳ね上がった。

 ちなみに旧市民球場跡地から地下に下りるとシャレオの地下街。ずずずいっと歩くと、サンフレッチェのオフィシャルショップもある。また、電停通りを越えればすぐに原爆ドーム。「こりゃええ立地じゃけんの」などと意味不明な言葉を発しながら、筆者は夜の街へと消えていった。

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紙屋町の地下にあるシャレオ

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相生橋からの原爆ドーム

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